LE VOLANT モデルカー俱楽部

WAGO・ン…色っぽい!ステーションワゴンとパワー、そして杢目の関係性とは!?【アメリカンカープラモ・クロニクル】第54回

1967年型シボレー・ワゴン(カタログ)
1958年型マーキュリー・ハードトップワゴン(カタログ)
1958年型マーキュリー・ハードトップワゴン(カタログ)
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
レベル(・モノグラム)製1/25スケール・プラモデル「’48フォード・ウッディ」
1951年型プリマス(カタログ)
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55シボレー・ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55ノマド」
amt製1/25スケール・プラモデル「’55ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
モノグラム製1/24スケール・プラモデル「’57シェビー・ノマド」
1956年型フォード・ステーションワゴン(カタログ)
1956年型フォード・ステーションワゴン(カタログ)
レベル製プラモデル「フォード・カントリースクワイア」
モノグラム(レベル)製1/25スケール・プラモデル「’57フォード・デルリオ・ランチワゴン」
モノグラム(レベル)製1/25スケール・プラモデル「’57フォード・デルリオ・ランチワゴン」
モノグラム(レベル)製1/25スケール・プラモデル「’57フォード・デルリオ・ランチワゴン」
モノグラム(レベル)製1/25スケール・プラモデル「’57フォード・デルリオ・ランチワゴン」
モノグラム(レベル)製1/25スケール・プラモデル「’57フォード・デルリオ・ランチワゴン」
モノグラム(レベル)製1/25スケール・プラモデル「’57フォード・デルリオ・ランチワゴン」
ジョーハン製1/25スケール・プラモデル「’60プリマス・ステーションワゴン」
ジョーハン製1/25スケール・プラモデル「’60プリマス・ステーションワゴン」
ジョーハン製1/25スケール・プラモデル「’60プリマス・ステーションワゴン」
ジョーハン製1/25スケール・プラモデル「’60プリマス・ステーションワゴン」
ジョーハン製1/25スケール・プラモデル「’60プリマス・ステーションワゴン」
ジョーハン製1/25スケール・プラモデル「’60プリマス・ステーションワゴン」
ジョーハン製1/25スケール・プラモデル「ポリス・エマージェンシー・ワゴン・バイ・プリマス」
amt製1/25スケール・プラモデル「ビュイック・スペシャル」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「シボレー・ノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「’63シェビーⅡステーションワゴン」
amt(ラウンド2)製1/25スケール・プラモデル「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1964シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1964シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1964シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1964シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1964シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1964シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1965シェベル・ステーションワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「サーフワゴン」
1967年型シボレー・ワゴン(カタログ)
1967年型シボレー・ワゴン(カタログ)
1967年型シボレー・ワゴン(カタログ)
モノグラム(レベル)製1/25スケール・プラモデル「’57フォード・デルリオ・ランチワゴン」
amt製1/25スケール・プラモデル「1964シェベル・ステーションワゴン」
シボレー・ノマド(1954)
1958年型マーキュリー・コロニーパーク
1967年型シボレー・ワゴン(カタログ)

Roundup:4 主役を奪え(Stealing the thunder)

ステーションワゴンの不人気は、もはや疑う余地もない「自明」のものとして、半ば常識のように受け取られている。だが、日常には母親の買い物袋をがっしりと受け止め、ホリデーには家族のレジャーを力強く支え、いついかなるときにも家庭の幸福に忠実であろうとしたこの車が、どうしてこれほどまでに「かっこ悪い」とされ、揶揄の的となってしまったのか。

そもそもデトロイトが、自らの誇りとして設計・生産した自動車を「かっこ悪いことを承知で売る」などということがあるだろうか? 答えはもちろん「否」である。

【画像141枚】パワーがあるってイイですね!ワゴンとプラモの相関を確認する

間延びしたセダン=ワゴンにあらず

ステーションワゴン──古風に響く名だが、起源はむしろ都市的である。アメリカでは鉄道駅(station)とホテルや住居を結び、人と荷をまとめて運んだ「デポハック」(depot hack)の系譜に、イギリスでは大邸宅=エステート(estate)の内外で猟具や犬、家人と荷を載せて走った「エステートカー」の系譜にそれぞれ由来する。いずれも「生活のハブと日常圏を結ぶ実用車」であって、ジョン・ウェインやアレックス・コードが主役を張った西部劇映画にいう駅馬車=ステージコーチ(stagecoach)とはまったく別物である。

馬車時代から人の送迎はおこなわれ、1900~10年代に自動車化がすすみ、1920年代にはその普及が加速した。木製コーチワークを得たワゴンはコーチビルダーや家具工房の技術を駆使して多彩に架装され、第二次世界大戦後は生産性・耐候性・維持コストなどの合理的理由からオールスチール化がすすみ、いよいよ家庭へと本格的に定着していく。「ママの車」は戦後になってようやく形成されたイメージに過ぎない。

