11月8日、京都の仁和寺にて『フェラーリ・プロサングエ』が日本初お披露目された。なんと9月14日のワールドプレミアからわずか2ヵ月弱という早さだ。
イタリア語で”サラブレッド”を意味する車名が与えられたプロサングエは、フェラーリ初の4ドアモデルとなる。リアシートを備えるフェラーリは、1992年の456GT以降、最近まで生産されていたGTC4ルッソに至るまで設定されてきたが、4枚ドアの市販フェラーリはこれが初だ。
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ちなみにこれを”フェラーリ初のSUV”と呼ぶのは、”公式上”では誤り。確かに外観はSUVに見えなくもないが、フェラーリ自身はそれを明確に否定。あくまでこれはフェラーリのスポーツカーであることを強調している。
またエンジンが自然吸気のV型12気筒(6496ccで最高出力は725CV)であることも、事前の予想と異なるものだった。メディア向けのQ&Aでフェラーリ・ジャパンのフェデリコ・パストレッリ代表は、今後の電動化の流れの中で別のパワートレインが搭載される可能性を否定しなかったが、生産ラインはこれまでのV12向けを使用しており、4シーターという成り立ちから考えて、事実上のGTC4ルッソ後継車と言えるだろう。
モデルプロフィールでキーとなるのは、4ドア、4シーター、V12に加えて、4WDであること、そしてアクティブサスペンションの採用だ。これは、コーナーにおけるボディのロール制御や、高周波のバンプを超える際のタイヤ接地圧コントロールに有効とされ、スポーツカーの性能と乗員、特に後部座席の快適性が両立するはずだ。
また着座位置の低さもプロサングエの特徴で、実車で確かめたところ、他のフェラーリに比べれば乗用車ライクだが、SUVのような見下ろす景色ではなかった。またその恩恵なのだろう、ヘッドクリアランスが広い分、バケットタイプであるリアシートの空間が窮屈に感じられなかったのだ。またルーフは採光が変化するタイプで、光によっては開放的なドライブを楽しめるであろう。
パストレッリ代表(下写真)のプレゼンで興味深い説明があった。それは1980年にピニンファリーナが提案した4ドアのコンセプトカー『ピニン』に触れ、当時そういった提案もあったが、”4ドアでフェラーリらしいスポーツカーを作る技術がなかった”というのだ。
逆に言えばプロサングエは、フェラーリのスポーツカーと呼ぶに相応しい4ドアモデルになったという自信の現れでもある。そこに”妥協がない”ことをパストレッリ代表は何度も強調し、”ゲームチェンジャー”でもあるとも自信を見せた。
それにしても、仁和寺でのジャパン・プレミアは凝ったものだった。単純に境内に飾るだけかと思いきや、150~200名は座れそうな観客スタンドを特設し、その前にこれまた特設された舞台を走って観客の目の前に現れるという演出だ。しかも全国各地からフェラーリ・オーナーが集まり、これを数日間続けるのだという。
2025年にフルEVが登場し、2030年時点で約20%がICE、約40%がハイブリッド、約40%がフルEVとなることを目標に掲げているフェラーリ。故セルジオ・マルキオンネが会長を務めていた2015年に株式上場したことで、エンツォ・フェラーリやルカ・ディ・モンテゼーモロのようなカリスマによる独善的な経営から、徐々に脱皮。今や投資家向けのプレゼンで、電動化や会社全体でのサステナビリティを叫ぶという、フェラーリらしからぬ姿も見受けられた。
しかし”らしからぬ”と思うのは、脳裏にカリスマ時代の残像が残っているからで、そういった背景を頭に入れればSUVとは言わずとも、”企業”として4ドアのニーズには応える必要があり、その一方でフェラーリらしく純粋なスポーツカーであることを宿命づけられた、プロサングエの”落としどころ”にも納得がいく。
そして、仁和寺の境内でサイドの上下に絞り込まれた大胆なラインを見ていて、この手のクルマとしては最後発ながら、カリスマなくとも伝統をしっかりと受け継ぐ、フェラーリの強さを改めて感じたのであった。
【SPECIFICATIONS】フェラーリ・プロサングエ
●全長×全幅×全高:4973×2028×1589mm
●トレッド(F/R):1737/1720mm
●ホイールベース:3018mm
●乾燥重量:2033kg
●エンジン形式:65度水冷V型12気筒DOHC
●総排気量:6496cc
●ボア×ストローク:94.0×78.0mm
●圧縮比:13.6:1
●最高出力:725CV/7750r.p.m.
●最大トルク:716Nm/6250r.p.m.
●変速機:8速A/T(DCT)
●タイヤ(F/R):255/35R22/315/30R23
●最高速度:>315km/h
●0→100km/h:3.3秒