BEVのプロトタイプに初試乗
自動車メーカーそれぞれの戦略や、国や地域の事情により色合いに違いはあれど、パワートレインが電動化に向かっていることは間違いない。マツダは内燃機関を磨き上げることに熱心だが、それに電動化をプラスして効率を高めたり、あるいはクリーン発電地域では最適なソリューションとなるBEV(純粋な電気自動車)の開発も進めている。
今回は近い将来に市販化されるBEVの技術検証車に試乗した。外観はCX-30だが、プラットフォームはBEVのほか、ロータリーエンジンを組み合わせたレンジエクステンダーや、PHVなど電動車用に開発されたもの。バッテリーは床下に敷き詰められ、各ユニットはボンネット下に収められるFWD(前輪駆動車)だ。
駆動用モーターは最高出力143ps(105kW)、最大トルク265Nm。CX-30のボディに対して動力性能は十分以上で、不満はまったく感じない。それどころか、モーター特有の太いトルクによって頼もしささえ覚える。
また、マツダのBEVはあえてサウンドを追加。人間は力の強さを音でも知覚することに注目し、加速の強さを知らせて一体感を高めようという狙いだ。低速では低めのサウンドが中心となるが、加速を強めて速度が高まるにつれて高いサウンドが折り重なってくる。たしかに自然な感覚で、加減速のコントロールが思いのほか楽しい。
もうひとつの特徴は、ハンドリングの一体感が望外に高いことだ。ステアリングを切るとパワートレインのトルクを制御してフロントタイヤへの荷重を増やし、スムーズに曲がりやすくするGVC(Gベクタリングコントロール)は、エンジンよりもモーターのほうが制御の自由度が増し、より大きな効果を発揮する。BEVでは、ステアリングを戻していったときに後輪への荷重移動も促すという。変化に富んだワイディングでマツダのBEVを走らせると、まるで路面に吸い付いていくような感覚さえあった。思い通りにコーナーを走らせている実感が強いのだ。
環境対応車として注目を浴びるBEVだが、やはりマツダが造るとひと味違う。エンジン車以上に濃厚な人馬一体感を実現するポテンシャルを感じるのだ。