【国内試乗】妥協なき、走ることが好きな人への解答「レクサス・LBX モリゾウRR」

公道と富士スピードウェイのショートサーキットでLBX MORIZO RR を試乗。プロトタイプ試乗から期待を抱かせる完成度であったが、市販車は走りの楽しさが「これでもか!」と凝縮された、最高にファンな1台に仕上がっている。

走ることを楽しみ続けたい。そんな大人へ贈る一台

レクサス版GRヤリスといえるLBXのプレミアムホットハッチ「MORIZO RR」（モリゾウ・アールアール）を、遂に一般公道で試乗することができた。

モリゾウことマスタードライバー豊田章男氏と共に、レーシングドライバーの佐々木雅弘選手が開発に参画。

MORIZO RRの核となるのはGRヤリス譲りのパワーユニットとAWDの組み合わせだが、走り始めて心を奪われたのは、そのしっとりとした乗り味だった。

トライ&エラーを繰り返し作り上げられたクルマこそ「MORIZO RR」。

まず最初に試したのは、レクサスとしてはスパルタンな印象の6速MTモデル。1速ゲートにシフトを送り込むだけでわかる短いストロークと、剛直なタッチ。GRヤリスよりは軽めなクラッチを丁寧につないで行くと小さなボディは軽やかに走り始めたが、シフトアップすれば再び“ゴクッ!”と、重みが左手に伝わってくる。

8速ATだけでなく6速MTも用意されるが、MTは想定よりも受注数が多いとのこと。ドライバーオリエンテッドなコクピットで、ステアリングを握るだけで、このクルマを操る楽しさが染み出してくる。

こうしたスパルタンな操作フィールに反して足周りは、実にしなやかに動いている。235/45R19サイズのコンチネンタル・スポーツコンタクト7は路面からの入力をダイレクトに受け止め、時折ボディを小刻みに揺らしているけれど、タイヤとボディの狭間で動くサスペンションは、操舵に対してとても素直に追従するのだ。

ちなみにそのモノコックは標準仕様に対して469箇所もスポット溶接が追加されており、構造用接着剤の塗布面積も12.8m延長されている。さらにはバルクヘッド周りやラジエターサポート部、床下、リア開口部の剛性が引き上げられた末に、リア・パフォーマンスダンパーでねじれを減衰させている。こうしたボディがあるからこそ、スポーティな足周りでもレクサスらしい乗り味が得られるのだ。仮にタイヤの剛性をもう少しだけ落としたら、毎日の足としても十分に使える乗り心地である。

そしてブレーキも、かなりいい。ペダルタッチがソリッドだから制動力だけでなく、荷重や姿勢のコントロールがしやすい。

前席はホールド感が高く、スポーツ走行時でもしっかりと体をサポートしてくれるので、サーキット走行でも安心して身を預けることができる。シート表皮はセミアニリン本革とスムース本革のコンビ。

こうしたシャシーに対して、1.6L直列3気筒ターボのパワー&レスポンスも抜群だ。3気筒エンジンの質感は評価の分かれる所だが、筆者は肯定派。低速域こそゴロゴロとした回転フィールの荒さはあるものの、過給圧の上昇と共にその音色や振動は整って行く。むしろ情緒的な話よりも強烈な吹け上がりにクイックシフトを追従させることの方が大変で（ダウン側はiMTモードがブリッパーで回転を合わせてくれる）、操作に集中して運転を研ぎ澄ませて行くことにひたすら没頭した。

そして、こうした走りの楽しさは、クローズドコースでさらに拡張される。スマホにインストールした専用アプリをサーキットで起動させると速度リミッター上限を引き上げられるだけでなく、アンチラグ機能とシフトタイミングインジケーターが使えるようになるのだ。富士スピードウェイのショートコースでこれらを試したが、特にアップダウンの激しいコースだとアンチラグの効果はテキメンだった。アクセルオフからの再加速で、ピックアップがまるで違う。制御は3段階あるが、もっと強く効かせてもよいと感じたくらいだ。

またインジケーターは変速スピードが早い8速ATとのマッチングが良く、これがただフールプルーフに走るためだけのATではないことを強く実感した。となるとMTとATどちらを選ぶべきかだが、その上質なシャシーと高出力なエンジンを毎日の生活のなかで心地良く味わいたいなら、8速ATのマネージメントが大きな手助けとなるだろう。対して6速MTは、酸いも甘いもかみ分けた経験豊富なドライバーが、ときに真剣にドライビングに向き合う本気を正面から受け止めてくれる。

GPSによる位置測位が備わり、サーキットに入ると、全国のサーキット特性に合わせて再加速時のアクセルレスポンスを向上させたりなどの設定変更が可能。操作は全てスマートフォンで行なう。

GRヤリスだと“ガチ”過ぎるけれど、走ることは楽しみ続けたい。そんな大人のドライバーにとってLBX MORIZO RRは、待望の一台だと言えそうだ。

徹底した走り込みにより作られた1.6L直列3気筒ターボを搭載。特有の音や振動を感じさせることはなく、3気筒エンジンとは思えないパワー&レスポンスを発揮する。

「Direct Shift-8AT」は、リズミカルでテンポの良いシフトアップにより、スポーツドライビングの楽しさを引き出してくれる。

【Specification】レクサス・LBX MORIZO RR“ Bespoke Build” 8AT（AWD）
■車両本体価格（税込）＝7,200,000円
■全長×全幅×全高＝4190×1840×1535mm
■ホイールベース＝2580mm
■トレッド＝前：1580、後：1585mm
■車両重量＝1480kg［1450kg］
■エンジン型式/種類＝G16E-GTS/直3DOHC12V+ターボ
■内径×行程＝87.5×89.7mm
■総排気量＝1618cc
■最高出力＝304ps（224kW）/6500rpm
■最大トルク＝400Nm（40.8kg-m）/3250-6500rpm
■燃料タンク容量＝50L（プレミアム）
■燃費（WLTC）＝10.7km/L
■トランスミッション形式＝8速AT［6速MT］
■サスペンション形式＝前：マクファーソンストラット/コイル、後：Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ＝前：Vディスク、後：ディスク
■タイヤ（ホイール）＝前後：235/45R19