
いよいよ待望の新型208が日本に上陸した。車名こそ現行世代と同じだが、プラットフォームはDS3クロスバックと共通のCMPに一新。3Dになったi-Cockpitをはじめ、 デザイン、質感、ビルドクオリティ、機能とあらゆる面でBセグメントのイメージを覆しているという。それでは、走りの印象はどうなのか? 今回はガソリンエンジンのGTラインとアリュールを連れ出してみた。
現在のBセグメントど真ん中のサイズに
末尾8のネーミングがすっかり板についてきたプジョー。新型208は2世代目の208になる。全長4095mm、全幅1745mmという寸法は先代に対し120mm長く、5mm幅広になった。最近は一段落してきたとはいえ、数字をみればボディ拡大競争の流れに乗っているようにも見える。が、少しだけ時間を遡れば必ずしもそうではないことがわかる。

PEUGEOT 208 GT LINE/極端なまでに寝かされたCピラーがリアフェンダーの造形とあいまってワイドで安定感の あるスタイリングを形成。リアエンドにはトランクリッド幅いっぱいのブラックバンドが走り、こちらにも三本爪をモチーフとしたテールライトが内蔵される。
プジョーは207でボディサイズを一気に拡大したものの、マーケットから十分な理解が得られず先代208でサイズ縮小を敢行してきたからだ。そう、新旧208を比べればたしかに大きくはなった。しかし207と比較すればサイズはほとんど大きくなっていない。結果として新型208は現在のBセグメントど真ん中のサイズに収まった。
日本仕様の208に用意されるパワートレインは2種類。ひとつは先代から引き続き採用されている1.2L直列3気筒ターボで、もうひとつがモーターと容量50kWhのバッテリーの組み合わせだ。後者はe-208というネーミングで10月頃のデリバリー開始予定。ガソリン車と比べると130万円高くなるが、購入時の補助金や税制上の恩典、燃料代などをトータルすると、3年/3万6000kmでの保有コストはガソリン車と同等になるというのがメーカーの主張だ。それを額面どおりに受け取るなら同じ出費でガソリンかEVかを選べることになるわけで、プジョーはこれを「パワーオブチョイス」と呼んでいる。当然だが両車のフィーリングはぜんぜん違っていて、クルマにとってパワートレインがいかに大切かを痛感した。と同時に、ふとテスラにエンジンを載せたらどんなフィーリングになるのだろうと思った。
ガソリンエンジンを搭載した208に話題を戻そう。3気筒ガソリンターボは先代と同じ型式だが、年々厳しくなる排ガス規制にミートするべく新たにパティキュレートフィルターを搭載。その影響で最高出力は10ps低下したが、ATが6速から8速になったこともあり動力性能の低下は感じない。それどころか、ATの多段化によって実用域での力感と高速巡航時の余裕は増している。気になるトップエンドの吹け切り感にも大きな差はない。
むしろ特筆したいのはこのエンジンの美点であるスムーズさと静粛性にさらに磨きがかかっていることだ。エンジンの改良というよりは主に車体側の対策によるものだろうが、3気筒とは思えないスムーズさと、Bセグメントとは思えない優れた静粛性は新型208の大きな持ち味だ。
8速ATはいかにもプジョーらしい味付けで、他車から乗り換えるとトルコンのスリップ領域が極端に少ないフィーリングに違和感をおぼえるかもしれない。とにかく隙あらばロックアップしにいくためトルコン特有の何層ものフィルターを通したようなマイルド感はない。MT的なダイレクト感は魅力ではあるものの、その分、ラフなアクセル操作をするとギクシャクしやすいというデメリットもある。
まあアクセル操作を少し丁寧にしてあげればむしろ気持ちよく走れるのだが、トルコンに甘やかされた右足には少々荷が重い傾向はある。サプライヤーは日本のアイシンAWだからハードウェアの特性ではなく、あえてプジョーがこういうセッティングを依頼しているのは明らか。思えばプジョーとルノーが共同開発したAL4も似たようなフィーリングだった。それほど評判のいいATではなかったが、僕はあのダイレクト感が好きだった。
いずれにせよ、良くも悪くもMTの国の人が考えるATとはこういうものだということである。グローバル化という旗印の下プロダクトの均質化が進むいま、クセとか味と呼べるものを体験できるのは輸入車に乗る醍醐味のひとつだ。
