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あらゆる面で進化を感じる新型ティグアン
ここのところ新型車の登場があまりなかったフォルクスワーゲンだが、2024年後半から2025年にかけて攻勢をかける。パサートとティグアンのフルモデルチェンジ、ID.Buzzの導入、Tクロスとゴルフのマイナーチェンジと計5車種が相次いで日本へ上陸するのだ。
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今回は7年ぶりに刷新されて3代目となったティグアンに試乗した。初代ティグアンはゴルフ相当のSUVとして2008年に登場。すさまじく人気が上昇していたカテゴリーとあって多くの競合がいながらも瞬く間にフォルクスワーゲンのベストセラーカーとなったのはご存じの通り。
後に登場したTロックとTクロスの弟分達はタウンユースを重視したライトなSUVといった佇まいであるのに対して、ティグアンは正統派SUV。存在感の高さが際立つモデルでもある。
3代目となった新型ティグアンはボンネットの位置を高くすることで、SUVらしい力強さを強調したとのことでさらに存在感を高めるとともに、上級移行したかのように高級感も増している。「Active」「Elegance」「R-Line」の3つのトリムのうち、エントリーグレードの「Active」以外はLEDマトリクスヘッドライトが従来のIQ LIGHTからIQ LIGHT HDへと進化している。
- “IQ. LIGHT ”HDを採用するほか、SUVらしい力強さを強調するエクステリア。
- インテリアにはアンビエントライトやオーディオの組み合わせを5つの設定から選択できる“ アトモスフィア”機能を初搭載。
- テールライトも立体的なデザインのLEDタイプ。
片側19200個の高精細なマルチピクセルLEDは細かい制御が可能で、先行車や対向車をカメラで感知しながら最適な調光をする機能はさらに緻密になったのが特徴。デザイン的にも左右のヘッドライトがデイライトで連結されているのも新鮮な印象だ。
- インフォテイメントシステムは新世代となる“ MIB4 ”へと進化、最大15インチのワイドディスプレイを組み合わせ、直感的な操作性と高い視認性を実現。
- オーディオの音量調整や運転モード選択の素早いアクセスが可能なドライビング・エクスペリエンス・コントロールを採用。
- ドライブモードセレクターはステアリングホイールの後方右側に配置される。
インテリアはドライバー眼前のデジタル・コクピット・プロ、センターのディスカバー・プロなどデジタライズを極めるとともに、カラー調整機能付きのアンビエントライトが上質な空間を演出している。大型タッチディスプレイを採用することで、すっきりとしていながらも、センターコンソールのダイヤル式コントローラーやステアリングのボタンなど、物理的スイッチ類が適宜配置されているのが嬉しい。モダンな雰囲気ではあるものの、操作で戸惑うことはないからだ。インフォテイメントシステムは新世代設計のMIB4となった。
- 快適なドライビングをサポートする上質なシート。後席シートバックは3分割可倒式。
- ベースグレード以外のEleganceとR-Lineには空気圧式リラクゼーション機能を運転席と助手席に標準装備する。
- 多彩なシーンに応える大容量のラゲッジスペースは、先代より37ℓ拡大して652ℓを確保。
- 両手がふさがっていても自動でテールゲートを開閉できる便利な機能も搭載している。
パワートレインはガソリンの1.5L eTSIマイルドハイブリッドとクリーンディーゼルの2.0L TDIの2種類をラインナップ。前者はFF、後者は4WDの4MOTIONとなる。プラットフォームは従来のMQBからMQB evoへ、そしてアダプティブシャシーコントロールはDCCからDCC Proに進化。シャシーに大幅に手が入れられているのだ。今回はeTSI EleganceとeTSI R-Lineに試乗。DCC Proは後者にのみ装備されている。
動的質感の高さと奥深い走りが魅力
まずはeTSI Eleganceからステアリングを握ったが、全体的な動的質感がプレミアムカーと呼べるほどに高いことに驚いた。7速DSGは発進時や変速時にスムーズでトルクコンバーター式ATかと勘違いしてしまうほど。それでいてアクセルを踏み込んでいけばダイレクト感があって切れ味は鋭い。エンジンは1.5Lという排気量から想像するよりもずっと頼もしい。
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フォルクスワーゲンの新しいデザインコンセプトのもと、大胆に一新されたエクステリア。進化した駐車支援システム“ Park Assist Plus ”をはじめ、先進機能をさらに強化。最新の 運転支援&安全技術を搭載し、常に安心・快適なドライブを支える。
