清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number97(SEASON.11):Bセグメントのホットハッチを標榜する、コンパクトスポーツの熾烈な覇権争い
フォルクスワーゲン・ポロGTI vs ミニ・ジョン・クーパー・ワークス
フォルクスワーゲン・ポロGTIとミニJCWはコンパクトスポーツを代表するホットハッチとして、多彩な魅力に溢れるモデルである。ともに2Lターボを搭載し、パワフルな動力性能に加え、快適なライドフィールと機能性を兼ね備える。今回、DSTの各テストでもハイレベルな戦いを繰り広げた。

ゴルフを凌駕するポロGTI
ポロは、ボディディメンション的に10年前のゴルフとほぼ同じ大きさになった。コンパクトカーとはいえ、Bセグメントの代表選手であるポロも6代目から全幅が1.7mを超え、5ナンバーから3ナンバーに移行。しかしクルマとしての進化を考えれば、もはやその物差しは不要かもしれない。
フォルクスワーゲンはMQBというプラットフォームをポロからパサートまで採用したことで、ゴルフとの差別化が難しくなったように見えるが、ポロは全長が短いぶん、ヨーイングの慣性モーメントを小さくできるため、つまりゴルフよりも軽くて安定性が高く、アジャイルな運動性能が与えられている。キャビンのサイズにこだわらないならポロはゴルフの弟分ではなく、ダイナミクスではMQB戦略のトップランナーといっていい。ポロの商品企画はGTIの投入でその位置づけを再定義しているように思える。
実際にポロGTIの印象は、一般道路、高速道路を含めて快適な乗り味を提供してくれ、サイズアップしたとはいえ、街乗りでの取り回しも良く、ファミリーカーとしての資質は十分に高い。残念なのはデュアルクラッチのDSGで、発進時の制御が少しもたつくことで、エンジンがあと500rpm伸びてくれれば申し分ないのだが。

ゴーカート感覚のミニJCW
ボディのサイズアップについていえば、確信犯なのはミニの方だ。ミニとはいえ、サイズはかなり大きくなっている。ただしBMWグループ傘下での初代ミニから踏襲されているゴーカートのようなハンドリングはビッグなミニになっても健在で、ランフラットタイヤと相まって、俊敏なハンドリング特性がその特徴だ。
ダイナミクスに秀でており、テスト項目によってはポロGTIを凌駕した。一般道路の乗り心地はポロGTIとは異なる味だが、サスペンションはダンピングが良く、ピッチング&ロールは一発で収まる。ランフラットタイヤはトレッド面からの反動で硬く感じるが、バネ上のボディダンピングがしっかりしており、乗り心地は総じて荒っぽいというわけではなく、スポーツカーに通じるフィーリングだ。
2019年は同セグメントのライバルであるトヨタ・ヴィッツの新型が欧州名ヤリスの名前で登場するとの噂で、2Lターボのホットハッチとして極秘裏に開発が進められているようである。昨年WRCで総合優勝を飾ったヤリスの姿を思い浮かべてしまうが、ヤリスのベンチマークとなったのがポロR-WRCだ。GTIベースで開発され、現在もラリーフィールドで活躍しており、WRCでのフォルクスワーゲンの4番バッターはポロであり、原点はGTIなのである。

実はミニも2012年にWRCを撤退してから、再びクロスオーバーをベースにしたJCWの名でラリーカーを開発し、なんと40年ぶりの復活を果たしており、WRCでの活躍が期待されている。
ポロGTIとミニJCW、ヤリスの戦いが最高峰のレースステージで繰り広げられる日も近い!?
ギアボックスの違いが走りのキャラに影響!?
点数ではわずかにミニJCWが勝ったが、テストした2モデルは似ても似つかないほど個性が異なっていた。エンジンの差はあまり大きくないが、ギアボックスの違いが走りのキャラクターに明確に現れていた。面白いことに落ち着いた走りを求めるポロGTIがダイレクト感のあるデュアルクラッチのDSGをチョイスし、ハードボイルドな走りのミニJCWがトルコンATを搭載する。

乗り心地は両車とも受け入れることができるレベルにあり、しなやかさではポロ、ダンピングの良さではミニに軍配が上がる。走りを楽しむには後者、安心感と快適性を求めるならば前者がオススメだ。
RESULT
総合力はほぼ互角だがミニJCWがポロGTIに僅差で勝利!!
●ミニ・ジョン・クーパー・ワークス:16.5/20点
●フォルクスワーゲン・ポロGTI:16/20点
※通信簿は絶対評価なので比較した点数ではない
