ホンダ

なぜ「ホンダ フリード」は人気なのか? ホンダの開発責任者にじっくり聞いてみた

“ちょうどいい”という観点での商品作りは極めて難しい

8年ぶりの新型登場で、ユーザーからの注目度が極めて高いホンダ「フリード」。 先代のモデル末期だった2023年(1~12月)でも、販売台数トップ10となる7万7562台を維持するほどの人気ぶりだった。 なぜ、フリードは人気なのか? 新型フリードの開発責任者で、電動事業開発本部 BEV開発センター 統括LPL シニアチーフエンジニアの安積悟氏に、ストレートに聞いてみた。
むろん、デザイン、パッケージ、燃費、リセールバリュー(下取り価格)などクルマの人気には様々な要因があることは承知の上で、あえてストレートに聞いてみたのだ。すると、次のような回答があった。
「いろいろなライフスタイルに合わせて、年代問わず、クルマとして使いやすいこと」、「つまり、日本の生活の中で、とても便利だとユーザーが感じていること」、「(人や物の移動に対する)道具として絶対必要な条件を備えていること」などである。その結果、「(販売台数の)浮き沈みがない安定した需要がある」ことにつながっているという。
そうした新型フリードの開発コンセプトは、「スマイル・ジャスト・ライト・ムーバー」。 基本的には、先代モデルのテレビCMでお馴染みだった「家族の毎日にちょうどいいホンダ」と同じことだと、安積氏は指摘した。 
要するに、この「ちょうどいい」というのが、フリードの本質だ。それを目指してホンダが開発し、ユーザーや販売店も「そうそう、ちょうどいい」と言っていることが、フリード人気の実態なのだと思う。今回、安積氏と話しながら、改めてそう感じた。

もちろん、「ちょうどいい」という観点での商品作りは極めて難しいことは、ユーザー側も十分理解できるだろう。安積氏は「ちょうどいいには、基準も定義もない。人によってちょうどいいことも当然違いがある」と、一般論としての解釈を示した。
また、理系企業であるホンダにとって、定量的にデータ化することが難しい「ちょうどいい」というイメージを、開発チーム全体で共有化することも難しい。さらに、新型フリード開発期間は、コロナ禍とも重なっており、コロナ禍でのライフスタイルの変化は当然、新型フリードとしての「ちょうどいい」に変化をもたらしたという。

こうして「ちょうどいい」を試行錯誤する中で登場した新型フリードを、ユーザーは見て、乗って、感じて「これって、ちょうどよさそうだ」というイメージを持つことだろう。
フリード人気、実に奥が深い。

フォト=桃田健史

この記事を書いた人

桃田健史

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

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