国内試乗

同じようで結構違う!? 新型EVのトヨタbZ4Xとスバル・ソルテラを同時に持ち出して比較試乗してみた!

「ひとつの良いクルマをつくろう」を合言葉にトヨタとSUBARUが共同開発。会社の垣根を超え、互いが得意とする技術を持ち寄り開発された新型BEVの公道試乗会が開催された。デザインや仕様装備、走りの味付けは両社の個性を極めた作りがなされているというが、果たしてその出来栄えは?

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トヨタとSUBARUがタッグを組んだ自信作

アウディQ4 e-tron、日産アリア、現代アイオニック5……と、専用車台をもった500万円台前後のBEVが続々投入されている今年、恐らくその流れの中核を成すことになるのが、トヨタとスバルが手掛けたアーキテクチャー「e-TNGA」(スバルは自社称号としてe-SGPと呼んでいる)を持つbZ4X&ソルテラだ。

ソルテラはショックアブソーバーの減衰力やブッシュ特性などBEVならではの低重心や前後重量配分を活かすサスペンションセッティングを採用し、質感の高い乗り心地を実現。

その開発は、社内カンパニー制を敷くトヨタ内で、ゼロエミッションの次世代車両開発を担うZEVファクトリーに、スバルの技術者が出向するかたちで進められた。ちなみに4月に詳細が発表されたレクサスのBEV線用車、RZもこのe-TNGAを採用している。

バッテリー冷却や保護のためのアウターケースを、形状や車体との締結を工夫しながらシャシーの補強メンバーとして活用、加えてハイテン鋼やホットスタンプ材を多用した骨格レベルの剛性向上や、充電機能と電力分配機能を中央的に制御するESUの採用など、e-TNGAは基本構造からゼロスタートで構築されている。

FFは150kW、4WDは80kW×2のモーターを搭載。バッテリーの容量は71.4kWhで、動力性能面で両車の差はないが、一充電走行距離はFFと4WDで異なり、bZ4Xが540/559㎞、ソルテラが567/487~542kmとなる。

その上で強いこだわりを感じるポイントは、モーター、トランスアクスル、インバーターを一体化したeアクスルを中央に配し、左右に伸びるドライブシャフトの等張化を図っていることだ。これは縦置き水平対向のシンメトリカルレイアウトに拘り続けるスバルからの提案で、トルクリッチなBEVの運動性能を司る上で欠かせないものとしてトヨタ側も認識しているという。他にも四駆の駆動制御などはスバルの知見が大きく活かされている。

ちなみにトヨタのbZプロジェクトでは6つのバリエーションが想定されており、このうちbZ4XはミディアムSUVにあたる。ほかにスモールクロスオーバーやラージSUV、ミディアムセダンなどの車型があるが、このうち5車種は昨年、デザインスタディがお披露目されている。e-TNGAはこれらの大半をカバーするモジュールとなっており、モデルによっては今回のスバルとの協業のように、ダイハツ&スズキや中国BYDとの共同開発も予定されている。

ルーフに配置したソーラーパネルで車両のバッテリーを充電できるシステムをbZ4X&ソルテラともにオプション設定。

bZ4X&ソルテラが搭載するバッテリーの容量は71.4kWh。トヨタとパナソニックの合弁会社、プライムプラネットエナジーソリューションズが生産する95枚の大型セルを独立設計した水冷ジャケットと組み合わせ、衝突などの大入力時にも漏水による電池との接触を防ぐほか、クーラントも導電性の低い高抵抗仕様を採用。オレンジ色とすることで他の冷却系との混同を防いでいる。

加えて、高負荷使用や急速充電時、冬期の低温環境など、目まぐるしく変わる温度の管理や電圧の多重チェック、制御プログラムの最適化など、バッテリーを安全に長持ちさせる術はあらかた盛り込まれており、10万km経過時も90%の能力が維持できるという。充電は家庭用200Vが最大7kWh、急速充電には150kWhまでの入力に対応している。

bZ4XとソルテラはFFと4WDが用意されており、FFは150kW、4WDは80kW×2のモーターを搭載する。動力性能面で両車の差はないが、満充電からの航続距離はbZ4Xの場合、WLTCモードでFFが559km、4WDが540km。計測環境や装備差によるものか、ソルテラはそれよりわずかに長い。

終始穏やかなライドフィール

両車ともにクローズドコースでは能力の片鱗をうかがう機会はあったが、公道では初めての試乗だ。まずは地下の駐車場でソルテラを受け取り、ゴーストップの多い街中から速度の変動が大きな渋滞混じりの都市高速へと向かう。

