日本の路上で遭遇するポルシェといえば、ほんの20年ほど前までは「911」がほとんどだったが、いまや「カイエン」と「マカン」「パナメーラ」あたりで7割ほどを占めるのではないだろうか。あくまで体感上の話だが、ポルシェのオフィシャルでの数字を見ても、2021年の時点の総生産台数約30万2,000台のうち、カイエンが約8万3,000台、マカンが8万8,000台、そして911が約3万8,000台をそれぞれ占めているので、あながち間違いではないかもしれない。
しかし、モデルカーの世界では相変わらず911一強時代は続いている。しかも歴代モデルそれぞれにファンがいるので、新型が登場するたびにモチーフは増え続けていくことになる。もちろん、カイエンやマカン、「ボクスター」に「ケイマン」、さらにいえば「904」「956/962」や「917」といったクラシック・レーシングポルシェも多数リリースはあるが、それでも911には及ばない。
そんな中にあって、新車時にはかなり話題になったものの、昨今はあまり製品化に恵まれていない1台が、ポルシェにめっぽう強いメイクアップからリリースとなるようだ。モチーフとなったのはポルシェの市販モデルとしては初物尽くし、911よりも大柄の車体にドライサンプの5.7リッターV10をミッドシップマウントした「カレラGT」である。
【写真12枚】発表から20年を経て、カレラGTはクラシックとしての魅力も身に着けた
カレラGTは1999年のパリサロンでプロトタイプ、2003年に生産型が発表されている。車体はカーボン製のセンターモノコックに、エンジンやサスペンションを組み込んだ同じくカーボン製のリア・サブフレームを結合。ボディ外皮もカーボン製としたことによって、車重は1.4トンを切っており、これに612馬力という当時としては驚異的なハイパワーエンジンを組み合わせたハイパーカーでもあった。
しかし、結果としてロードゴーイングユース・メインのモデルとなり、レースでも活躍する場が無かったことから、販売台数は思いのほか伸び悩み、当初予定されていた1500台に達することなく1270台ほどが生産されたにとどまった。その存在に久しぶりに脚光が当たったのが、事実上の後継モデルであるハイブリッド・スポーツである918が2013年にデビューしたタイミング。
おそらく、後にも先にも純・内燃機関のミッドシップ・スーパーポルシェが誕生することがないことを、多くのポルシェファンが悟った結果だろう、現在はその希少価値もあって、新車時の価格の数倍となるプレミアムプライスで取引されている。
映画『ワイルド・スピード』シリーズで主人公を演じたポール・ウォーカー氏が同車の助手席で最期を遂げたこともあり、ジェームス・ディーンの「550スパイダー」と並んで、あらゆる意味で多くの人々に強い印象を残したのが、カレラGTといえるだろう。
メイクアップでは同社の、実車のスキャニング→スキャニングデータを元に3D CADで原型設計、というフォーマットを介して、実車に正確無比な1/43モデルカーを具現化している。客観的なプロポーション、精緻なディテール表現、美しい仕上げと、まさに”安定の”メイクアップ・クオリティだ。
エッチングパーツをプレスして再現したエンジンのメッシュカウル、その下に覗くエンジン、着脱式のトップによってしっかりと細密さを確認できるインテリアなど、モデルを通してカレラGTの究極の機能美的なカッコよさを再確認して、ハッとしてしまうことウケアイだ。
熱心な911モデルカーファンであっても、もう二度と生まれないクラシックな生い立ちのハイパーポルシェとして、カレラGTを1台コレクションに加えておいても悪くないはずだ。