室内空間がもっとも広いのは3シリーズ
クルマを走らせる前に、コクピットとパッケージングをチェックしておこう。まずは、3台の中で全長が一番短いCクラスを覗いてみる。マイナーチェンジでデジタルメーターが装着されているが、タブレットを2個横に並べたワイドスクリーンではなく、独立したメーターパネルというのは個人的には落ち着く感じがする。ドライバーズシートのまわりには余裕があるが、せり出すようなデザインのダッシュボードにやや圧迫感を覚えるのが気になるところだ。
後席はややヘッドルームが不足気味だが、足元や膝まわりは十分余裕がある。ラゲッジスペースは、カタログ値で435Lと最小で、奥に行くほど狭く浅くなるが、それでも必要十分なスペースが確保されている。
3シリーズのコクピットは、端正でシンプルなのが特徴だ。センタークラスターがドライバーに向けられた“ドライバーオリエンテッド”なデザインはBMWの伝統で、ドライバーズシートに座った瞬間からスポーツセダンであることを意識できるのがいい。
Cクラスに対して全長、ホイールベースともに10mm長い3シリーズは、そのぶん後席に余裕があり、3台中もっとも広いスペースが確保されている。ラゲッジスペースも最大の480L。フルモデルチェンジの時期が一番新しいだけに、ライバルを上回ってきたのは当然の流れといえるだろう。
3シリーズ同様、ドライバーオリエンテッドなコクピットを採用するA4だが、マイナーチェンジでナビ画面やセンターコンソールのデザインが変更され、開放感が増した印象だ。後席のスペースは3シリーズには及ばないが、それでもヘッドルーム、ニールームともに、ゆったり過ごせるだけの余裕が確保されている。ラゲッジスペースは460Lと3シリーズより少し小さいが、奥行きは他の2台より10cm近く長く、大きな荷物を詰め込むには有利だろう。
一方、走りの印象は三者三様で、正直なところ甲乙つけがたい。試乗した3台のなかでは排気量が一番小さい1.5L直列4気筒ターボを積むC200だが、エンジン単体で184psを発揮するうえに、48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載するこのクルマは、モーターアシストにより、低回転でも素早く力強い加速を得ることができる。ただ、ライバルたちに比べるとエンジンの回転数が高めになり、そのぶんノイズが大きめなのが玉に瑕だ。オプションのエアボディコントロールサスペンションが装着された試乗車は、ランフラットタイヤを廃止したことも手伝って、乗り心地が穏やかで動きも落ち着いている。
エンジンパワーが156psと、3台のなかでは控えめなスペックの318iは、マイルドハイブリッドシステムも搭載しないが、それでも必要十分な低速トルクを発揮し、アクセルペダルに対する反応も悪くない。エンジン回転を上げれば4000手前あたりで盛り上がりを見せるが、直接ライバルたちと比べると分が悪いのはやむを得ない。乗り心地には多少荒さが残るが、十分に快適なレベルで、ランフラットタイヤを履きこなすのもさすがである。さらに、コーナーでの身のこなしが軽く、この機敏さこそが3シリーズの魅力であることに変わりはない。
対するA4は、パワフルなエンジンと4WDを採用する45TFSIクワトロSラインで、249psを発揮する2Lターボは、12Vマイルドハイブリッドシステムを搭載することもあって、全域で素早いレスポンスと強力なトルクを発揮する。オプションのダンピングコントロールサスペンションが装着された試乗車は、オプションの19インチホイールが装着されるにもかかわらず、乗り心地は実にマイルドで、走行時の挙動も落ち着いている。しなやかに動くサスペンションとクワトロのおかげでコーナリング時の接地感が高く、見た目どおりのスポーティな走りを楽しむことができた。
ということで、デビュー時期が早いぶん、さまざまな点で高い熟成度が感じられるCクラス、いつの時代も軽快な走りが魅力の3シリーズ、マイナーチェンジでデザインも走りも大きく進歩したA4。3台のハイレベルな戦いに終わりはない。