






















2007-2025、生産累計48,000台。日産R35 GT-R、その歴史に終止符
さる2025年8月26日、日産自動車は、2007年から18年にわたり生産してきたR35型「GT-R」の生産が終了したことを発表した。我々が初めてR35 GT-Rの姿を目にしたのは、2001年の東京モーターショーに出展された「NISSAN GT-R CONCEPT」。そして、正式な「NISSAN GT-R」として登場したのは、さらに6年後の東京モーターショーだった。R35 GT-Rは、18年間で約48,000台が生産され、高性能スポーツカーの象徴として世界中のファンを魅了。最後の1台となるR35 GT-Rの最後の1台がラインオフされる日産栃木工場に向かった。
【画像22枚】これが最後の輝き。ミッドナイトパープルの最終生産車 、そのディテールと式典の様子
「GT-Rのゴッドファーザー」田村宏志氏、R35への熱き想いを語る
まずは日産のスポーツカーの企画開発に長きにわたって携わり、ファンの間では親しみを込めて「GT-Rのゴッドファーザー」や「GT-Rの父」と呼ばれている田村宏志氏が登壇。退職後の現在は日産のブランドアンバサダーとして活躍している。会場ではGT-R開発中の熱い想いやエピソードが語られた。
中でも印象的なお話だったのは、GT-Rの特別なグレードとして知られる「T-Spec」。これは当初、「Trend Maker」と「Traction Master」を意味する「TM-Spec」になるはずだったそうで、実はこの「TM」は社内でのR35 GT-Rの開発呼称としても使用されていたという。「いま何の開発に携わっているいるの?」「TM」「ああ、次期型R35 GT-Rね」という具合に。一方、Z33型「フェアレディZ」は、「GI(Global Identity)」と呼ばれていたそうだ。最終的には、社内での調整を経て「T-Spec」に短縮されのだという。
規制、安全、そして部品供給問題。R35 GT-Rが直面した現実
続いて登壇したのは、現在シャシーシステム開発グループの主担を務める松本光貴氏。松本氏は某自動車メーカーのエンジニアだったが、2001年のGT-Rコンセプトを見て、このクルマを開発したいと思い、日産に転職。GT-Rの運動性能&シャシー設計に従事し、2016年にはGT-Rの実験責任者として従事していた人物だ。
なぜGT-Rは生産中止になったのか? その理由について伺った。
「一つの理由で回答するのは非常に難しいのですが、まず一つは、GT-Rが持たなくてはいけないパワースペック。その排ガス規制のクリア、衝突防止のカメラを持てるかどうか、それが相応しいポテンシャルがあるかどうか、といった環境や安全ということです。たとえば、開発パートナーさんから供給していただく半導体がもう世の中にない、では、その半導体の代わりになるものを作れば継続することはできるけれども、そこに至るまでの開発費が膨大なものになります。それは結局、お客様への価格に影響するわけです」
もうこの先、GT-Rは作られないのだろうか?
「断言はできませんが、次世代GT-Rというクルマがでてくるかもしれません。いずれにしても、お客様の皆さまが応援してくださることが、次のGT-Rが誕生する活力になることは間違いないので、これからもどうぞよろしくお願いいたします」
CEOが約束「GT-Rは進化し、再び登場する」
CEOのイヴァン・エスピノーサ氏は、オンラインで式典に参加し、次のようにスピーチした。
「18年間の長きにわたり、R35 GT-Rは自動車史に不朽の足跡を残しました。その輝かしい歴史は、私たちのチームと世界中のお客様の情熱の証です。この特別なストーリーの一部を担ってくださった皆さまに感謝します。GT-Rファンの皆さま、これはGT-Rとの永遠の別れではありません。GT-Rは、いつか再び皆さまのもとに戻ってくることを目指していますが、GT-Rの名前には高い期待が寄せられており、真に特別なクルマにのみ与えられるものです。R35はその基準をさらに高く引き上げました。したがって、皆さまには辛抱強くお待ちいただくことをお願いしたいと思います。現時点で正確な計画は確定していませんが、GT-Rは進化し、再び登場するでしょう」
【ル・ボラン編集長の所感】日本が誇るスーパースポーツへ、感謝を込めて
これまで何度、R35 GT-Rを取材しただろう。コクピットに座ると、色んなメカニカルノイズがした。ポルシェ911が新型になる度に、GT-Rと比較試乗を企画した。もちろん、モータージャーナリストの方に執筆いただくために運んだだけで、私ごときが振り回せるクルマではなかったのは確かだったが、とにかく乗っていて楽しかった。気分が高揚した。日本が誇れる数少ないスポーツカー「GT-R」。次世代GT-Rが誕生できるよう、陰ながら応援したいと思った1日だった。