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伝説のクレマー「ポルシェ935 K3/80」と現役「911 GT3 R」が東京・丸の内に降臨! 走る現代アートを堪能した「ART CIRCLES 2026」

東京・丸の内のオフィス街に出現した、レーシングマシンと現代美術の異次元空間

現代アートのチャリティ展「ART CIRCLES 2026」東京展が丸の内で開催された。気鋭の10組による作品が並ぶ会場には、今季を戦い抜いた現役の「ポルシェ911 GT3 R EVO(992)」と、1970年代後半を席巻した伝説の「ポルシェ935 K3/80 by Kremer」が鎮座。極限のレースで磨かれた「自動車遺産」としての機能美・造形美と、現代美術が共鳴した空間をレポートする。

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気鋭の現代アーティスト10組の作品と、時代を超えた2台のレーシングポルシェが共鳴

「ART CIRCLES」は、三笠宮瑶子女王殿下を名誉総裁(初開催時は総裁)に戴くPYM一般社団法人により、被災地支援などを目的として立ち上げられた現代アートのチャリティグループ展だ。2025年に大阪にて「ART CIRCLES by BLACK WALL PROJECT」として初開催された。

今年2026年6月には、昨年と同じ会場であるレクサス大阪福島にて「ART CIRCLES 2026」を開催。現代アーティストの作品展示だけでなく、ハイパーカーやヴィンテージカーなど希少なコレクタブルカーを販売するビンゴスポーツにより「トヨタ2000GT」や「レクサスLFA」を同じ空間に展示するといったユニークな構成のアート展となった。

そして、続く東京展「ART CIRCLES 2026」が、10月9日(金)より10月17日(土)まで東京都千代田区丸の内にある三井住友銀行東館1階「アース ガーデン」にて開催された。

朝霧レオ、奥田雄太、落合翔平、小林賢太、GOMA、真田将太朗、友沢こたお、中西伶、山中雪乃、RAW LIFE FACTORY(敬称略)の10組の作品と共に、会場には2台のレーシングポルシェが鎮座。過酷なレーシングフィールドで鍛え抜かれた機能美と造形美を備えたマシンが、さまざまなアート作品との見事な融合を見せてくれた。

入場すると、まず出迎えてくれたのは、さまざまなGTカーレースにチャレンジしているモータースポーツチーム「BINGO RACING with LM CORSA」のレーシングマシン「ポルシェ911 GT3 R EVO(992)」だ。同チームが参戦する「SRO Japan Cup」に、昨年のフェラーリ296 GT3に代わって2026年シーズンから投入された車両である。9月に鈴鹿サーキットで行われた最終戦(ラウンド7&8)を戦い抜き、年間シリーズ3位というリザルトを残したばかりの現役マシンそのものである。

現代アートの奥に鎮座する、伝説の「シルエットフォーミュラ」

そして左右に配置されたアーティストの原画作品を鑑賞しながら、会場の一番奥まで歩を進めると、なんと1977年式の「ポルシェ935 K3/80 by Kremer」の姿が……。シルエットフォーミュラと呼ばれる、1976年から1981年までのグループ5規定から誕生したレーシングポルシェである。

簡単に説明すると、それまで排気量5L以下のスポーツカークラスに適用されていたグループ5は、1976年、人気に陰りの出てきたスポーツカーレースを盛り上げるために、大幅な改造が認められたレギュレーションへと変更された。

連続する24カ月間内に400台の製造を条件とした市販車をベースに、巨大なウイング、超ワイドタイヤを収めるためのオーバーフェンダーを纏った大迫力の外観で武装。自由度の高いモディファイによって専用に製作されたスペースフレームを採用するなど、フォーミュラカーのような純レーシングカーそのものの形態ながら、市販車のボンネットおよびドアパネルを含むコックピット周囲、ホイールアーチラインといった基本形状(シルエット)を残すという規定から「シルエットフォーミュラ」と呼ばれるようになった。

さらにハイパワーを絞り出すターボチャージャーからの派手なアフターファイヤーや、個性的なスポンサーのカラーリングを纏ったマシンたちは世界スポーツカー選手権などに導入され、そのシーンにおいて強烈な印象を残すことに成功したのだ。

1976年には、ポルシェがいち早く911ターボをベースにグループ5規定へ合わせた「935」を開発。これに触発されるように、BMWやランチア、フォード、トヨタなどをベースとした個性的なマシンも次々と誕生し、当時のモータースポーツシーンに強烈な印象を残した。空力を追求した巨大なウイングやワイドフェンダー、そして鮮やかなスポンサーカラーで武装したマシンたちは、まさに機能美を突き詰めた「走る現代アート」とも呼べる存在であり、今回の展示空間でも周囲の平面・立体作品に引けを取らない圧倒的なオーラを放っていた。

美術品としての価値を放つ「最強のプライベーター」クレマーの結晶

1976年のデビュー当初、ポルシェ935はワークスのみの使用に限られていた。そのため、プライベーターである「クレマー レーシング」(以下、クレマー)は、カレラRSRをベースに独自の「935 K1」を開発してWMC(世界メーカー選手権)に参戦。その後もK2、K3へと発展させながら磨きをかけていった。そしてクレマーは、1979年のル・マン24時間レースで総合優勝を果たすなど「最強のプライベーター」の称号に輝く。

今回展示された「ポルシェ935 K3/80」は、1977年にクレマーによって製作された後、最終進化形である「K3/80」仕様へとアップデートされ、1984年まで実戦を戦った個体だ。また、ル・マン クラシックをはじめとする国際格式のヒストリックカーレースにも近年まで出場しており、FIA HTPペーパーを取得済みのレースレディのコンディションにある。

会場では、鮮やかなイェーガーマイスターのオレンジを纏ったこの「935 K3/80」が、柵を設けない状態で展示されていた。ワークスとは一味違うクレマー独自の空力ディテールはもちろん、コックピットを覗き込めば耐久レーススペックの1.4bar付近を指すブースト計のスパイ針まで間近に確認できるという、ファンにはたまらない距離感だ。最高出力約750psを発生するモンスターマシンの無骨なメカニズムと、周囲を彩る現代アーティストの繊細な原画や「RAW LIFE FACTORY」の造形美あふれる花器に植えられた盆栽とのコントラストは、見る者に新たな感性を呼び起こしてくれた。

かつてフランス政府は、ル・マン24時間レースに出場したアルピーヌA210が日本へ輸出される際、海外流出を防ぐために販売業者へ利益が残らないほどの高率な関税を課し、レーシングマシンを美術品と同じく国宝級として扱ったことがある。今回のアートとレーシングマシンのコラボレーションもまた、こうした「自動車遺産」の価値を再認識させる素晴らしい試みであった。次回の開催ではどのような名車が選ばれるのか、今から楽しみでならない。

なお、会期中は展示のみが行われ、会期終了後にオンラインでの作品販売が予定されている。

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フォト=奥村純一/Junichi Okumura

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