国内試乗

【比較試乗】「アウディ A4 vs メルセデス・ベンツ Cクラス vs BMW 3シリーズ」ブランド色を濃厚に映し出すバランスに優れた中堅セダンはどれだ?

室内空間がもっとも広いのは3シリーズ

クルマを走らせる前に、コクピットとパッケージングをチェックしておこう。まずは、3台の中で全長が一番短いCクラスを覗いてみる。マイナーチェンジでデジタルメーターが装着されているが、タブレットを2個横に並べたワイドスクリーンではなく、独立したメーターパネルというのは個人的には落ち着く感じがする。ドライバーズシートのまわりには余裕があるが、せり出すようなデザインのダッシュボードにやや圧迫感を覚えるのが気になるところだ。

BMW 318i/2020年9月から日本仕様に加わったベーシックモデルの318i。

後席はややヘッドルームが不足気味だが、足元や膝まわりは十分余裕がある。ラゲッジスペースは、カタログ値で435Lと最小で、奥に行くほど狭く浅くなるが、それでも必要十分なスペースが確保されている。
3シリーズのコクピットは、端正でシンプルなのが特徴だ。センタークラスターがドライバーに向けられた“ドライバーオリエンテッド”なデザインはBMWの伝統で、ドライバーズシートに座った瞬間からスポーツセダンであることを意識できるのがいい。

BMW 318i/318iのお買い得感は相当高い!

Cクラスに対して全長、ホイールベースともに10mm長い3シリーズは、そのぶん後席に余裕があり、3台中もっとも広いスペースが確保されている。ラゲッジスペースも最大の480L。フルモデルチェンジの時期が一番新しいだけに、ライバルを上回ってきたのは当然の流れといえるだろう。

BMW 318i/装備面もほぼ320iに装飾ないとなればお買い得感は相当高い。ハンズ・オフ機能付き渋滞支援機能も搭載。

3シリーズ同様、ドライバーオリエンテッドなコクピットを採用するA4だが、マイナーチェンジでナビ画面やセンターコンソールのデザインが変更され、開放感が増した印象だ。後席のスペースは3シリーズには及ばないが、それでもヘッドルーム、ニールームともに、ゆったり過ごせるだけの余裕が確保されている。ラゲッジスペースは460Lと3シリーズより少し小さいが、奥行きは他の2台より10cm近く長く、大きな荷物を詰め込むには有利だろう。

BMW 318i/エンジンは320iのデチューン版だが、トランスミッションは同じ8速AT。

一方、走りの印象は三者三様で、正直なところ甲乙つけがたい。試乗した3台のなかでは排気量が一番小さい1.5L直列4気筒ターボを積むC200だが、エンジン単体で184psを発揮するうえに、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載するこのクルマは、モーターアシストにより、低回転でも素早く力強い加速を得ることができる。ただ、ライバルたちに比べるとエンジンの回転数が高めになり、そのぶんノイズが大きめなのが玉に瑕だ。オプションのエアボディコントロールサスペンションが装着された試乗車は、ランフラットタイヤを廃止したことも手伝って、乗り心地が穏やかで動きも落ち着いている。

AUDI A4 45 TFSI QUATTRO S LINE

エンジンパワーが156psと、3台のなかでは控えめなスペックの318iは、マイルドハイブリッドシステムも搭載しないが、それでも必要十分な低速トルクを発揮し、アクセルペダルに対する反応も悪くない。エンジン回転を上げれば4000手前あたりで盛り上がりを見せるが、直接ライバルたちと比べると分が悪いのはやむを得ない。乗り心地には多少荒さが残るが、十分に快適なレベルで、ランフラットタイヤを履きこなすのもさすがである。さらに、コーナーでの身のこなしが軽く、この機敏さこそが3シリーズの魅力であることに変わりはない。

AUDI A4 45 TFSI QUATTRO S LINE/A4のエンジンはマイルドハイブリッド

対するA4は、パワフルなエンジンと4WDを採用する45TFSIクワトロSラインで、249psを発揮する2Lターボは、12Vマイルドハイブリッドシステムを搭載することもあって、全域で素早いレスポンスと強力なトルクを発揮する。オプションのダンピングコントロールサスペンションが装着された試乗車は、オプションの19インチホイールが装着されるにもかかわらず、乗り心地は実にマイルドで、走行時の挙動も落ち着いている。しなやかに動くサスペンションとクワトロのおかげでコーナリング時の接地感が高く、見た目どおりのスポーティな走りを楽しむことができた。

AUDI A4 45 TFSI QUATTRO S LINE/新たにインターフェイスの要となったタッチディスプレイは奥行き13mmの薄型設計で、わずかにドライバー側へと角度をつけてレイアウトされる。

ということで、デビュー時期が早いぶん、さまざまな点で高い熟成度が感じられるCクラス、いつの時代も軽快な走りが魅力の3シリーズ、マイナーチェンジでデザインも走りも大きく進歩したA4。3台のハイレベルな戦いに終わりはない。

AUDI A4 45 TFSI QUATTRO S LINE/Sモデルを除くA4のエンジンはマイルドハイブリッドを組み合わせた2Lガソリンのみとなる。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2021年2月号より転載

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