コラム

EV一辺倒からの変化、そして「C-ITS」体験。IAAモビリティに見るドイツの現在地【池ノ内ミドリのジャーマン日記】

IAAモビリティ
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BEV一辺倒からICEやPHEVが程よくミックスされた展示に

IAAモビリティが2年ぶりに我が街ミュンヘンで開催されました! フランクフルトから移ってきて既に第3回目となりますので、もうすっかりミュンヘンの恒例アトラクションとして地元にも定着してきました。

【画像34枚】2年ぶりの開催で盛り上がったミュンヘン「IAAモビリティ」の詳細を見る

今年もプレスデーから参加しましたが、前回までは確かプレスパスには開催期間中の市内の交通機関のチケットが含まれていたと記憶しているのですが、今回はそれがなくなっていました。ドイツは自動車業界やその関連企業の大不況中の真っ只中なので、仕方がない事なのかもしれません。
IAAモビリティこのIAAモビリティは大きく分けて2つに会場が分かれており、郊外にあるメッセ会場には数は少ないですが自動車メーカーはもちろんの事、サプライヤー等の関連企業、セミナー会場等があります。もうひとつは市内中心地の各所に分散されている自動車メーカーを中心とした展示スペースで、こちらはどなたでも全て入場無料で入場出来ます。

BMWはX3のBEV版「iX3」をワールドプレミア

さて、BMWはIAAのプレスデーで毎年恒例の朝一番の8時半にメッセ会場でプレゼンテーションが開催されました。今回の目玉はiX3、いわゆるX3のEV版の発表でしたが、事前にプレスリリースが出ていました。お膝元のミュンヘンに住んでいると発表される随分前の1年半ほど前からは少なくともカモフラージュ模様の車両を見掛けますし、発売前のカモフラージュなしの車両もどんどん走っていますので地元民としては特に新鮮さを感じませんので朝一番はパスして、のんびり愛車で自宅を出ました。

特に事前に調べて行っていたワケではありませんので、ゆっくり会場をブラブラしていると何人か知人にばったり出会って立ち話をして道草も。ミュンヘンにIAAが引っ越してからは、残念ながら日本の自動車メーカーの出展はゼロになりました。その代わりに中国や韓国の自動車メーカーやサプライヤーに非常に勢いがあるな、と感じます。

いろんなブースを見て回る中に、ふと見覚えのある「Die Autobahn」というブースをお見掛けして、思わず吸い寄せられてしまいました。日常的に利用する大好きなドイツの高速道路 アウトバーンを管理・運営している公的機関です。もしかしたらフランクフルト時代からずっと出展されていたのかも知れませんが、私がこのブースを訪れたのは初めてでした。

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IAAのテストドライブブースでもアウトバーンをより安全に走行する為の安全対策やヒントのレクチャーを警察官の方がやさしくレクチャー

広報の方にご挨拶した後は、日独のアウトバーン事情で盛り上がりました。ドイツと日本は自動車産業が国の大きな経済を担っていると同時に、戦後の復興と共に経済成長を経て自動車が一般市民にも普及し、それに伴うアウトバーン/高速道路の発展は非常に似ています。数多く高速道路に掛かっている橋の老朽化に伴う検査や架け替え工事等、日独の問題点が良く似ている事を教えて頂き、とても勉強になりました。また、私が日常的にアウトバーンを好んで運転している中で、ドイツは他国に比べて運転マナーが良い方だとお話すると、とても驚いておられました。

走行中に事故や車両故障等の危険を察知して警告をする「C-ITS」を初体験

その際「Die Autobahn」の方から、ドイツや近隣国の一部で既に運用が始まっているC-ITSというシステムについてご説明を頂きました。英語ではCooperative Intelligent Transport System、日本語では協調型高度道路交通システムと称されます。ごく簡単にまとめると、C-ITSが搭載されている自動車での走行中に、事故や車両故障等の危険を察知して車両を通して音やメッセージで警告をするシステムで、それは警察車両やADAC(ドイツ自動車連盟)のロードサービスカー等と連動されていて、瞬時に愛車へ危険を知らせてくれるようです。
このC-ITSは可能な限り事故を減らす為はもちろんの事、アウトバーンの路肩などで道路整備や事故処理を行ってくださる方々の生命を守る為でもあるのです。大きな警告を出して作業されているものの、そこへ追突してしまっての死亡事故は後を絶たないのだとか。
C-ITSを実際に体験させて頂けるという事ですので「Die Autobahn」でC-ITSを開発なさっているエンジニアの方達の運転されているVWのティグアンに同乗させて頂き、メッセ会場のアウトバーンで実体験をさせて頂く事に。私の愛車は既に7年が経過したそこそこ古いクルマとあり、そんなハイテクなシステムは搭載されていませんので、最新の安全システムが搭載された賢いクルマにワクワクドキドキします。

