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【速攻試乗】ウェット性能に“劇的な”進化。ミシュラン「クロスクライメート3」、そして「SPORT」がオールシーズンタイヤの走りを変える

ミシュランクロスクライメート3スポーツ
ミシュランクロスクライメート3
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クロスクライメート2からの進化を実感

ミシュランが提案するオールシーズンカテゴリータイヤ「クロスクライメート2/クロスクライメート2 SUV」が、第3世代へとモデルチェンジ。今回はそのスタンダードモデルである「クロスクライメート3」と、プレミアムカー/スポーツカーに向けて新たに設定された「クロスクライメート3 SPORT」の性能を、GKNドライブジャパンのプルービンググラウンドでテストした。

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ミシュランクロスクライメート3

サイズラインアップは、クロスクライメート3が16~21インチでタイヤ幅が195~285、クロスクライメート3スポーツが18~21インチ、205~295で、2025年10月より順次発売予定となっている。

その立ち位置は「冬も走れる夏タイヤ」

クロスクライメートシリーズは、一般的にいうオールシーズンタイヤだ。そしてミシュラン自身はこれを「冬も走れる夏タイヤ」と表現している。そのサイドウォールにはスノーフレークマークが刻印されているから、冬用タイヤ規制時でもそのまま高速道路を通行可能。しかしあくまでそのスタンスはサマータイヤであり、冬期に積雪路や、凍結路を日常的に走る場合は、スタッドレスタイヤの装着を推奨している。たとえば近年はダンロップ「シンクロウェザー」のように氷上路面までもカバーするオールシーズンタイヤも登場したが、ミシュランはその守備範囲を現状は、はっきりと分けている。メインターゲットは非降雪地域のユーザーで、具体的には関東以南、東名阪地域だという。とはいえ降雪地域のユーザーが夏タイヤとして使っても、春や秋に降る季節外れの雪にオーバーラップさせるなど、賢い使い方ができるだろう。

ウェットブレーキで耐摩耗性をチェック

今回のテストドライブは、いわゆるサマータイヤとしての性能を確認した。「ウェットブレーキング性能」ではクロスクライメート3を使って、新品と残溝2mmまでスクラブしたタイヤを比較。ミシュランとしてはおなじみのメニューだ。3本ずつ計測した制動距離は新品のベストが34.01mで、3本の平均が34.19mだった。対して残溝2mmのベストは38.04mで、3本の平均が38.66mとなった。

ミシュランクロスクライメート3

ウェットブレーキテストでは新品と残溝2mmまでスクラブしたタイヤを比較。制動距離の差が+4.39m、増加率が約+12%という結果で、クロスクライメート3の耐摩耗性が優れていることがわかった。

そして技術的には、トレッドパターンとコンパウンドのふたつでウェットブレーキング性能を高めてきた。クロスクライメートといえば雪中剪断性能を高める「Vシェイプパターン」が特徴的なタイヤだ。そして今回ミシュランはこの中央にセンターグルーヴを一本追加することで、クロスクライメート3/SPORTのウェット性能を高めた。
さらに言うとクロスクライメート2よりもブロック幅を細くして、ブロックピッチとエッジ数を増加。これによってスノーグリップ性能も高めたというが、フルブレーキングでもタイヤが倒れ込むような挙動はなかった。

ウェットハンドリング路ではクロスライメート3 SPORTの高いハンドリング性能を実感

ウェットハンドリング路では、クロスライメート3 SPORTとクロスクライメート2を走り比べた。車輌はフォルクスワーゲン・ゴルフでタイヤサイズは225/40R18だ。この比較は、とてもわかりやすかった。
クロスクライメート2はしなやかに路面をつかむ感じで、ウェット路面に対してフィーリング的にも高い安心感がある。しかしこれを追い込んでいくと、特に横方向でトレッド面が若干倒れ込むような応答遅れと共に、アンダーステアが強くなって行く。

対してクロスクライメート3 SPORTは走り始めからかっちりとしたフィーリングで、操舵レスポンスが素早く、ライントレース性も良好。追い込んだ状況でもタイヤがきちんと踏ん張って、弱アンダーステアを一定に保つことができる。スポーティに走れるだけでなく、ウェット路面での限界性能も高くなった印象だ。

ミシュランクロスクライメート3

ウェットハンドリング路では、クロスライメート3 SPORTとクロスクライメート2を比較。クロスクライメート3 SPORTは走り始めからかっちりとしたフィーリングで、操舵レスポンスが素早く、ライントレース性も良好。追い込んだ状況でも弱アンダーステアを一定に保つことができた。

