機能とデザインを両立する鍛造モデル
鍛造製スポーツホイールの最高峰ブランドであるボルクレーシング。同ブランドから登場したG16はレース直結の技術を、速さだけでなく美しさを纏うためにも応用したプレミアムカー向けホイールだ。
ボルクレーシングG16の見せ場は、レース用ホイール直系の技術が投入された高機能鍛造モデルながら、鋳造製法が得意としてきたプレミアムなデザイン性を兼ね備える点。見る者にそう感じさせる理由のひとつは、余計なエッジが一切存在しない柔らかなラインと面構成が織りなす上品な佇まいに求められる。
しかし、このG16ならではといえる優美さはデザイン性の要求から生まれたものではない。レイズが「ノンストレスライン」と呼ぶ手法は増大する路面からの入力、高まる応力を効果的に分散させるべく一カ所にストレスを集中させないスムーズな曲線、面構成とするレース用ホイール由来のもの。G16では、それに8交点のクロススポークを組み合わせて効果的な応力分散を実現。鍛造ホイールらしい軽量、高強度だけでなく回頭性や操安性といった走りの質に関わる部分も向上させている。
また最適なインセットの設定を追求した結果、ディスクデザインは彫りの深い立体的なフェイスに。ラフメッシュの風情もあるクロススポークは正面から見れば繊細、30度からはマッシブ、50度からはダイナミックという具合に眺める角度に応じて表情を刻々と変化させる。それがホイールのデザイン性に大きく貢献していることはいわずもがなだが、G16の美しさは前述のノンストレスラインともども、すべて機能性に裏打ちされたものなのである。もちろん、鍛造ホイール本来のクオリティも申し分ない。国内の鍛造ホイール市場で長年トップのシェアを獲得しているレイズは、生産ラインに国内最大級となる1万トン鍛造機を導入。独自のRM8000回転金型鍛造工法を筆頭とする世界屈指の技術力を誇っているが、その手腕はG16にもいかんなく発揮されている。
製法は、モデルごとに専用金型を複数使用するデザイン成型金型鍛造工法を採用。G16では3次まで専用の金型が用意されているそうだが、これによりホイール形状に最適といえる金属組織、いわゆる鍛流線の生成を実現している。大径ホイールながら無駄な贅肉のない、細身のスポークに代表される繊細さはまさにこうした理想的な製法のたまものなのだ。
今回は、そんなG16をアウディS7に装着してみたのだが、そのマッチングはご覧の通り。中性的風情もあるアウディ本来の造形とG16の組み合わせが、それぞれの魅力を一層引き立てていることは明らか。また、3タイプあるG16のカラーからS7に組み合わせたのは抑制の効いた光沢を放つブライトニングメタルダークだったが、適度にスポーツ性をアピールできるという点でもS7には最適な組み合わせといえそうだ。ちなみにG16ではレイズのオリジナル鏡面加工技術、REFABを採用した仕様もラインアップ。透明度を高めクリアーコートを施した華やぎが自慢というこちらを選べば、また違った世界を演出することも可能かもしれない。