コラム

意外な構造!「メイヤーズ・マンクス」純正ロールバー装着とナロートレッド化。深化するカスタムの記録【デューンバギー恍惚日記】第7回

理想のスタイルと性能を目指して

【デューンバギー恍惚日記】第6回に続き、「メイヤーズ・マンクス」のレポートをお届けしていこう。2017年末にレストアが完了し、「ムーンアイズ」主催“横浜ホットロッドカスタムショー”に出展、いよいよ公道へと乗り出して、念願のビーチ(砂浜)での走行も敢行したマンクス。今回は、より充実したスタイルとパフォーマンスを求めて、その後に実施した改良点をご報告する。

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フロント・トレッドを狭くする

「千里浜なぎさドライブウェイ」を走った2018年秋から2年後、2020年11月に1回目の車検を迎えたので、レストア以来お世話になっている神奈川県大和市の「K’s Collection(ケーズコレクション/以下「ケーズ」と略)」に持ち込んだ。そして車検と同時に、かねてより実施したいと考えていた改良作業を、このタイミングで盛り込むことにした。

改良ポイントの1つ目は「フロント・トレッドを狭くする」ことである。このマンクスはフロントにEMPI製ディスク・ブレーキが組み込まれており、それゆえ通常のドラム仕様のVWビートルと比較して左右約1インチずつトレッドが拡がっている。アライメントの適確な調整が大前提だが、基本的にはワイドトレッドである方が直進およびコーナリング時の安定性などの点でベターなのかもしれない。

しかし左右僅か1インチずつであっても、見た目には明らかに広い感じが否めなかった。とは言えディスク・ブレーキのパフォーマンスは捨てがたいというわけで、フロントアクスルを横浜・本牧の空冷VWショップ“フラット4”が取り扱っている米国“CBパフォーマンス・パーツ”製、“2インチ・ナロード・アクスルビーム”に交換。このアクスルは車高調整にも利便な機能を備えているとのこと。これでフロント・トレッドは可能な限り狭く補正された。

リアのポジティブ・キャンバーを是正する

フロント・トレッドのナロード(狭くする)と共に、バランスを見極めて実施したかったのが、リアのポジティブ・キャンバーを抑えて、駐車状態でフラットなキャンバーとすること。ノーマルのVWビートルのリア自体、もともとポジティブ・キャンバーがついているが、マンクスはボディが極端に軽いせいなのか、キャンバーの度合いも強めに見えた。

海外のマンクスの画像をいろいろ観察してみると、オフロード車輌はポジキャン強め、ストリート寄り車輛は少しポジキャンを抑えているように見える。それらを踏まえ、ストリート志向の自分のマンクスはリアの車高を僅かに下げて、ビートル本来のポジティブ・キャンバーを是正することにした。併せてフロントの車高も僅かにロワード実施。

筆者が所有する1969年式「メイヤーズ・マンクス」近影。1回目の車検完了時(2020年冬)と比べると、フロントタイヤ、マフラーなどが異なる。

念願の純正ロールバーをオーダー

この時に予定していた中で最も手間のかかった作業は、おそらく純正ロールバーへの交換だったと思う。というのも、まずはメイヤーズ・マンクス社にパーツを直接注文したのだが、そんな矢先、同社が身売りをしたというショッキングなニュースが入ってきた。この時点でブルース御大は存命だったが、早めに次世代への引き継ぎに踏み切ったわけだ。そんな時期だったので先方もバタバタしていたのだろう、オーダーに対するレスが全くない。

困った挙句、出版社時代の同僚で、当時から現在も米国“Hot VWs”誌の編集長を務めているシン・ワタナベ氏に連絡、メイヤーズ・マンクス社の通販担当者を紹介してもらい、漸くオーダーに対する返答を得た。ロールバーを通常の郵送にすると送料が高価につくので、ケーズ下村さんの采配でフラット4さんの輸入用パレットに便乗させて頂けることになり、このお陰様でタイミング的にも年内の入荷が可能となった。シン・ワタナベ氏とフラット4さんに改めて深く感謝します。