コンパウンド的には、オールシーズンタイヤ専用となる「サーマル アダプティブ コンパウンド2.0」が投入された。これは雪上性能を維持したままドライ/ウェット性能を向上できる、オールシーズンタイヤ専用のトレッドコンパウンドだという。
また構造的には、このクロスクライメート3 SPORTにのみ、パイロットスポーツ シリーズに採用される「ダイナミック レスポンス テクノロジー」が搭載された。具体的にはアラミドとナイロンを組み合わせたハイブリッドキャッププライで剛性を高め、タイヤの踏ん張り感を高め、操舵応答性をシャキッとさせた。ちなみにテストドライバーのドライブではこのウェットハンドリング路でのラップタイムを、クロスクライメート2から2.4%向上させたという(※車輌はトヨタ86、タイヤサイズは225/40R18)。

クロスクライメート2も、実はかなり高いウェット旋回性能を持つタイヤだ。しかしクロスクライメート3 SPORTは、性能的にもハンドリングレスポンス的にも、これを上回る印象だった。これならオールシーズンタイヤが気になっていたスポーツカーユーザーも、試してみる価値はありそう。次回はぜひ、ドライ路面でスポーツカーやプレミアムカーにこれを装着してインプレッションしてみたい。

スポーティな走りを求めるならクロスクライメート3がおススメ

そして最後は、外周路を使ってクロスクライメート3の乗り心地や静粛性を確かめた。車輌はウェットブレーキングのときと同じで、トヨタ・カローラ ツーリングだ。コースは50km/hのスラロームから始まり、80km/hでのバンク、80km/hでのダブルレーンチェンジ、そして100km/hでの高速バンクから再び80km/hへと減速して、人工的な段差を通過した。

今回初めてクロスクライメート3でドライ路面を走ったが、その印象はかなりソフト。コンパウンドだけが柔らかいというのではなく、ケースと共にバランスが取られたもっちり感で、クロスクライメート2のフィーリングが、そのまま受け継がれていると感じた。

それだけにハンドリングレスポンスも穏やかで、スラロームでは若干の応答遅れを感じた。荷重が掛かればグリップは立ち上がるが、その分早く操舵してやらねばならない。クロスクライメート3がこうしたハンドリングキャラクターである理由は、雪上性能を高めたからだと思う。これは先代クロスクライメート2のときからの特性だが、路面をしなやかにつかむ分だけレスポンスは若干悪くなる。

ミシュランクロスクライメート3

外周路では、クロスクライメート3の乗り心地や静粛性、ハンドリングをチェック。快適性は高いものの、ハンドリングレスポンスは穏やかなので、スポーティな走りを求めたいならクロスクライメート3スポーツがオススメだ。

だからこそハンドリングレスポンスにこだわるユーザーには「SPORT」を設定したのだろう。ただしSPORTは、18インチ以上にしか設定されないからちょっと残念だ。同様にバンクではターン時のレスポンスが穏やかで、接地荷重が高まると安定感がグッと増す。ダブルレーンチェンジでは一舵目の応答をスムーズにしないと、レーンチェンジ後の揺り返しは若干起きる。
とはいえ穏やかな特性を理解できれば乗り心地も良く、スポーティよりもコンフォートタイプだと捉えればその動きにも納得はできる。タイヤの限界性能は高く担保されている。グリップ性能も実は結構高いのだけれど、スポーティに走らせるタイヤではない。言ってみれば同じ夏タイヤでも、パイロットスポーツではなくプライマシータイプだ。

感心したのはこうした穏やかなグリップ特性を持ちながらも、ロードノイズが静かなことだ。これは細分化されたブロックを最適配置することで、不快な周波数帯の音を効果的に削減する「ピアノアコースティックテクノロジー」の効果だという。コースの終盤には連続する段差が用意されており、その上を通過するときも入力はきちんとダンピングされていて乗り心地がよかった。とはいえテストコースは概ねフラットで路面状況がよいから、実際のNVH(ノイズ・ハーシュネス・バイブレーション)に関しては、リアルワールドでの検証は必要だと思う。クロスクライメート2でも普段遣いに耐えうる静粛性は保たれていたから、それがどこまで静かになっているのかは興味深いところだ。

総じてクロスクライメート3/SPORTの夏タイヤ性能は、かなり高いレベルにまで向上していた。特にミシュランがここ数年こだわっている「永持性能=サステナブル」という考え方は、徹底されていると感じた。
キャラクター的には、夏タイヤといはいえかなり雪上性能を意識したタイヤだ。だからクロスクライメート3はその穏やかさを使って、コンフォート性能にもこれを利用しているのだと思う。そしてより高いハンドリングレスポンスを求めるユーザーには、クロスクライメート3 SPORTが用意されている。

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