定義を急ぐならこうだろう。延長されたルーフとリア開口部(テールゲート)をもち、乗客と貨物の配分を可変にできる車体形式——それがステーションワゴンである。用途は公から私へと時代に応じてうつろうが、可変性という核は変わらない。ステーションワゴンはその可変性ゆえに、長尺ルーフの補強・シートの三列化・荷室フロア・テールゲート機構・防音防振材・快適装備など構造的にたいへん手のかかる車種であり、これを「間延びしたセダン」とみなすのは完全に誤りである。

ゆえに、ステーションワゴンは重い。

この「重さ」は欠点ではなく、先に挙げた数々の「条件」の総和として必然的に立ち上がる設計要請だ。すべてが重く、どれひとつ軽く見積もることができない。満載の家族と荷物、ときに牽引やエアコンまで抱え込んで、坂道でも合流でも余裕をもって走らなければならない。そのとき必要とされるパワーは、瞬発的な見せびらかしのそれではなく、低中速域の分厚いトルクと余剰出力=「楽に走る力」である。

1958年型マーキュリー・コロニーパーク。前年に登場したコロニーパークは、マーキュリーのステーションワゴンにおけるフラッグシップ的モデルで、サイドおよびリアにあしらわれた木目パネルがその特徴であった。ボディー形式はBピラーを持たないハードトップ・ワゴンだが、この形はそれより下位のボイジャーやコミューターでも同じものとなる。1958年型で登場した430-cidのエンジン“スーパーマローダー”はマーキュリーの全モデルでオプション設定されていたが、その本来の役目はワゴンに合わせたものであった。

マッスルカー史観がすっかりそれを見えざる領域に押しやっているが、ワゴンこそが大排気量エンジンを正当化してきた歴史が厳としてある。1958年、市販の乗用車として史上初の公称400馬力を超えてきたエンジンは、フォード・MEL V8のスペシャルモデルことマーキュリー430スーパーマローダーだった。

数字のインパクトに目を奪われがちだが、その本領はワゴンの心臓として選りすぐられたトルクにあった。重量級のコロニーパークのような上級ワゴンにとって、家族と荷物、ときにボートやトレーラーを伴う長距離移動を「涼しい顔」でこなせることは最高の安全装備であり、ゆとりのパワーは日常の秩序をなめらかに保つためのインフラだった。

ワゴンはイメージリーダーたりえたか?

ときにデトロイトはその重さに、あえて無造作の身振りを与えた——シボレーが社運を賭けた1955年の巨大キャンペーンに欠くべからざる一台として名を連ねたステーションワゴン=ノマドがそれだ。

傾斜したBピラーとラップアラウンドのリアガラス、ハードトップを思わせるサッシュを感じさせない2ドア、ベルエアと同じフロントフェンダーから伸びるトリム、7本のクローム桟が整然と並ぶスラント・リアゲート——ワゴンの体躯にクーペの身振りをそなえた瀟洒で奔放なこの「スポーツワゴン」は、2,571ドルという高値をつけて当時の市場を唸らせた。

未曾有の戦争終結から10年、「平和な時代のアメリカ」を条件づけるかのように展開されたシボレー・キャンペーンの颯爽たるイメージリーダーは、他でもないノマド・ステーションワゴンだった。孤高のシボレーであるコルベット譲りの開放的なリア・ホイールウェル——他のシボレーには一切許されなかったさりげない意匠が、そのことを証していた。

サイドウィンドウ・グラフィックが低く、ピラーの傾斜したスタイリッシュな初代シボレー・ノマドだが、1954年のモトラマで試作車が発表された際には、この通りボディ前後のデザインをコルベットをベースにしたものであった。この姿から、初代ノマドがワゴンとしての実用性をいかにネグレクトしたものだったかが分かるだろう。このままの姿で市販化されていれば、あるいはそのセールスもまた違った結果になっていたのかもしれない。

その鋭く、他に代えのきかないノマドのイメージリーダー振りは、その高価をものともせず、充分な成功と「もっともアメリカらしい車」の称号を手に入れたものの、他と共通するパーツをほとんど持たない、そのあまりにもつぶしがきかない性格によって、鮮烈な印象の「次手」に苦しんだ。そのまばゆいハロ(後光)をまんまと利用したのは、1956年のたった1年だけ市場にあらわれた仇敵フォードのパークレーン・ステーションワゴンだった。

フォードはあくまで’56ランチワゴンをベースに、手許の部品箱を抜かりなくあさって、充分すぎるほど豪華で独創的なこの車を作り上げ、ノマドより300ドル近くも安く市場に送り出した。2年目のノマドの販売台数7.5~8千台に対し、パークレーンは倍の1万5千台あまりを販売してのけ、つかんだ顧客の心を翌年のデルリオワゴン他、さらに豊富なラインナップへと引き渡した。