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IAAの敷地内で、事故が発生した際を想定しての警察車両の先導や警察車両とC-ITSシステムの連動を体験させて頂きました

まずは、メッセ敷地内の駐車場で、警察官の方も加わったアウトバーンや一般道路で事故があった際のデモンストレーションを。ドイツのアウトバーンでは事故が起きた際には速やかに救急車両や警察車両がスムーズに現場へ通行出来るようにすぐに路肩へ避ける必要があります。(従わない場合には罰金の対象になります)その際にも警察車両から送信された情報を速やかにC-ITS搭載の車両へ情報伝達が行われ、危険回避や多重事故を防止する事が出来るのだそうです。
いよいよアウトバーンへ出て、あらかじめ用意されているADACの車両や高速道路の警告版の着いた車両が路肩に停車している車両を通過するデモンストレーションを体験しました。私は非常に多くアウトバーンを利用する長距離ドライバーですので、今回デモンスとレーション用のシチュエーションは毎回アウトバーンで日常的に目にする光景です。

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アウトバーンを走行中、作業や工事車両停車区域を走行中を示す掲示

C-ITSシステムなどハイテクな装備がない私の愛車を運転している際には、自分の目で観て確認し、交通情報を聴きながら気を付けながら走行しているのですが、C-ITS搭載車ならば、うっかり見過ごした際にも賢い車両が運転手に危険を教えてくれる、というワケです。予想していたよりもしっかりと正確に情報が伝達されていたのはとても新鮮でした。

ヨーロッパは陸続きという事で、愛車で国境を越えて旅行をする事もありますが、言葉の不慣れな外国旅行の際にも役立つのはとても素晴らしいですね。私自身が何度も経験している事なのですが、言葉の分からない外国で運転している際に、標識ではなく文字で警告されている場合等に外国語の意味が分からない……。そんな時にも愛車の設定した言語で警告を知る事が出来たら、外国の不慣れな道の運転にもとても心強いですよね。
日本を訪れる外国人の観光客の方々のレンタカーでの事故が多発しているそうですが、まさしくそんな方々の事故を少しでも防ぐ為にも、英語や多言語で対応出来るC-ITSが日本で普及すると少しでも事故が減るのかも知れませんね。

ドイツ政府によると、ドイツでは2015年から実験開始となったこのC-ITSは近隣国や自動車関連サプライヤー、各種団体や州の他に自動車メーカーではVWグループ、BMW、オペル、ドイツ・フォード、ダイムラーグループがパートナーとして加わっています。VWとそのグループ企業であるクプラの最新車両のモデルの一部には既に搭載されていますが、他の自動車メーカーやブランドが今後C-ITSを新モデルに搭載されるかどうかは、各社の判断に任されているようです。

IAAは現代社会のニーズや指針に沿った新しいカタチに

ドイツの自動車メーカーでいうとVW(フォルクスワーゲン)のティグアンを始めた内燃機関とEVモデル等の数多くの現行モデル、そしてスペインのクプラの一部のモデルには既に搭載されているそうです。特にコロナ禍を経て一気に新車価格全般がかなり高騰しましたね。そして、昨今の最新モデルはハイテクな装備が搭載され安全雨天システムが充実する一方で気になるのは車両価格……となりますよね。

IAAがミュンヘンで開催された第1回目は、EUの指針でEVへまっしぐらという政策だったので、どこもかしこもEVだらけでしたが、第2回目の2年前は少し内燃機関が復活、今年はドイツやヨーロッパのメーカーではEV、内燃機関、ハイブリッドが程よくミックスという感じでした。また、ミュンヘンに移ってからはIAA ”モビリティ“という名称が追加されたとあり、単なる自動車のメッセというくくりではなく、自転車や公共交通機関など、あらゆるモビリティの共存や可能性を提唱されています。
街の中心地のオープンスペースでは、地元市民だけではなく国内外からの多くの観光客のみなさんも無料で展示ブースを閲覧出来ますので、より身近に自動車メーカーらの取り組みを体験出来るのは素晴らしい事だと思います。幼稚園や小学校の遠足でIAAのオープンスペースを見学に来ただろう児童たちも会場で見掛けました。未来を担うキッズたちが乗り物について楽しく学べるスペースや、各社が力を入れているサステナブルな取り組みの展示が見学出来、フランクフルト時代とはまた違った形にはなりましたが、現代社会のニーズや指針に沿った新しいカタチとなったIAAです。
日本やイタリアの自動車メーカーの展示が全くなくなってしまったのは、非常に残念な事です。次回の2027年の開催時には是非復帰を願いたいものですね。

【画像34枚】2年ぶりの開催で盛り上がったミュンヘン「IAAモビリティ」の詳細を見る

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