走りと環境性能が好バランスの1台
スタイリッシュなフォルムと確かな走りに加えて、クラスを超えた先進のインフォテイメントを採用するなど、好調なセールスを支える要素にこと欠かないAクラス。そんな人気モデルがいよいよクリーンディーゼルを導入。さっそく日本の公道に連れ出してチェックしてみよう。
新型Aクラスが好調だ。昨年10月に発表し、12月にデリバリーを開始して以来、通算で5000台を超える販売台数を記録しており、現在生産が追い付かない状況だという。また購入者の50%以上が他ブランドからの乗り換えで、女性のユーザー比率は約25%(契約書名義なので実際はもっと多いという)と多いのも特徴とのこと。
これは「ハイ、メルセデス!」と話しかけると起動する、対話型インフォテイメントの「MBUX」が話題となっていることも大きな要因のひとつだろうが、先代よりもいっそうスタイリッシュになったデザインに加え、良好な乗り心地や優れた走行性能といった、クルマ本来の出来の良さも貢献していることは間違いないはずだ。
そんなAクラスに、今回ディーゼルエンジン搭載モデルが追加された。メルセデスはこれまでセダンからSUVまで、ディーゼルのラインアップを増やしてきたが、Cセグメントのコンパクトクラスへの導入は初となる。
搭載されるのは、すでにCクラスやEクラスに採用されている2L直4ターボの「OM654」を横置き用にとし「OM654q」と呼ばれるもので、従来の排ガス処理システムに加え、ASC(アンモニアスリップ触媒)を備えたSCR触媒を増設させているのが特徴。他にも低圧と高圧ふたつのEGRによるNOx低減や、DPFにSCRコーティングを行い、PMとともにNOxも処理するパティキュレートフィルターを採用するなどして、’20年から施行予定のユーロ6d規制にも適合する環境性能を誇るという。
ちなみにC/Eクラスではモデル名が「220d」であるのに対し、Aクラスが「200d」なのは、本国のガソリンモデルに「220」があり、それと混同しないように配慮したとのことだ。
アイドリング時の音は比較的静かだ。振動もそれなりにあるが最近のディーゼルエンジンでは標準的なレベルで、走り出すと音も振動もほとんど気にならなくなる。意外だったのは、車重がガソリンモデルよりも130kgほど重いのに、動き出しが思いのほか軽快だったこと。このエンジンは最高出力こそ150psだが、最大トルクは320Nmと分厚く、しかも発生回転数が1400rpm〜と低いゆえ、発進時から高トルクを生かした加速が可能なのだろう。吹け上がりそのものは心地よいという類のものではないが、パワフルで力強い加速を味わうことが可能。動力性能的に不満を感じる場面は皆無だ。
またトランスミッションも、従来の7速DCTから新開発の8速DCTへと進化しており、トルクバントをキープした変速制御により、スムーズな加速を味わえる。8速のトップギアに入るのは90〜95㎞/hあたりなので、高速巡行時には燃費にも貢献してくれるはずだ。
今回は都内近郊の試乗のみだったので、ハンドリングに関してガソリンモデルとの詳細な比較はできなかったが、乗り味的にはいい意味で落ち着いている印象。これは決してダルくなったというわけではなく、エンジンが重くなったことで、フロントの動きが穏やかになった効果と考えていい。
一方、特筆すべきは乗り心地が良くなっていたことで、これも重量増によりしっとり感が増したと解釈できる。ちなみにリアサスペンションは本国の上級モデルにあるマルチリンクではなく、トーションビーム式のままだ。
価格は同じ装備のガソリンモデル(A180スタイル)より30万円高となる399万円の設定だが、補助金や免税分を加味すると、その差はほぼなくなり、さらにハイオクよりも30円程度安い軽油の燃料代も考慮すると、かなりコストパフォーマンスが高そうなA200d。デリバリーは6月からを予定しているというが、今後Aクラスの主力になりそうな魅力的なモデルといえる。