プラモデルキットとしてのステーションワゴン

ここから程なくして、デトロイトからはその製品プロモーションから派生した組立式の模型キットを登場させる。われわれが愛好してやまない1/25スケールのアメリカンカープラモ、その嚆矢となるアニュアルキット——そのはじまりは本連載第51回が詳述したとおり、エドセルの大規模な販促キャンペーンがスライド方式を含む金型コストを押し上げるかたちで成立したが、ステーションワゴンのキット化は後手にまわることとなった。

これはけっして「ステーションワゴンなど人気がなかった」ことを示すものではない。1/1実車がそうであるように、1/25スケールのステーションワゴンもまた、設計・製造にあたって途方もないコストを要求する難度の高いモデルだったのである。

ステーションワゴンのプラモデルは、1960年を契機として各社立て続けに製品化がなされたが、いずれも「正調」アニュアルキットと呼ぶにはなにかが過剰であったり足りなかったり、キット化の難しさを体現するものばかりだった。

まずデトロイトのアニュアルキット誕生以前の1957年に、レベルから’57フォード・カントリースクワイアがフィギュア付きで登場したのを先駆とするが、このキットはデトロイトの内製と呼べるものではなく、それなりに精密ではあるがボディーの構成も旧弊なマルチピース、フィギュアが付属するプレイセット的色彩が濃いものだった。

ワンピースボディーを含むステーションワゴン・キットは1960年、ハブリーの’60フォード・カントリースクワイアが先駆的だが、翌年に続くamtの’61ビュイック・スペシャル・ワゴンと同様、エンジンパーツが付属しないプロモーショナルモデル由来の成型品を「調整」してパッケージングしたものといえた。

とくに後者のややねじれた構成——アニュアルキットの特殊枠(コンパクト枠)としてトレーラーとその積荷である巨大なクライスラー・ヘミV8エンジンとともにキット化されたが、ワゴンのフード下に収まるべきエンジンはない——はやはり異質であり、本格的なワゴンキットへの取り組みとは見做し難い。

あからさまに「おまけ」偏重の構成は、ひとつの金型からハードトップ/コンバーチブルの2商品を生み出せないワゴンゆえの、内容重量の積み上げによる価格調整であるという性格付けは否めず、ビュイック本体の金型も早々に失われている。

ノマドからシェベルへ、そしてノマドとシェベルと

1年の空白を置いた1963年、amtアニュアルキットにおいてシェビーII/ノヴァのコンバーチブル、ハードトップ、そしてステーションワゴンが、すべてエンジン完備で登場したことは画期的だった。さながらトランプのフェイスカード(J・Q・K)である。当時のアメリカンカープラモの上り調子を思えば当然ながら、莫大な消費に支えられつつ、かつてないほどコストがかさむ金型にワゴンのそれが加えられたことは、ワゴン=厄介者ではけっしてなかったことを端的に示していた。

時は熟し、ワゴンもまたデトロイトの重要な顔として名指しされた1963年は、アニュアルキットにはあたらない年式落ちの’60シボレー・ワゴン(エンジンなきプロモーショナルモデル金型)が、amtのさらなる新機軸、年少者向けのキットと謳われたジュニア・トロフィー・シリーズのひとつとしても登場した記念すべき年となった。

ハードトップとコンバーチブルをひとつの金型から打ち分けることができた「普通の車」ではある程度の経済的合理性は獲得済み、ステーションワゴンとなると事態はそう簡単にはいかなかったが、どうあれこのときステーションワゴンは名も台詞もある重要な役者としてステージに立った。役者の資質は芝居をさせてみるまでわからない。ステーションワゴンはひょっとしたらシドニー・ポワチエかもしれなかった。

アニュアルキットとは「デトロイトの内製」であり、それが権威の源泉でもあったわけだが、そこからなんらかの車種・モデルが「漏れる」ということにはやはり深刻な問題があった。ましてやデトロイトが「売りたい」モデルがそこに含まれない事態は看過できないはずである。だからこそシボレーは、シェベルという画期的かつ「祝祭の継承」(トライファイブの復活)において、普通車ではなくワゴン(ノマドに相当)をエンジンの付いた正調アニュアルキットのテーマに「指定」したのではないか(作例制作:畔蒜幸雄)。

より大胆なブレイクスルーは翌1964年から1965年にかけ、やはりシボレーをテーマに展開されることとなった。「黄金のトライファイブ」の一翼を担った’55シボレー・ノマドと、最新鋭の’64シボレー・シェベルワゴンがほぼ時期を同じくして、エンジンパーツ付きでキット化されたのである。前者は凝ったつくりのトロフィー・シリーズとして、後者はフレッシュネスが身上のアニュアルキットとしてであった。

