EV以外に電動自転車も多数展示が
すっかり秋の気配が感じられる今日この頃。日本ではフランクフルトモーターショーとして有名のIAA(Internationale Automobil Austellung)が、今年は我が街ミュンヘンで初開催となりましたので、早速初日のプレスデーに行ってきました。
プレスチケットにはモーターショー開催中に9月6日~12日の期間市内の公共交通機関に乗り放題チケットがついていましたので、かなりお得感がありました。
しかし、ショー会場は市の南部のメッセ会場、私が住むのは北部。地下鉄とバスを乗り継ぐと最低1時間は掛かりますが、クルマだと20分も掛かりません。という事で、せっかく無料のチケットがあるものの、朝のラッシュ&メッセ初日ラッシュを考慮して早目に家を出たのですが、殆ど渋滞もなく楽々到着しました。
いつもフランクフルトでのプレスデー初日は周辺道路も駐車場に入るのも、会場もごった返しているので、そのつもりだったのですが、予想外にガラガラでちょっとびっくりしました。コロナ禍という事もありますが、ドイツ以外の自動車メーカーの出展が殆どなかった事もあるのでしょうね。
しかし、会場周辺や出入り口、ホールの中にも数多くの警察官や機動隊員が見回りをされていて、物々しい雰囲気です。ラッキーな事に私の行った時間には遭遇しませんでしたが、ミュンヘン近郊のアウトバーンやメッセ会場でIAA反対派が中止を訴える活動を行っていたらしいのです。
プレスデーという事でいくつかのメーカーで発表もありましたが、プレス関係者の中でも限られた招待客のみしか席に着けず、勝手に入らないか警備員がロープを張り巡らせて目を光らせています。先着順で席が確保できたフランクフルトの時を思って、早く行って損した気分でした。最初から『招待客のみ』と告知してくれれば、早起きせずに済んだのに……。
プレゼンが終了してから、一斉に人が流れ込む感じですが、どこもかしこも電気自動車ばかり! というか、電気自動車しかありません。ヨーロッパ諸国は欧州委員会や政府の指針で、右にならえとばかりにEV化へ一直線です。
今年からドイツのガソリンにはCO2排出税というのが加算され、更に高くなりました。給油する時間や場所によっても多少違いますが、私の近所ではレギュラーの1Lの価格が大体1.60ユーロ前後(約210円)で、うっかりアウトバーンのガソリンスタンドで給油する事もあるのですが、1.90ユーロ越え(約250円)を支払う事もあります。
特に私は超長距離を走行しますので、多い月にはガソリン代だけで10万円を超えますのでかなり痛い出費ですね。でもそうやって締め付けられても電気自動車にはいまのところ乗り換える気持ちは全くありません。
VWのブースはポップでカラフル。最近は街でもちらほら見掛けるID.シリーズばかりがずらりと並んでおり、Eゴルフなどは全く展示なしという思い切りが見えました。
イケメンの説明員さんに伺うと、ID.モデルにはギアがなく、代わりにコンソールのところにあるつまみをDやN、Rに動かすんだそうですが、若者でさえ慣れるのには結構時間がかかり、彼の60代のご両親世代には操作をお覚えるのが容易ではなさそうなので、もっと歳を取る前に今の内から乗り換えて貰ってゆっくり操作を覚えて貰うしかないのかな、とおっしゃっていました。
メルセデス・ベンツのブースは発表会なしでしたが、ジャーナリストの証明書のチェックをしていて、私も警備員さんに提示を求められました。
モータースポーツ関連やクラシックカー、チューニングカーの展示ブースがあるホールには、唯一電気自動車以外のクルマが展示されているという感じでしたが、おや~?! とばかりに自転車や電動スクーター、電動バイクの展示コーナーが多い事ったら!
ある意味、ここはサイクルショーか⁉とちょっとしたショックを覚えましたね。今年からIAA Mobilityと名称が変更された事で自転車等も一緒にという事なんでしょうね。
しかし、展示されている自転車がどれも結構お高いんです! 私が欲しいなと思っているシトロエンのC1やプジョーの108といったコンパクトカーの中古の値段と大して変わらないものもあるじゃありませんか⁉
そんな高級自転車はとてもじゃないけど買えませんが、自転車の盗難が非常に多いドイツでは怖くて乗れません。ちなみに私の住むアパートや借りているガレージでは、自転車1台のために施錠できる地下ガレージを借りている方が数名おられる位です。
なんどかメッセ会場をぐるりとしましたが、私自身があまり興味のない電気自動車の展示ばかりですから、そろそろ帰ろうかな~と出口へ向かおうとしていたところ、モーターショーには定番の警察ブースを発見! 最近、街で見掛ける自転車ポリスもおられましたので、ちょっと立ち寄ってみました。
実はミュンヘン市やバイエルン州のパトカーの多くがBMWの3と5シリーズのツーリングワゴンです。たまに3シリーズのセダンも見掛け、広報車やイベントに登場するMINIもまれに走っています。そんなこんなで警察官の方とパトカーの話題で盛り上がり、「日本の日産GT-Rのパトカーがかっこよくて仕方がない! ぜひとも運転してみたい!」とおっしゃる警察官も。
その逆で、私の日本の知人はミュンヘンに出張に来られると最新のBMWのパトカーに大興奮しておられます(笑)。
ミュンヘン警察の広報課の方に、ぜひともいつかインタビューの機会を頂きたいです! とお願いしてきました。噂に聞くアウトバーンポリスの覆面Mモデルなんかのお話が聞けたら嬉しいですね。
警察の方とのパトカーのお話がIAAのメッセ会場では一番楽しかったなぁ、と思いながら、電気自動車だらけの会場をさほどじっくり見る事もなく早くに退散しました。ちなみに、ミュンヘン消防局では積極的にEVカーを取り入れられていますが、警察ではどうなんでしょう? という質問では、広報車でBMW i3はあるそうですが、電気自動車でのパトカーを実験したそうですが、現時点では採用にはならなかったそうです。
