
宇宙のドラマを讃えるワンオフ・モデル
ロールス・ロイス・モーター・カーズは、宇宙の壮大なドラマをテーマとした、世界に1台だけのビスポーク・モデル『カリナン・コスモス』を発表した。この特別な1台は宇宙への尽きない探求心を共有するある家族のために、ロールス・ロイスのビスポーク部門「ビスポーク・コレクティブ」がその技術の粋を結集して製作したものである。そのハイライトは、ブランド史上初となる完全ハンドペイントで仕上げられた「スターライト・ヘッドライナー」だ。
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日常のあらゆる旅を星々を巡る壮大な航海へと変える
このプロジェクトの始点となったのは、依頼主である、とある家族の純粋な夢であった。彼らは「私たちは、家族が永遠に記憶に残るようなものを作りたいと考えていました。宇宙の本質を捉え、どんな夢も手の届かないものではないことを示すような1台を」とその想いを語る。この言葉を受け、ロールス・ロイスはそのビジョンを現実のものとするため、プライベート・オフィス・ドバイを通じてこの壮大なプロジェクトに着手したのである。
まず、そのエクステリアは「アウター・リミッツ(Outer Limits)」というテーマの下、真夜中の空に広がる月光の柔らかな輝きを彷彿とさせる、きらめくアラベスカート・パールの塗装が施された。この深みのあるボディカラーに、熟練の職人が手描きで入れたチャールズ・ブルーのツイン・コーチラインが鮮やかなアクセントを加える。そしてボンネットの先端では、ブランドの象徴であるスピリット・オブ・エクスタシーが、夜には遠い星のように淡い光を放つイルミネーション仕様となっている。これらすべてが一体となり、静謐な宇宙空間に浮かぶ天体のような荘厳な佇まいをカリナンに与えているのだ。
ドアを開けると、「エクスプローリング・インナー・スペース(Exploring Inner Space)」をテーマとした、穏やかで瞑想的な空間が広がる。深宇宙の静寂と驚異からインスピレーションを得たインテリアは、リクライニングシートにチャールズ・ブルーとグレース・ホワイトの上質なレザーが採用され、グレース・ホワイトのコントラスト・ステッチとパイピングが洗練された印象を際立たせる。
また、各部にあしらわれたピアノ・ホワイトのウッドパネルは、人工衛星の筐体のような高い光沢感を持ち、シャープでテクニカルな雰囲気を添えている。さらに、このモデルのためだけに特別にデザインされた「星団(スタークラスター)モチーフ」が、ドアパネルやヘッドレストには精巧な刺繍として、助手席前のフェイシアにはハンドペイントのアートワークとして施され、内なる宇宙の探求というテーマをより一層深めている。
160時間を費やして製作されたハンドペイント・スターライト・ヘッドライナー
そして、このカリナン・コスモスの真骨頂と言えるのが、室内ルーフに広がるハンドペイント・スターライト・ヘッドライナーである。これはロールス・ロイス史上初の試みであり、1人の社内アーティストが実に160時間もの時間を費やし、すべてフリーハンドで夜空の天の川を描き出したものである。ビスポークのインテリアカラーと調和するように色彩が調整されたそのアートワークは、星々の霞がかった帯と宇宙の霧が織りなす、優美で幻想的な宇宙の風景を見事に表現している。
その制作工程は驚くほど緻密である。光り輝く星雲を表現するために、20回以上もアクリル絵の具を塗り重ねて深みと立体感を創出。さらに、霧のような繊細な質感を出すために、アーティストは意外な道具、メイクアップブラシを用いて顔料の最も薄い層を優しく付着させたという。きらめく無数の星々は、細く尖った筆とスパッタリング(点描)技法を駆使して描かれ、有機的で天体のような質感が与えられた。驚くべきことに、この複雑なペイントアートが完成し、保護コーティングが施された後に、初めて光ファイバーを通すための穴が、アートワークの輪郭を損なわないよう一つひとつ手作業で開けられ、配置されたのである。
ロールス・ロイスのビスポーク部門責任者であるフィル・ファーブル・ド・ラ・グランジュ氏は「このプロジェクトは、ビスポーク・コレクティブにとっても新たなフロンティアへの挑戦でした。その構想は大胆で、実現は壮観です。このカリナン・コスモスは、ロールス・ロイスがいかにお客様の別世界のようなビジョンを、ドラマ、深み、そして絶対的な精度をもって実現するかを証明しています」と語る。
ある特別な記念日に合わせて家族のもとへ届けられたカリナン・コスモスは、単なる移動手段ではなく、日常のあらゆる旅を星々を巡る壮大な航海へと変える、唯一無二の存在となったのである。
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