作業効率を考えてエンジンを降ろす
工場裏手の駐車場に放って置かれた’90年式のGTIが、ようやく工場に入れられ、事前の点検が行なわれたのは10月のはじめだ。
クルマの状態は、走行距離が16万kmを超えている割には悪くなかった。エンジン回りにはオイル漏れや水漏れが見受けられたものの、それは部品の交換で直る範囲。エンジン自体は異音もなく、軽い吹け上がりを示し、致命傷のないことを物語っていた。
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(左上)エンジンを降ろしてしまえば、なるほどクラッチのオーバーホールも比較的楽に行なえる。ミッションを外すのも、このように楽な姿勢でできるわけである。(右上)クラッチのプレッシャープレートを外す。再利用は可能だったが、これも交換することに。(下)クラッチは強化型ではない、ノーマルを選ぶ。小林さんの意図するところは、「ノーマルに戻してさりげなく乗る」というところなのだ。
だが、駆動系ではクッチがすでに限界にきていた。ミートポイントが上がっていて、まもなく滑り始めそうな状況。サスペンションはビルシュタインのBTSキットが装着されていたが、これは減衰力が少し怪しくなっていた。
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(左)新旧を比較してみると、右の旧のほうの消耗ぶりがよく分かる。かなり薄くなってしまっている。(右)プレッシャープレートのボルトをトルクレンチで締め込んでいく。これが簡単にできるのも、エンジンを降ろしているから。
ボディ外観も、悪くはなかった。フロントバンパーがステーから外れ、バンパーが少し傾いてしまっている以外は、わずかなスリ傷がみられる程度。もちろん、大きな事故を起こしたような形跡はない。ただ、グリルがなぜか2灯式になっていて、ホイールもGTIのオリジナルではない。前後のVWマークは、前オーナーの憧れを反映してだろう、ABTのエンブレムが貼りつけられていた。
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(左)ガスケットをカバー側の溝に入れ込む小林さん。外したものにはネジレ。熱で弾性がなくなり、オイル漏れを起こしたようだ。(右)距離を重ねたゴルフIIには必ずといっていいほど、カムシャフトシールからのオイル漏れがある。ここは要チェックポイントだ。
散々ゴルフを触ってきた小林さんの、整備の進め方についての判断はきわめて早い。
「エンジン、降ろしますワ。ホース関係も交換せんとアカンし、ヘッドカバー・ガスケットも、どうせクラッチもやることやし、降ろしたほうがラクですワ」