心ときめかせてくれるコンパクトカー
インテリアで注目したいのは3Dへと進化したiコクピット。小径ステアリングを低い位置に置き、ステアリング上端越しにメーターをみる独特のレイアウトは従来通りだが、メーターが3D表示になったのが新しい。3D表示の新鮮さは写真はもちろん動画でもなかなか伝わらないので、ぜひご自分の目で実車をご覧になることをオススメする。3D表示は見た目の新鮮さだけでなく、機能的にも考え抜かれている。いくつかのパターンを選べるが、重要な情報を目に近い手前側中央部に表示するというのが基本ロジックとなる。脳科学者の方に聞いたのだが、このロジックは人間の認知機能的にも非常に理に叶っているという。その他、Bセグメント離れした上質なシート(とくにGTライン)や立体的な造形にこだわったダッシュボード&ドアトリム、質感の高いスイッチ類など、コストを言い訳にした手抜きを感じないさせないのも嬉しい。そうそう、先代では液晶タッチパネルのメニュー内に埋もれていたエアコン操作ボタンのうち「MaxAC」のみ物理ボタンが独立して表に出てきたのはとくに真夏の時期には朗報だ。

PEUGEOT 208 Allure/これまでよりも低く、伸びやかな新世代のボディラインが特徴。下方に伸びるデイタイムランニングライトの通称セイバー(サーベルの意)は、きわめて高度な三次元のデザイン処理が施されており、見る角度によってさまざまな表情を見せてくれる。
フットワークに関してはこの後のアウディA1との比較記事で詳しく書くが、17インチタイヤを履くGTラインは少し固め、16インチのアリュールはソフトタッチとキャラクターに違いはあるものの、両車ともフランス車ならではの「コシのあるフワッと感」がちゃんと残っている。
最後にデザインについて。新型208は文句なしにBセグメントのベストルッキングモデルだと思う。三角形を強調したCピラーやリアのブラックバンドなど、先祖である205へのリスペクトを保ちつつも確実に前進しているのがいい。なかでも特筆に値するのがプロポーションの美しさだ。上屋の視覚的重量を四隅に配したタイヤがしっかり受け止めているし、全体のバランスがいいから余計なラインでごまかす必要もない。だからスッキリしているのにコクがある。唯一、デザインのためのデザインと言えるのがライオンの爪を意識したデイタイムランニングライトだが、これも正面から見るとグリルのラインに、真横から見るとフロントホイールアーチのラインにピタリと寄り添ってみせる。そして斜め45度から見れば完全な直線。高度な三次元造形の勝利である。
「Unboring the Future=退屈な未来は要らない」。実用性に触れがちなコンパクトカーのなかにあって、心ときめかせてくれるのが新型208最大の価値だ。
【Specification】プジョー208 アリュール[プジョー208 GTライン]
■車両本体価格(税込)=2,599,000円[2,930,000円]
■全長×全幅×全高=4095×1745×1445[4095×1745×1465]mm
■ホイールベース=2540mm
■トレッド(前/後)=1485/1485[1495/1495]mm
■車両重量=1160[1170]kg
■乗車定員=5名
■エンジン種類=直3DOHC12V+ターボ
■内径×行径=75.0×90.5mm
■総排気量=1199cc
■圧縮比=10.5
■最高出力=100ps(74kw)/5500rpm
■最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/1750rpm
■燃料タンク容量=44L(プレミアム)
■トランスミッショッン形式=8速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後トーションビーム/コイル
■ブレーキ 前/後=Vディスク/ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後195/55R16[205/45R17]
お問い合わせ
グループPSAジャパン 0120-840-240