この展開には、シボレー自身が思い描くひとつの「絵」が二重写しとなってあらわれていた。おそらく歴史上、二度とは再現できない輝かしい象徴としてのノマドと、その10年越しのモダナイズとしてのシェベルワゴン。ホイールベースはまったく同じ115インチ——一部サイトなどでシェベルワゴンのホイールベースを120インチとする記述がみられるが、延長ホイールベースを持つ新Aボディーワゴンはビュイック/オールズモビルのみであり、シボレーはあえてそれを選択しなかった。

公式に謳われてこそいないが、本連載が折にふれて述べるとおり、シェベルはトライファイブの再来であり、ふたたびあらわれた祝祭のモデルだった。正調アニュアルキットとしてはじめて登場したシェベルワゴンは本来、美しいノマドをネガとして時代の印画紙に焼きつけられるはずの新しいイコンとなるはずだった。

付属するエンジンパーツは、ステーションワゴンに当然求められてしかるべきパワフルなシボレーV8であったが、同時にエンジンの付属しないクラフツマン・シリーズ(年少者向けジュニア・トロフィーの後身)としてキット化されたハードトップのシェベル・マリブSSが「存在してしまった」がため、すでにスーパーカー/マッスルカー熱に罹患しはじめていたホビー市場はこれをはっきり「悪意」として認識してしまった。

なぜステーションワゴンごときにV8エンジンを付けておきながら、「本命」マリブSSのフード下が空洞なのか——ホビーユーザーはamtのこの選択を痛恨のミスジャッジであるとして、以降60年もの長きにわたって、飽くことなく責め続けた。

「独身者の機械」がもたらす興奮をひらすら求める市場の熱狂を冷ます言葉——たとえば「パワフルなエンジンをくすねたのはステーションワゴンか、それともスーパーカー/マッスルカーなのか?」(Who stole my thunder?)といった問い——は、amtはもちろんシボレーにも用意することはできず、わずか3年にも満たないこのピリオドが、ステーションワゴンのプラモデル化という悦ばしき可能性をほぼ完全に根絶やしにしてしまった。

かくしてホビーユーザーが「ステーションワゴンが欲しい」といえば、それがまるで「ママのおっぱい」恋しさであるかのように扱う言説ができあがった。1967年、実車のラインナップに加わったシェベル・コンクールワゴンは、その取ってつけたように安易なスキューモーフ・ウッドの締まらなさによって「珍車」「冴えないワゴン」とされ、シボレーの諦め切れなさをよそに、ひたすら物笑いの種にされることとなった。

待たれる新たなワゴン・キットの登場

2015年、勇敢なるレベルは、まっさらの新金型キットとして、’57フォード・デルリオワゴンのすばらしいキットを市場に放った。往年のXイン1を彷彿とさせる選択肢として警察車両を用意し、1年遅れの派生キットとしてギャッサーワゴンさえ用意してみせたレベルは、2024年にはさらにレストモッド・ワゴンを展開、コロナ禍によってようやく「プラモデル」なるものを見出した若いファンが手に取れる選択肢に、古くてモダンなステーションワゴンを加えてみせた。

口さがない者からは「苦し紛れ」と評され、透徹したまなざしを持つ者からは「歴史の回復である」と讃えられるレベルの判断に、本連載は心から祝福を送るものである。

デトロイトの「内製」と呼べるアニュアルキットの成立前夜である1957年に、レベルが同年のフォード・カントリースクワイア——初のステーションワゴン・キットを市場に送り出したことは事実である。元祖であることの矜持が、2015年という時代に同じ年式の「より豪華な」ステーションワゴンを精密なプラモデルとして再誕させた、という見方ももちろん成立するだろう(品番85-4193)。「レベルにはワゴンをやる理由があった」と。

【画像141枚】パワーがあるってイイですね!ワゴンとプラモの相関を確認する

※今回、amt 1/25「’55シボレー・ノマド」、「’55ノマド」、「1963シェビーⅡステーションワゴン」、「1965シェベル・ステーションワゴン」、amt(ラウンド2)1/25「コカ・コーラ1963シェビーⅡノヴァ・ステーションワゴン」、モノグラム1/24「’57シェビー・ノマド」、レベル(・モノグラム)1/25「’48フォード・ウッディ」、そして1967年型シボレー・ワゴン(カタログ)の画像は、アメリカ車模型専門店FLEETWOOD(Tel.0774-32-1953)のご協力をいただき撮影しました。ありがとうございました。

■「アメリカンカープラモ・クロニクル」連載記事一覧はこちら

写真:羽田 洋、秦 正史、畔蒜幸雄

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