いまや3シリーズを超え、昨年はBMWブランドで最も販売されたというX3が、4世代目へとフルモデルチェンジを果たした。新しいデザイン言語によりエクステリアの存在感が大幅に向上するほか、全方位でアップデートが図られていた!
正真正銘のBMWベストセラー
BMWのSUVラインナップにおいて、X3はX1と並び、日本の生活環境にもっともフィットするモデルだ。2004年の初代デビュー以来、親しまれて続けていることは数的にも現れていて、トップセラーの3シリーズに次ぐ2〜3位の座は、この2モデルのいずれかが占めている。ちなみに昨年、BMWのラインナップにおいて一番売れたのもX3で、その数は35万台を超えるという。
そんなX3のフルモデルチェンジが発表されたのは今夏のこと。四代目となるG45型は、今秋以降、日本への導入が始まる予定だ。
アーキテクチャーは前型に引き続きFR系のCLARを採用、4755mmの全長は前型比で34mm、1920mmの全幅は29mm広げられているが、ホイールベースは2685mmと変わらない。シャシー回りではサス形式は前型と同じだがトレッドが23mm拡大。ダンパー&コイルのみならずブッシュやマウント類も変更され、チューニングは全面的に見直されている。
現状発表されているパワートレインのバリエーションは4つ。そのうち3つは48VのMHEVで、2L直4ターボの20、2L直4ディーゼルターボの20d、3L直6ターボのM50となる。そこに加わるのが、2L直4ターボを軸にPHEV化された30eだ。ちなみにこのX3以降、BMWのガソリンエンジングレードは「i」の表記がなくなり、グレード名は数字のみで示されるようになった。
駆動方式は前型と同様、全グレードでxDriveすなわち四駆のみの設定、トランスミッションはお馴染みの8速ATだ。ベースモデルに相当するであろう20の場合でもアウトプットは190ps/310Nm、0→100㎞/h加速は7.8秒と動力性能的には必要充分以上を確保。3L直6ターボのM50に至っては381ps/540Nmのアウトプットをもって0→100㎞/h加速は4.6秒と、マカンターボ辺りに肩を並べるほどのパフォーマンスを誇る。
内外装のデザインはiXやXM以降のBMWのデザイン言語が端々に散りばめられたもので、それらに比べると控えめながらも一筋縄ではないアクは感じられる。が、よりアグレッシブにみえるのは内装の方だろうか。単にイルミネーションだけでなくADASとも連動するインタラクションバーは7シリーズや5シリーズでも展開されているが、X3ではセンターコンソールやシフトノブ回り、ドアノブ周縁なども彩るオーナメントとしての役割を果たしている。
他にもD字シェイプのステアリングやトグル型のシフトセレクターなどの新しいインターフェイス、シートの幾何学的なステッチワークなど、新しいX3の醸し出す雰囲気は基幹車種としてみれば相当挑戦的だ。一方で内装トリムの形状を工夫するなどして荷室容量を20L拡大するなど、地道な実用性向上にも怠りない。
車載OSは最新のOS9を搭載しており、インフォテインメントのOTAアップデートやサードパーティのアプリによる機能追加など、現代的なSDV基準をリードする仕様だ。シートファブリックは標準でペットボトルリサイクル材をベースとしたエコニールを採用、他にも素材置換でレザーフリー化を推し進めるなど今日的な価値観への配慮にも気を配っている。
BMWの屋台骨を支えていくモデル
試乗に用意されたのは20とM50というガソリンエンジンの2グレードだ。ベースモデルに相当する20は、シート表皮に件のエコニールという再生素材を採用しているが、その質感にはカサカサやゴワゴワといった違和感はなく、体の沈み込みをしっとりと抑えてくれる。そのシートの掛け心地自体、角の丸いもっちりした味付けで、思い出すのはiXのそれだ。このところ、デザインや設えにまつわる様々なトライが賛否を呼んでいたBMWだが、X3をみるにその伏線回収というか取捨選択が始まっているのかという思いも抱く。
走り出しから唸らされるのは静粛性の高さだ。この点、4気筒の20もライバルの水準を凌駕しているが、圧倒的なのは6気筒のM50の側で、低速・低回転域ではエンジンの音量や振動のレベルが今までとはまったく異なる。走り始めはBEVと間違えそうなほどにエンジンの存在が希薄だ。その良し悪しは個々の好みによるところだろうが、Dセグメント級でこの洗練度はともあれ刮目させられる。
サスペンションは路面の凹凸の大きさによっては硬さを感じる場面もあるかもしれない。特に電子制御可変ダンパーを持たない20の側ではその傾向が強かった。が、常識的な速度域では減衰がしっかり立ち上がり、突き上げにも刺々しさは感じられない。そしてコーナーではロール量こそ控えめながら姿勢変化はきちんと感じさせつつ、アンジュレーションにもしっかり追従する動きの柔軟性を備えている。
エンジンは20でも充分以上の速さがもたらされているし、回転上昇に乗じたパワーの伸びもしっかり感じられる。が、M50の側は400psの大台を超える高出力化の一方で、回転フィールが以前よりややもっさりした点が気になった。ユーロ6もフェイズがより厳しいものへと移行する中で、BMWも内燃機のフィーリング作りには一筋縄でいかない点もあるのだろう。ただし今回の試乗会では、ユーロ7対応に対する前向きな姿勢をエグゼクティブから聴くことも出来た。2025年以降に登場予定のノイエクラッセXがiX3相当として当面このセグメントでBEV版SUVのニーズをカバーする中、この世代のX3は内燃機主体の従来的ポジションを維持しながらBMWの屋台骨を支えていくことになる。
【SPECIFICATION】BMW X3 20 xDrive
■全長×全幅×全高=4755×1920×1660mm
■ホイールベース=2865mm
■トレッド=前:1636、後:1681mm
■車両重量=1855kg
■エンジン形式/種類=—/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行程=82.0×94.6mm
■圧縮比=11.6
■総排気量=1998cc
■最高出力=190ps(140kW)/4400-6500rpm
■最大トルク=310Nm(31.6㎏-m)/1500-4000rpm
■燃料タンク容量=65L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:5リンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/60R18
【SPECIFICATION】BMW X3 M50 xDrive
■全長×全幅×全高=4755×1920×1660mm
■ホイールベース=2865mm
■トレッド=前:1622、後:1623mm
■車両重量=1980kg
■エンジン形式/種類=—/直6DOHC24V+ターボ
■内径×行程=82.0×94.6mm
■圧縮比=11
■総排気量=2998cc
■最高出力=381ps(280kW)/5200-6250rpm
■最大トルク=540Nm(55.0㎏-m)/5200-6250rpm
■燃料タンク容量=65L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:5リンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:255/45R20、後:285/40R20
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437