今回のIAAからは従来のようなメッセ会場だけではなく、街の中心地にも展示会場が分散しており、そちらは一般の方も初日から無料で入場できます。IAA開催2日目の午後からオープンです。
私は街の中心地からそれほど離れていないところに住んでおり、プレス用に公共交通機関の乗り放題チケットは貰っていましたが、いつもながら市内の普段のアシにしている便利なママチャリで出動しました。
展示会場近辺は歩行者天国のようになっており、自転車は押して歩かなければなりません。その日に初めて入る会場の入り口ではワクチン接種証明かPCR・抗原検査の陰性証明のチェックがあり、チェックが済むと紙製の腕輪をはめて貰っての入場です。
2つ目からの会場ではこの腕輪を見せるだけでOK。しかし、小さな文字で記載されたスマートフォンのアプリもしくはプリントアウトした陰性証明をひとりずつチェックされるので、結構長く行列を待つメーカーのブースもありました。そして、毎日違う色の腕輪をはめられるので、毎日必ず一度はチェックの為にどこかのブース前で足止めされます。
地元ミュンヘンの最も大きな企業といっても過言ではないBMWグループの会場は、オペラ座前。数日前に工事中のところを通りがかり、そこそこブースも大きかったので期待していたのですが……、殆どi4くらいしか目新しいクルマはなく、ほぼ素通りで出口へ。
次に向かったのはオデオン広場。どど~んと真ん中にはメルセデス・ベンツのシュテルン(星)が輝いています。街中の会場では一番大きなブースでした。ここでも全てがEQC! GクラスまでもがEVです。それによって、ネオン輝く宇宙的なクルマになってましたが、果たして将来的には売れるのでしょうか?
私の一番のお目当てはポルシェのEVレーシングカー!基本的に電気自動車には殆ど興味はないのですが、前日にオンラインで行われたプレゼンテーションを見て、ポルシェが作るレーシングカーならきっとカッコいいに違いないと思い、実車を見るのを楽しみにママチャリを漕いで会場まで辿り着きました。
さすがはポルシェ、電気自動車ばかりだけでなく、1台だけですが新911 GT3が展示されており、それが何よりも人気でした。
ポルシェのすぐお隣はアウディ。こちらはめちゃくちゃ近未来的な大きなセダンはA8の後継モデルのコンセプトカーなんだとか。
少しずつ微妙に離れているのですが、わざわざ地下鉄に乗る程でもない距離なので、やっぱりママチャリで行って大正解! 展示ブースが並んでいる表通りは自転車を降りなくてはなりませんが、地元の土地勘を活かして裏道をシャーっとママチャリで抜けていきます。
色々なメーカーの説明員さんに持続走行距離や充電の事を伺ってみましたが、なんだかどこもセールストークが似たり寄ったりで、それを聞いて「次のクルマを購入する時の候補の一台に入れようかな?」と思うものがありませんでした。
ディスプレイに写るフル充電での持続走行距離を見せられ「ほら最大500km以上も走れますよ!」と。
「それじゃあ、このディスプレイに出ている500km以上走る際には平均時速はどれくらいなんですか?」と私。そうすると、ほぼ全部のメーカーの方がここで一旦話題を逸らすのがお約束(笑)。つっついて行くと、「街中を走る位の速度の場合は、フル充電で500km位は走れますよ」と明かしてくださるのですが、そこには裏があり、“最大500km以上持続走行可能”とセールスしつつも、「実際のところはそこから100~150㎞前後少ないんですけどね」っておっしゃると、どんどん気持ちが萎えてきます。
私の普段の走行では片道500km以上の移動を1日にする、アウトバーンを主に走行、空いていれば180km/h以上で断続走行するので電気自動車は私のライフスタイルには合いませんね~と言うと、そういうアンチな客にあちらも対策を練ってあるのか、「いまのバッテリーの開発は凄まじい速さですから、来年、再来年はもっとこれより進んでいますから、バッテリーをどんどん更新していけば大丈夫です!」と。それが一番高いんじゃないですか!と言いそうになりました。
一部のハイパフォーマンスモデルを除き、一般的な電気自動車はMax160km/h、それも継続してその速度で走るとすぐに充電切れとなるので130km以下を心掛ける事、約200~300kmおきに最低でも30~40分の充電休憩をしなければならない、とおっしゃるではないですか。
うぅ~ん、先月行ったル・マンなど、一日で1200km近く走る&現地の宿泊施設やサーキットの駐車場に充電ステーションなんてないので、恐ろしくて乗れませんね。
税金の優遇がある事をみなさん大きくPRしてくださるのですが、いま支払っている額の半額位だそうで、それなら安いとは思えません。
反対派のデモや抗議運動でアウトバーンが通行止めになる等、開催前から新聞沙汰の出来事も毎日のように起きていましたが、なんやかんやであっという間にIAAの1週間が過ぎ去りました。今回からは市内の展示を行ったお陰で、メッセを訪れた方々が街でお金を遣ってくださった事もあり、のべ40万人以上の来場者があり、コロナで落ち込んだ地元経済の活性化にも役立ったそうです。
中国や韓国のメーカーは出展していますが、日本の自動車メーカーはひとつもなかったのがとても残念でした。2023年も我が街ミュンヘンでの開催となるそうですが、次は更に進化したEVカーの展示になるんでしょうね。
この記事を書いた人
武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。