最大トルクを1500rpmという低回転から発生させるとともに、マイルドハイブリッドとしてはモーターのパワー&トルクが大きめで適切にアシストしているから、とくに常用域でのドライバビリティに優れているのだ。街中でも郊外路でも2000rpm前後で快適に走れてしまう。巡航時にアクセルペダルから右足を離すと積極的にエンジンを停止してコースティングモードになる。そのときの転がり方も、いかにも各部のフリクションが少ない印象で上質なクルマに乗っていることを実感できるのだ。乗り心地は、いかにも操縦安定性が高そうな引き締まったフォルクスワーゲンらしい雰囲気がありながらも、いやな硬さがなくてしなやか。プラットフォームの進化を感じるところだ。
eTSI R-Lineに乗り換えると、タイヤが2インチ大きい20インチとなるため、低速域でわずかにタイヤと路面のアタリに硬さを感じたものの、不快な感覚は見事に抑え込まれていた。これぞDCC Proの威力でコンフォートモードなどではゴツゴツ、ツンツンとした突き上げ感を一切シャットアウト。ソフトタッチだが無用にフラつくようなことのない快適志向の絶妙なバランスだ。
そのまま高速巡航やコーナリングに入っていってもロールやピッチングは適度に抑えられて、安心・安全に走れるからスポーツモードの必要性を感じさせないほどだ。とはいえ、ワインディングロードでスポーツモードを試してみると、ステアリング操作に対する反応がシャープになって一気にスポーティさを増した。SUVであることを忘れさせるほど俊敏性が高いハンドリングだが、スタビリティが高くて圧倒的な安心感があるのがフォルクスワーゲンならではのセッティングだ。
DCC Proの面白いところはダンパーの減衰力を15段階も設定できることでコンフォートよりもソフト、スポーツよりもハードにも寄せられる。いろいろと試して見たが、もっともソフトな設定で速度をあげていくと特有の浮遊感があったり、逆に締め上げるとボディの上下動がやや強引に抑え込まれる感覚などが味わえて興味深い。合わせてデフォルトの各モードがじつにバランス良く出来ていることを実感した。
あらゆる面で進化を果たしている新型ティグアンだが、もっとも印象深いのは動的質感の高さと、それゆえの奥深い走りだ。日常域では快適そのもので、スポーティな走りも楽しめるモデルなので、長い付き合いでも飽きがくることはないだろう。
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ティグアンにはクリーンディーゼルのTDIも同時にラインナップされている。今回取材したマイルドハイブリッドガソリンエンジン×前輪駆動のほかに、遠出や悪路・悪天候で揺るぎない安定した走りを実現する2Lクリーンディーゼル×4MOTION(4WD)をラインナップ。乗る人や住環境に応じて選べるのも魅力だ。
Specification
【フォルクスワーゲン・ティグアン eTSI エレガンス】
■車両本体価格(税込)=¥5,470,000
■全長/全幅/全高=4545/1840/1655mm
■ホイールベース=2680mm
■トレッド(前/後)=1585/1580mm
■車両重量=1600kg
■エンジン形式/種類=直4DOHC16Vターボ
■内径/行径=74.5/85.9mm
■総排気量=1497cc
■最高出力 ps(kW)/rpm=150(110)/5000-6000
■最大トルク Nm(㎏-m)/rpm=250(25.5)/1500-3500
■モーター最高出力 ps(kW)=18(13.5)
■モーター最大トルク Nm(㎏-m)=56(5.7)
■燃料タンク容量=60L(プレミアム)
■燃費(WLTC)km/L=15.6
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル 後:4リンク/コイル
■ブレーキ 前/後=Vディスク/ディスク
■タイヤ(ホイール) 前/後=235/55R18/235/55R18
【フォルクスワーゲン・ティグアンeTSI Rライン】
■車両本体価格(税込)=¥5,889,000
■全長/全幅/全高=4540/1860/1655mm
■ホイールベース=2680mm
■トレッド(前/後)=1590/1585mm
■車両重量=1610kg
■エンジン形式/種類=直4DOHC16Vターボ
■内径/行径=74.5/85.9mm
■総排気量=1497cc
■最高出力=150ps(110kW)/5000-6000rpm
■最大トルク Nm=250Nm(25.5kg-m)/1500-3500rpm
■モーター最高出力=18ps(13.5kW)
■モーター最大トルク=56Nm(5.7kg-m)
■燃料タンク容量=60L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=15.6km/L
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル 後:4リンク/コイル
■ブレーキ 前/後=Vディスク/ディスク
■タイヤ(ホイール)前/後=255/40R20/255/40R20
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