メルセデス・ベンツはPHVにも積極姿勢、フォルクスワーゲンは充電ステーション4000カ所を整備
強化される燃費規制を睨んだ電動化戦略が欧州でも着々と進んでいる。欧州では2021年にはCO2を現在より3割削減、2030年にはさらに4割の削減が要求されている。ともに企業平均燃費(CAFE)としてメーカーに求められる規制であり、これをクリアすべく各社は電動化を進めていくことになる。
電気自動車(EV)の量販が可能となれば、この規制値も比較的簡単にクリアできるのだが、航続距離や充電施設の整備状況を考えると、EVがすぐに現在の内燃機関やハイブリッド車にとって代わるとは考えにくい。高性能バッテリーを搭載している高価なEVであれば航続距離はなんとかいけるだろうが、その価格では販売台数をこなすことはできず、企業平均燃費を下げる効果は小さい。
そんななか、メルセデス・ベンツはEQブランドの高価格EVで電動化をアピールする一方で、より買いやすい価格のプラグインハイブリッド車(PHV)の生産と販売にも力を入れると表明。すでに今年初めには48VのマイルドハイブリッドやPHVを「EQパワー」のブランドでの拡大を図る方針を示していたが、ここにきてAクラスとBクラスのPHV、A250 e/B250 eを欧州で発売。すでにCクラス以上にはマイルドハイブリッド車やPHVを展開してきたメルセデスだが、日本円に換算して400万円台と比較的購入しやすい電動化車両を展開することで、自社ブランド車のCO2排出量を抑えていく考えだ。
一方、フォルクスワーゲン・グループはフランクフルト・ショーで新世代EVのID.3を正式発表し、すでに3万台を超える受注が集まっていることを明らかにした。それに先駆け、ドイツ国内だけで4000カ所の充電ステーションを2025年までに設置すると発表。すでに今年6月には同期間で欧州全体に3万6000カ所の充電ステーションを設置すると明言しているので驚きはないが、今回の発表も含めフォルクスワーゲンのEV普及に向けた積極的な姿勢が見てとれる。
日本では日産や三菱のディーラーの多くに急速充電器が備えられ、チャデモ協議会によると現時点で約7600カ所におよんでいる。それに比べると2025年までに4000カ所というのも大した数ではないが、フォルクスワーゲンが自動車メーカーとして充電インフラ整備に力を入れていくことはたしかだろう。
フランクフルト・ショーにはホンダが「ホンダ e」を、マツダも独自の新型EV「e-TPV」を出展し、待望のポルシェ・タイカンもデビュー。サプライヤーのアイシンも電動駆動モジュールを出展するなど、欧州における電動化ビジネスには多くの企業が参入し始めている。EVの量販に加えて充電インフラの自社整備でいち早く燃費規制をクリアするのがいいのか、あるいはEVだけでなくPHVなどにも力を入れてじわじわと電動化を広げていくほうがいいのか、それぞれのメーカー色が出て興味深いところだ。
国際的な自動車関連リサーチ会社であるJATOによると、2019年7月の欧州EV市場は、まだボリュームは大きくないものの前年同期比でほぼ倍増しており、主力はルノー・ゾエや日産リーフ、テスラなどだが、ゴルフのEVも着実に台数を伸ばしている。英国のEU離脱など経済不安が続く欧州だが、電動化の波は明らかに強まっている。フランクフルト・ショー以降に大きな動きが出てくるのか、注目したい。