プジョーが発売したマルチパーパスヴィークルのリフターは、 SUVテイストを盛り込み、ルノー・カングーや兄弟車であるシトロエン・ベルランゴに立ち向かう。ここでは、いま狙い目のフレンチMPVの3台をピックアップして徹底分析してみた。
フレンチMPV市場に異変あり!
日本の路上でもっとも目にするルノーは何だろう? それは、若いファミリーを中心に支持されているカングーに違いない。実際、カングーは日本市場ではルノーの一番人気モデルであり、2019年は販売台数の3分の1以上を占める。シンプルなデザインとしゃれた雰囲気、広大なラゲッジスペースが多くのファンを魅了し、日本市場で揺るぎない地位を確立しているのはご存知のとおりだ。
現在販売されているのは、2007年に日本導入が始まった2代目。初代が5ナンバーサイズであったのに対し、現行型は全長×全幅×全高=4280×1830×1810mmの3ナンバーサイズに拡大。当初はファンのあいだから“デカングー”と揶揄されたが、デビューから10年以上経ったいまでも、その人気に陰りはない。現在は、1.2L直列4気筒ターボと6速オートマチックを積むZEN EDCと、6速マニュアルのZEN6MTというラインナップで、ともに前輪駆動仕様だ。
長らく日本ではカングーの独り勝ちの状況が続いてきた輸入MPV市場、ここにきて、同じフランスのシトロエンとプジョーがライバルを送り込んできた。それが、シトロエン・ベルランゴとプジョー・リフターである。2018年に登場したこの2台は基本設計を共有するフレンチMPVで、カングー同様、4ドアボディと2列5人分のシート、そして、広い荷室を持つのが特徴だ。
ベルランゴのボディサイズは、全長×全幅×全高=4405×1855×1840mmと、カングーよりひとまわり大きい。180mmと少し高めの最低地上高が特徴のリフターは、全長×全幅×全高=4405×1850×全高1890mmというサイズ。どちらもパワートレインは1.5L直列4気筒ディーゼルターボと8速オートマチックの組み合わせで、両モデルともに前輪駆動を採用する。
さて、この3台、リアサイドにスライドドアを採用したり、2列シートで5人乗りとしているところなど共通点が多いが、それぞれの個性につながる相違点がたくさん見つかるのも事実だ。たとえばリアゲートもそのひとつ。カングーの場合、2分割式のダブルバックドアを採用するため、片側だけ開閉したり、狭い場所でドアの開け具合を調整することができるのが便利だ。しかし、リアゲートを閉めた状態では中央部に柱が残るので、ドライバーの後方視界の邪魔になるという弱点がある。
その点、ベルランゴとリフターは跳ね上げ式のテールゲートを採用するため後方視界が良好で、しかも、狭い場所でも荷室から荷物の取り出しができるよう、ガラスハッチが設けられているのだ。
荷室については、後席を使用した状態で、カングーの奥行き約90cmに対し、全長に余裕があるベルランゴ/リフターは約10cm長い100cmを確保。幅は約120cmでほぼ同じ。高さはカングーが約110cmだが、ベルランゴとリフターはルーフ後方にシーリングボックスがあるため、低い部分の高さが約100cmにとどまる。ラゲッジトレイの高さを変えて効率的に収納できたり、後席に加えて助手席を倒してスペースを確保できるのは3台に共通だ。
天井部分に棚が多いのも、これら3台の特徴だ。ベルランゴとリフターでは、ガラスルーフとルーフストレージが一体になったモジュトップにより、機能性に加えて、スタイリッシュなデザインを実現したところが実に魅力的だ。一方のカングーは、前席天井に蓋のないオーバーヘッドコンソール、後席天井に蓋付きのオーバーヘッドボックスを設置。ベルランゴとリフターのようなシャレっ気はないが、高さ方向に余裕があるのと、蓋がある安心感がうれしい。