クルマをメンテナンスするために必要な工具、意外と知られていないその選び方とは？

万能工具を使用する時は気を付けたい

今回は工具の話をしたいと思います。ひと昔、いやもうふた昔は遡らないとならないですが、ノウハウ記事などには「車載工具は使わないこと」などと書かれていましたが、今や車載工具なんてものを見ることすらなくなってきています。クルマにトラブルが起きても応急処置はせず、JAFなどのロードサービスを呼ぶほうがメジャーな方法となっています。

工具なんて触りたくない、クルマのメンテはすべて人任せ、という人でも、家のなかで家具を組み立てたりすることもあるでしょう。そんな方にも役立つ、工具の選び方と工具の使い方をお話します。

まず選び方です。工具にはスナップオンやKTC、マックツール、TONEなどのブランド品から、ディスカウントショップで売っているノーブランド品までさまざまな製品があります。高級なブランド品はもちろん高性能ですが、ちょっとした工具が欲しいという方には値段が高すぎます。ではノーブランド品はダメなのでしょうか？　それも一概にダメとは言い切れません。

一般的な話になりますが、名の知れたブランドものでなくても、しっかりした製品はたくさんあります。工具専門店で販売しているようなものは、そうした製品が多くなっていますし、ホームセンターでもあまり粗悪なものは扱っていません。工具はさまざまな職種のプロも使うので、プロが選ぶようなものはあまり悪いものはないといえるでしょう。

一方で気を付けたいのが万能工具と言われるたぐいのものです。万能工具の代表選手といえば、使用するナットやボルトのサイズに合わせて調整ができるモンキーレンチでしょう。１つでさまざまなサイズに対応できるので便利だと感じがちですが、モンキーレンチはあくまでも緊急用です。そのほかにも、板状でいくつものサイズで使えるようにしたスパナなどもありますが、これらもあくまでも持ち運びなどの利便性を考えた緊急用です。

ナットやボルトのサイズに合わせて工具の先端を交換するソケットレンチという製品があります。これは万能工具というくくりには属しません。サイズに合ったソケットを使うので、一般工具に属します。だだし気を付けたのはハンドルの長さです。

一般的に販売されているソケットレンチセットに入っているハンドル1本で20cm程度の長さのものです。このハンドルで8mmのソケットを締め付けるのはちょっとトルクが掛かりすぎてしまいます。小さなソケットを使うときは、トルクが掛かりすぎないように注意しましょう。高価なレンチセットの場合は、ハンドルも数種が収められます。

一般的な片口スパナやメガネレンチは口が小さいと全長が短く、口が大きいと全長が長くなっています。これは小さいボルトやナットは求められている締め付けトルクが低く、大きいものは締め付けトルクが高いからです。ソケットレンチのハンドルやスパナに鉄パイプなどをつないで、大きなトルクを掛けるようにして使うのはやめましょう。

ソケットレンチと似たような製品で、先端を差し替えて使うドライバーがありますが、この手のドライバーはちょっといただけない精度のものが多くなっていますので、避けたほうがいいでしょう。そもそもドライバーは、押しつける力が7割、回す力が3割と言った感じで使う工具です。先端を差し替えたり、小さなドライバーに太いグリップを挿して使うようなものは押しつけて使うことが前提にされていないので、ドライバーとしての性能は弱いと言えます。

最近はアマチュアでも電動ドライバー（ドリル）を使う方が増えてきていますが、一般的な電動ドライバーは回すという方向にしか電動トルクが掛からないので、しっかり押しつけて作業をしないとボルトの頭をなめて（潰して）しまうことがあります。電動ドライバー（ドリル）に、打撃機能をプラスしたものがインパクトドライバーと言われるもので、こちらは回しながら叩く動きもするのでネジの頭をなめにくいのですが、動きに振動が加わるのでやはりしっかりと保持してあげる必要があります。電動ドライバー用のビット（先端）とインパクトドライバーのビットは規格が異なります。インパクト用に電動用ビットは使えますが、電動用ビットをインパクトに使うとビットが潰れたり、割れたりすることがあるので注意が必要です。

スタッドレスタイヤから夏タイヤへの交換などで、電動工具を使う人が増えてきています。タイヤ交換に使う電動レンチとインパクトレンチがあり、インパクトレンチのほうがパワフルです。また、ソケットも同様で電動用とインパクト用があるので注意しましょう。ナットやボルトを取り外すときは、しっかりと押しつけてなめないように気を付ければいいのですが、もっと気を付けたいのが取り付ける際です。取り付ける際に、ナットやボルトが斜めに入っているとねじ山を潰してしまいます。