国内試乗

【国内試乗】「メルセデス・ベンツ Eクラス」最新ハイテク装備を満載したニューフェイスが上陸

新型Eクラスが日本に上陸した。シャープでダイナミックなエクステリアデザインを纏い、メルセデスの新世代ステアリングホイールを初装備するほか、進化したMBUXは日本初となるARナビゲ ーションなる新技術を採用。もちろんメルセデス・ベンツ最新の安全運転支援システムも万全だ。

絶対間違いないEクラスの安心感

“Eクラス”と呼ばれるようになったのはW124の途中からなので、現行モデルのW213は「5代目クラス」ということになる。190シリーズが誕生し、そのポジションをCクラスが引き継いで、メルセデスのセダンはラージがSクラス、ミディアムがEクラス、コンパクトがCクラスと、主にボディサイズによる明確な差別化が図られた。ところが、時代を追うごとにクルマのボディは肥大化して、現行Cクラスはいつの間にかW124よりも大きくなり、Cクラスの下にはAクラスセダンが追加された。

スターターとジェネレーターを兼ねるモーターが回生ブレーキで発電した電気をリチウムイオン電池に充電。駆動にも使用する。

もしAクラスセダンをコンパクトとすると、昔のEクラスのサイズになったCで、Sクラスは相変わらず頂点にいるからラージとすれば、Eクラスの居場所がなくなってしまうのである。こうした現象はメルセデスに限ったことではなく、BMW5シリーズやアウディA6も同様で、これまでは“ミディアム”と呼ばれていたセダン(やワゴン)たちが、なんとも中途半端な立ち位置に追いやられてしまっているのが実状である。

前後のライト周りを変更し、ラジエターグリルは下部が広がる台形に。AMGラインのエクステリアが標準装備となった。

そんなEクラスの復権を狙っているのかどうかは定かではないけれど、2016年にデビューしたW213は4年目にして再登場した。エクステリアは主に前後が刷新されていて、ランプ類が天地方向に薄くなっている。おそらくこれは、先月発表されたSクラスとの親和性を考慮したものではないかと推測できる。

インテリアでは最新のMBUXの導入と新しい意匠のステアングの採用がトピックスだ。MBUXは自然対話型音声認識機能を備え、これまでの「目的地設定」など命令語を最初に発する必要がなくなり、例えば「大黒パーングエリアに行きたい」と言えばそれが目的地設定だとMBUX側が認識してくれる。人工知能による学習機能により、使えば使うほどユーザーのクセや習慣を覚えて的確な反応をするようにもなるという。これは、車載コンピュータのみならず、専用の通信端末を使ったクラウドからのデータも併用することで可能になったそうだ。ステアリングは各種スイッチの形状やレイアウトが見直され、人間工学的により使いやすくなっている。以前はいつのまにか触ってしまうことが多かったタッチパッドの誤操作の低減も期待できる。

シャシーやパワートレインなどのハードウエアには手が加えられていないという。試乗車のE200スポーツは直列4気筒のBSG搭載モデルで、184ps/280Nmを発生するが、発進時などではモーターによるアシストがあるので、数値以上にパワフルに感じる。電制ダンパーを装備しないにもかかわらず乗り心地は全般的に悪くない。Cクラスのようにランフラットタイヤの標準化をやめれば、乗り心地はもっとよくなるだろうに。正確で安定志向のハンドリングはまるで木村屋のあんパンのような絶対間違いない安心感がある。総じて従来型から乗り味の大きな変化は見られなかった。

今回の試乗車は、184ps/280Nmを発揮する1.5L直4ターボエンジンとBSGを搭載するE200スポーツ。

自分も含めた“昔の人”からすると、「たった1500㏄の4気筒エンジンを積んだセダンが769万円もするの??」と腰を抜かす勢いの車両本体価格だけれど、そういう時代になったんだと受け入れるしかない。最新のインテリジェントドライブの各種機能はすべて標準装備なのが救いである。

インテリアの見た目は、ステアリング以外に大きく変わらない。ナビにはAR(拡張現実)が採用され、実画像に矢印が上乗せされる。

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2020年12月号より転載

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