
ポルトガルで証明された、新世代HPEVのポテンシャル
その存在が明かされて以来、最高出力920psという圧倒的なパワーと、量産車として前例のない10,000rpmというレブリミットで世界中の自動車ファンの注目を一身に集めてきたランボルギーニの新型HPEV(ハイパフォーマンス・エレクトリファイド・ビークル)「テメラリオ」。その公表されたスペックは果たして本物なのか。その真価を問うべく、ポルトガルのサーキットを舞台に、グローバル・ドライビング・ローンチ・イベントが開催された。世界各国のメディア関係者やディーラーパートナーが初めてそのステアリングを握り、テメラリオが単なるスペックシート上の怪物ではないことを、その五感で証明する機会を得たのである。
【画像43枚】空力を突き詰めたボディライン。ランボルギーニ「テメラリオ」の緻密なデザインを細部まで見る
心臓部は920psのV8ハイブリッド、空力も徹底的に強化
イベントの舞台となったポルトガルのエストリル・サーキットは、1993年にかの伝説的ドライバー、アイルトン・セナがランボルギーニのV12 F1エンジンをテストしたという逸話を持つ、モータースポーツの聖地の一つである。この歴史的な場所で、15日間にわたり、軽量仕様の「アレッジェリータ」を含む新型テメラリオが数百ラップを周回。約100人のメディア関係者と56市場を代表するディーラーが、新時代のランボルギーニが秘めるポテンシャルのすべてを体験した。
テメラリオの心臓部は、完全新設計の4.0L V8ツインターボエンジンと3基の電気モーターで構成される。参加者たちは、このハイブリッドシステムが公称通り、システム総合で最高出力920ps、最大トルク800Nmを発生させることを実証した。
特に注目されたのは、9,000rpmから9,750rpmという高回転域で800psを絞り出すV8エンジンと、量産スーパースポーツカーとして史上初めて到達した10,000rpmというレブリミットである。ストレートでは、ドライバーたちがその咆哮とともに異次元のパワーフィールを体験。イベントではローンチコントロールを試す機会も設けられ、0-100km/h加速わずか2.7秒、0-200km/h加速7.3秒未満、そして最高速度343km/hという、公表されていたパフォーマンスが机上の空論ではないことを証明してみせた。
しかし、テメラリオの真価はストレートの速さだけではない。全長4.36kmのコースに設けられた13のコーナーが、そのシャシー性能とエアロダイナミクスの高さを浮き彫りにした。新しいハイブリッドパワートレインを搭載するために刷新されたボディデザインは、特にリアの空力負荷を劇的に増加させ、ダウンフォースは先代モデル比で実に103%も向上している。
さらに、ボディや内装のコンポーネントで25kg以上の軽量化を達成する「アレッジェリータ」パッケージ装着車では、そのダウンフォースは+158%にも達し、全体的な空力効率も+67%向上するという。サーキットでは、この強力なダウンフォースが高速コーナーでの安定性に絶大な効果を発揮したことは想像に難くない。また、新開発の8速デュアルクラッチトランスミッションによる迅速なシフトチェンジも、サーキット走行における大きな武器となった。
ドリフトモードから心拍数連携まで。走りを遊び尽くす新機能
今回の試乗会では、テメラリオが持つ13種類のドライビングモードの中から、新たに設けられたドリフトモードを試すこともできた。これにより、ドライバーはテメラリオの持つもう一つの顔、すなわち究極の「ファン・トゥ・ドライブ」を体験することができた。さらに、自身の走行を深く分析できる専用アプリ「ランボルギーニ・テレメトリー2.0」も用意された。ラップタイムやセクター分析はもちろん、Apple Watchと連携してドライバーの心拍数と車両データを統合するというユニークな機能も提供され、参加者は自身のドライビングを多角的に振り返ることができた。
この圧倒的なパフォーマンスを路面に伝えるのは、オフィシャル・テクニカル・パートナーであるブリヂストンが開発した専用タイヤである。サマー/サーキット用の「ポテンザ・スポーツ」「ポテンザ・レース」、ウィンター用の「ブリザックLM005」が用意され、いずれもテメラリオの性能を最大限に引き出すべくカスタム設計されている。
今回のダイナミック・ローンチは、テメラリオがランボルギーニの電動化戦略「ディレツィオーネ・コル・タウリ」を象徴する重要なモデルであることを改めて世界に示した。そして何より、事前に公表された驚異的なスペックを裏切ることなく、それを体感として証明してみせたのである。テメラリオは、スーパースポーツカーの新たなベンチマークを打ち立てると同時に、テクノロジーの進化が運転の本質的な楽しさを決して奪うものではないという、力強いメッセージを発信したと言えるだろう。
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