コラム

旧車の操縦性改善はタイヤから。見た目を損なわない「バイアスルック・ラジアル」という最適解【デューンバギー恍惚日記】第8回

1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス
1969年式メイヤーズ・マンクス

デューンバギーのメンテナンス

【デューンバギー恍惚日記】第7回に続き、「メイヤーズ・マンクス」のレポートをお届けしていこう。2017年末にレストアが完了し、「ムーンアイズ」主催のショー出展やビーチ(砂浜)での走行も敢行、2020年末の1回目車検では、純正ロールバーへの交換やフロント・ナロードなどの改良を実施したマンクス。今回は、2022年末の2回目の車検車検前までに、経験したメンテナンス、トラブル対応、更なるアップデートなどをご報告する。

【画像18枚】青空とマンクスとメンテナンス風景の画像を見る!

壊れるところがないほどシンプルだけど

話が前後して恐縮だが、そもそもデューンバギーの購入に踏み切るか否か躊躇していた時、最後に背中を押してくれたのは、モパー(クライスラー系マッスルカー)やホットロッドに造詣の深いクルマ関係の友人の一言だった。というのも、自分が本当に欲しいクルマを模索していた時に、モパーやホットロッド(’41ウィリス・クーペやアングリア・ベース)或いは「ビル・トーマス・チータ」のレプリカなども一応候補にあったのだ。

その選択肢の中で、デューンバギーに傾きつつあった自分に友人が掛けてくれた一言とは、「バギーが良いよ。空冷VWショップは日本全国にあるから、どこにいても整備が安心だし、そもそもバギーには壊れる箇所がないよ 笑」というものだった。確かにシンプルで壊れにくいのは空冷VWベースのデューンバギーの美点であり、実際に乗り始めて更にその想いを深めた。とはいえ古いクルマゆえ、やはり多少のトラブルは不可避である。

「バグワークス」を紹介してもらう

私事だが、自分は仕事の都合で東京と郷里・富山を行ったり来たりすることが多い。従ってマンクスも時期によって首都圏か富山のどちらかに置いておくことになり、東京に置いてある場合の主治医は当然レストアをして頂いた神奈川県・大和市の「ケーズコレクション(以下ケーズと略す)」さんだが、富山にいる場合の主治医も必要だ。

そこで、千里浜を走ってから約半年経過した2019年5月頃、ケーズの下村社長にお願いして、富山市の空冷VW専門ショップ「バグワークス」の林社長を紹介して頂いた。「バグワークス」さんは、極上コンディションのオリジナル空冷VWに傾注する全国的に有名な老舗だ。それゆえバギーを持ち込むことに最初は遠慮があったのが正直なところ。

富山市にある空冷VW専門ショップ「バグワークス」の林社長(向かって左側)とご子息。ケーズコレクション の下村社長から紹介して頂いた(2019年)。

そんな訳で取り敢えず最初は、オイル交換とファンベルトの調整をお願いしつつ、おそるおそるご挨拶させていただいたのだが、林さんとご子息は最初からとても親切に接してくださったのでホッとひと安心。富山で何かトラブルに見舞われても大丈夫だ、と大変心強く思った。

スピードメーター・ケーブル破断

紹介して頂いてからしばらくしたある日、富山で友人とドライブ中にスピードメーターの針が動いていないことに気がついたので、林さんに連絡、ファクトリーに余裕のあるタイミングを教えて頂き、バグワークスさんに持ち込んだ。

実はメーター・ケーブルのトラブルは2回目である。ビートルのスピードメーター・ケーブルは機械式。メーター裏側から伸びたケーブルは、スピンドルを抜けて左側前輪ハブ中央のグリースキャップと繋がっている。実に簡潔な構造なのだが、ビートルとマンクスではボディ形状も違うので、長さも取り回しも異なってくる。適正な長さで可能な限り緩やかに伸びて繋がっているのが望ましいが、マンクスについてはやってみなければわからないのが本当のところ。

過去2回はサードパーティ製のケーブルだったが、どうやら相性が良くなかったようだ。結局、林さんの進言で、稀少なドイツ製の純正パーツを使用して対処して頂き、それ以来6年間、この箇所のトラブルは全く再発していない。

フロントタイヤを「バイアスルック・ラジアル」に

タイヤの話は以前からかなり書いている。自分としてはもう少し安定した操縦性が欲しいと感じており、その為にはまずはフロントタイヤをバイアスからラジアルに交換したいと考えていたところ、カルマンギア乗りの竹内耕太氏(現ル・ボラン編集部デスク)が、大阪の空冷VWショップ「ガレージビンテージ」から発売になったばかりの同社オリジナル・タイヤ、「Autobahn《R》」を勧めてくれた。

「Autobahn(アウトバーン)《R》」は、’50年代から’60年代にかけてVWの新車に装着されていた指定タイヤのデザインを、細部にわたり忠実に再現したシリーズ。当時のバイアスそのままの見た目でありながらラジアル構造を持つ「バイアスルック・ラジアル」タイヤであり、直進安定性の良さやロードノイズ軽減ですこぶる評判が良い。

サイズがいくつかあるが、自分のマンクスのフロントは4.5Jなので、’53年以降のタイプ1(ビートル)/ ’55年以降のカルマンギアに指定だったサイズの560R15(4〜5J対応)を選んだ。このときはマンクスを富山に置いていたが、ケーズの下村さんにも意見をお聞きした上で交換を決め、バグワークスの林さんにタイヤを取り寄せて頂き、交換作業をお願いした。このタイヤを得たことで、直進安定性が向上、乗り味もややマイルドになり、大変満足している。

大阪の空冷VWショップ「ガレージビンテージ」のバイアスルック・ラジアル「Autobahn《R》」。サイズは’53年〜のビートルに指定の560R15を選択。

オルタネーター・プーリーの交換

そんなナイスなタイヤに交換してもらった同日、意気揚々バグワークスから帰ろうとすると、林さんから「オルタネーター・プーリーがダメになっている」とご指摘を頂く。自分で気づけなかったのが情けないが、あらためてアイドリング状態でプーリーの回転を見てみると、確かにグラつきがひどい。そんなわけで引き続いて翌日プーリーの交換をお願いすることになった。

ケーズの下村さんにも症状を動画で共有・確認して頂き、バグワークスで林さんに交換して頂く旨を報告する。このプーリーはクランクのプーリーとベルトで繋がっていて、オルタネーター奥の冷却用ファンを回す役割もあり、空冷エンジンにとっては生命線だけに、複数のサードパーティから多くの交換用パーツが出ている。更に一口に空冷VWと言っても、年代や車種によってパーツの仕様や諸元は微妙に異なっていて素人にはパーツ選びの判断が難しい。

傷んだプーリーを外してもらって観察してみると素材はおそらくスチールでプレス加工のような質感である。林さんからは「大事な部分だからこの機に純正パーツに交換してはどうか」と進言して頂き、純正プーリーを見せて頂いたところ、アイアンの鋳物でバランス取りもされていて、如何にも高精度のドイツ製といった風情。一見して、それに交換して頂くことを決定。

本来はタイプ2のレイト・バス用らしいが、自分のマンクスのエンジンには若干の加工で綺麗にセットして頂くことができた。その後の4年間、このプーリーに関してもトラブルは全くない。ありがたい事である。

こんな調子で、極めてシンプルで壊れるところなどないはずの空冷VWベースのバギーだが、当然の如くウィークポイントはあるわけだ。自分でも日頃からの最低限の気遣いをしてこれからも楽しみたい。次回はマフラーやクラッチケーブル交換などのエピソードをお伝えします。どうぞお楽しみに!

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