
ボディサイズこそ大きく変わらないが…?
フェラーリは2025年7月1日、V8エンジンをフロントミッドに搭載するFRの2+クーペ、「Amalfi(アマルフィ)」を発表した。搭載されるツインターボV8(最高出力640ps)については先にパワートレイン編の記事でお伝えしたので、ここではアマルフィのスタイリングと空力関連について、先代モデル「Roma(ローマ)」からの変化を見ていこう。
【画像23枚】流麗かつスポーティ!「アマルフィ」の見事なボディを隅々まで見る
彫刻的でモダンなエクステリア
アマルフィは、伝統と革新を融合させ、同社の美的基準を新たなレベルへ引き上げるものと位置づけられている。ボディサイズは、全長4660mm×全幅1974mm×全高1301mm、ホイールベース2670mm。これらの数値はローマからほぼ変わっておらず、全長が4mm長くなった以外は同一だ。
トレッドはフロントが1652mm、リアが1679mmで、これもローマから変わらない。重量は1470kg(乾燥重量)で、これは2kg軽くなったかたちだ。パワーウェイトレシオは2.29 kg/psで、これはローマと比べて0.08kg/ps小さくなったが、むろん重量よりも最高出力の向上の方が大きな要素である。なお、ローマで実現されていた前後重量配分50:50は、アマルフィでも変わらない。
さて、アマルフィのデザインは、フラヴィオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・スタイリング・センターが手掛けたもの。「ローマ」のエレガントなプロポーションから着想を得つつ、より彫刻的でモダンなフォルムを追求したとしている。エクステリアは、流麗な単一の塊から削り出したような「スピードフォルム」を起点とし、力強くダイナミックな個性が与えられている。
フロント周りは、ローマでも見られた伝統的なグリルを廃し、ボディ同色のフェンダーが浮遊するように見えるデザインが採用されており、その下を走るダークカラーの帯にセンサーやヘッドライトが目立たないように内蔵されている。目元のはっきりした顔立ちのローマより、その印象は12チリンドリやプロサングエに近いと言ってよいだろう。フロント下部のスプリッターは、視覚的に車幅を強調し、スポーティな印象を高める役割を持つ。
ボディサイドに目を移すと、はっきりシャープに入ったエッジと、大きく流れるくさび形のテーマによって、これもまたローマとは印象を異にする。このエッジはボディを一周する力強いラインとなり、コンパクトなテールの形状をまとめている。
テールライトはグラフィックカット内に隠され、過去のフェラーリを想起させながらもモダンな視覚効果を狙ったデザインとなっている。リアスクリーンとスポイラーが一体化した形状も特徴のひとつだ。ローマのリアエンドとはテールライトの形状に近しいものもある一方、サイドから回り込んできたエッジ以外の無駄なプレスは排除され、ライセンスプレートがディフューザーに移ったこともあってマッシブな印象を強めている。
発表時のローンチカラーには「ヴェルデ・コスティエラ」が設定された。このカラーはアマルフィ海岸の海にインスパイアされた青みがかったグリーンで、彫刻的なボディ表面を際立たせる効果を狙いとしている。
デザインと統合された先進のエアロダイナミクス
アマルフィの空力開発は、熱流体力学部門とスタイリング・センターの緊密な連携のもとで行われたとのこと。デザイン性と機能性の両立を目指し、流体解析(CFD)、風洞実験、デザイン修正を統合したプロセスで開発が進められたと発表されており、またボディの各ディテールは、特定の空力機能を果たすよう緻密に設計されているという。
まずアンダーボディでは、前後タイヤの前方に空力フェアリングを装備し、ドラッグの低減と効率向上を図っている。また、フロントのダウンフォースはボルテックス・ジェネレーターとスプリッター内蔵のディフューザーによって生成される。ローマにも同様のボルテックス・ジェネレーターが備わっていたが、アマルフィではこれらがさらに最適化されたわけである。
ヘッドライト上部にはバイパス・ダクトが設けられ、フロントエンドとエンジンベイを接続し、圧力上昇を抑えつつ冷却性能を確保する。フロント中央には水冷ラジエーターとコンデンサーを配置、サイドインテークからの気流はインタークーラー気流を供給、効率的な熱管理を行う。このヘッドライト上部のバイパス・ダクトは、ローマには見られなかったアマルフィの新しい空力デザインのひとつである。
一方、リアディフューザーはダウンフォースとドラッグの最適なバランスを追求するため、全面的に再設計された。中央の流路で気流を制御・拡大させることで、後流の勢いを強めて走行安定性を向上させる構造となっている 。
また、リアの空力性能において中心的な役割を担うのは、テールと一体化された可動式のアクティブ・ウィングである。このコンセプトはローマから引き継がれたものであるが、性能はさらに向上したとのこと。このウィングは、走行状況に応じて3つのポジションを自動で切り替える。すなわち、以下の3モードである。
【1】ロー・ドラッグ(LD)
【2】ミディアム・ダウンフォース(MD): 直線走行時などに作動し、空気抵抗を最小化する。
【3】ハイ・ダウンフォース(HD): 高速コーナリングやハードブレーキングの際に作動する。
ハイ・ダウンフォースでは、時速250km/hの場合ドラッグ(空気抵抗)の増加を4%に抑えながら、110kgのダウンフォースを発生させる。このウィングは全自動制御で低速走行時には格納され、車両本来のクリーンなラインを維持するよう図られている。
タイヤとホイールは、デザイン、パフォーマンス、快適性のバランスを考慮して選定されたとのことで、均整の取れたプロポーションと乗り心地を両立させるため、20インチのホイールが採用されている。
インテリアについても、追って別の記事にて触れることとしたい。