純正ロールバーの意外な取り付け方法

レストア完了時に着けたロールバーは細いスチール製の「むく」のもので、シャシーパンに垂直にボルト留めされていた。純正ロールバーがケーズに到着した日、作業の様子を見に行ったところ、古いロールバーは既に外され、新しいものの位置決め中であった。純正ロールバー本体はステンレス・スチール製で、以前のものよりかなり太いが中空である。

位置決めに立ち会いながら初めて知った事実。なんと純正ロールバーはシャシーパンに届かない! というか、パンに直接マウントする方式ではなかった。想像の斜め上を行くその方式とは……まず、ロールバー下端に溶接された小さなプレートの穴からリア方向にボルトを通し、ボディパネルを穿孔、外側でL字型のスチール部品をナットで固定、そして更にこのL字部品を、パン後端に溶接されたトーションバー・チューブ両端に付くショックタワープレート基部にボルトとナットで固定するという方法だ。

文字では説明しにくいので画像ギャラリーをご覧頂きたい。またボディへの固定は補足的な意味合いで左右それぞれ2本ずつのボルト&ナットが受け持つ。理に適っているような、なんだか不安なような……。しかしまぁ何十年にもわたって多くのマンクスが同じ形で走ってきたのだから信じてみることにした。

サイドミラーとハザード

レストア当初から、このマンクスの基本的なコンセプトは極力無駄を省き、シンプルに仕上げるというものだった。方向性が決まるやケーズ下村さんの作業方針は実にハッキリしていて、当初はワイパーすらも”意味がないから付けなくて良い”と主張されたのだが、無理を言って付けてもらったほどだ。

そんな調子だから、最初の3年間はなんとサイドミラーも無かったのだが、後方からの音情報が剥き出しのリアエンジン音で掻き消されて無に等しいため、少なくとも片方には付けていないと危険だと考え、この車検時にハルシオン製の丸型ミラーをステー加工して運転席側に付けて頂いた。あとハザード・ランプが無い事もしばしば不便に感じていたので追加して貰った。スイッチはダッシュボード下の目立たないところにある。

またしてもビキニトップ

純正ロールバーはリア側に傾斜したスタイルとなっている。従って以前よりもルーフ面の前後長が伸びて、従来のビキニトップが張れなくなってしまったため、前回と同じく米国の「TJ(Tijuana)Kustoms」製「Sombrero(ソンブレロ)」という製品を購入した。これで漸く寸法合わせせずともOKと思いきや、この製品には微妙に長さの違うバリエーションが2つあり、長い方を選んだところ、なんと微妙に長すぎた……。

しかし救う神あり。神戸在住のバギー友達が引き取ってくれるというので、長すぎたものを彼に委ねて、同製品の少し短いバージョンを新たに購入して試したら、漸くピッタリのサイズとなった。

マンクス・フェイズ2完成!

こうして1回目の車検+追加モディファイ作業が完了。早速乗り出してみると、以前とは明らかにドライビング時の感覚が異なった。まず車高を落としたことは安定性の面からは正解だった思う。フロントのナロートレッド化については、自分の運転技術ではなんら変化が体感できず。

そして苦労したロールバーだが、マウント方式の意外さはさておき、ショックタワープレートに固定されたことで、リア荷重は以前より多少増えると共に、パン本体に固定する形式ではなくなったためか、乗り味はややしなやかになったように感じた。言い方を変えれば、グニャグニャ傾向に振ったわけだが、マンクス本来の乗り味を楽しむという意味合いでは、正解だったと思っている。

次回は車検後に手を入れた部分や、ちょっとしたトラブルのエピソードをお届けします。お楽しみに!

【画像16枚】この違いが君には分かるか? 細部のモディファイ度合いを確認する

山田剛久

AUTHOR

1962年、富山県生まれ。約20年の出版社勤務を経てフリーに。自動車、模型、モータースポーツ関連のニッチ記事専門ライター兼編集者として、ごく稀に重宝される。ホットロッド/カスタム、1930〜’70年代の内外モータースポーツ、古い自動車模型や玩具が専門分野。「多摩川スピードウェイの会」会員。

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