インパネは高さを抑えることで開放感を演出。ソルテラ専用装備のパドルスイッチは、アクセルオフ時の減速度を4段階で変更可能。快適性を追求した新開発シートは、全グレードでフロント&リアともにヒーター機能を標準装備。荷室はフラットな床面と可変式デッキボードなどのアイテムで使い勝手も◎。

と、そういった日常的環境で光るのは速度管理のしやすさだ。アクセル側もさておき、特にブレーキペダルによる減速のコントロール性が非常に高い。

チューニングの難しい回生とメカブレーキの協調などは電動化を先駆けたトヨタのノウハウが活かされたところだろう。両車にはワンペダル的な減速感が得られる回生ブーストモードが備わるほか、ソルテラはパドルで5段階の減速調整も可能など、独自の趣向も組み入れている。

その後に乗ったbZ4Xも然りだが、平時の乗り心地の良さはアイオニック5やアリアなどのライバルに対するこの両車のアドバンテージだろう。凹凸が大きくなると横方向の揺すりがやや強く現れる傾向があるも、上下方向の動きは綺麗に整えられている。今回の試乗車はどちらも20インチの大径タイヤを履く4WDだったが、始終穏やかなライドフィールが印象的だった。

インフォテインメントを集約させた大型マルチメディアシステム、トヨタ初となるメーターをステアリングホイールの上側を通して見えるように配置したトップマウントメーターを採用。BEVならではの低重心、ロングホイールベース、ショートオーバーハングの特長的なパッケージにより、ゆとりのある居住空間を実現。

郊外路や高速道路を中心に乗ったbZ4Xは、クローズドコースで驚かされた駆動マネジメントによる強烈な旋回能力から想像する挙動とは裏腹に、至って素直にラインをトレースしていく。低〜中間域では体にずんと伸し掛かる加速GにBEVらしさも感じるが、高速域での力感は平穏だ。

bZ4Xのデザインテーマは「Hi-Tech and Emotion」。BEVの斬新さとSUVの迫力を表現したスタイリングを纏う。こちらはリース販売となり個人ユーザーはKINTOにて提供。

これまで敢えてわかりやすく押し出されていたBEVの特質は、bZ4Xやソルテラではドライバーが意図しない限り努めて抑えられており、今までのクルマと変わらない感覚で扱えることを重視しようという、その意思が走りの振る舞いから伝わってくる。この辺りの見識に基づいた作り込みは賛否がわかれるところだろうが、個人的にはいたって正論だと思う。

むしろ注文をつけたくなるのは内装の意匠や造作の物足りなさだ。新時代のクルマに乗っているという特別感が薄く、この点では前述のライバルに差をつけられている。今後、bZ4Xについてはステアリング・バイ・ワイヤーのモデルが登場することでその点を埋められるかもしれないが、ソルテラは緻密な駆動制御による悪路での異質なトラクション能力を、BEV+スバルならではのユニークさと受け止めることになるだろうか。

ソルテラは売り切り、bZ4Xはサブスクリプションと販売方法でも方向を違えたこの2台が、日本市場でどのように受け入れられていくかは、今後のBEV普及を占う重要なポイントとなるだろう。

【Specification】トヨタbZ4X Z(4WD)
■全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=2010kg
■バッテリー容量=71.4kWh
■航続距離(WLTC)=540km
■モーター最高出力=F:108ps(80kW) R:108ps(80kW)
■モーター最大トルク=F:169ps(17.2kW) R:169ps(17.2kW)
■トランスミッション=eAxle
■サスペンション(F:R)=ストラット:ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ(F&R)=Vディスク
■タイヤサイズ(F&R)=235/60R18
■車両本体価格(税込)=6,500,000円

【Specification】スバルソルテラET-HS
■全長×全幅×全高=4690×1860×1650mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=2030kg
■バッテリー容量=71.4kWh
■航続距離(WLTC)=487km
■モーター最高出力=F:108ps(80kW) R:108ps(80kW)
■モーター最大トルク=F:169ps(17.2kW) R:169ps(17.2kW)
■トランスミッション=eAxle
■サスペンション(F:R)=ストラット:ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ(F&R)=Vディスク
■タイヤサイズ(F&R)=235/50R20
■車両本体価格(税込)=6,820,000円

トヨタbZ4X公式サイト
スバル・ソルテラ公式サイト

フォト=望月浩彦/H.Mochizuki ルボラン2022年8月号より転載

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