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BMWの新たなBEV戦略を担う渾身作! “ノイエクラッセ”「ヴィジョン・ドライビング・エクスペリエンス」

ヴィジョンドライビングエクスペリエンス

BMWの次世代BEVモデルとなる「ヴィジョン・ドライビング・エクスペリエンス」のプロトタイプに北米で同乗する機会を得た。エレクトリックM3とも称される電動サルーンは、どんな新たなドライビングワールドを披露したのか?

新たなドライビング感覚を提供するEVスポーツ!

「ノイエ・クラッセ(英語ではニュー・クラス)」とは、本来は1960年代にBMWが送り出した新しいミドルクラスである。当時コンパクトカーの700シリーズとアッパークラスの501と502の間を埋めるべく新たに開発された4ドアサルーンであった。
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タイプ115と呼ばれたニューモデルはイタリアのデザイナー、ミケロッティによるグラスエリアの広い斬新なデザインと、SOHC4気筒エンジンなど様々な新技術を搭載して文字通りBMWを新しい時代へ成功裏に導いた。

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フルカモフラージュされたエクステリアは、今回全体像をお伝えすることはできないが、その強烈な動力性能とコントロール性は助手席からでもしっかりと確認することができた。

そしてこの歴史を背負って2023年のミュンヘン・オートショー(IAA)で新しい電気自動車時代へのシンボルとして新たに登場したのが「ビジョン・ノイエ・クラッセ」である。BMWの開発チームは2025年暮れの発表に向けて現在、フルスピードで開発作業を行なっているが、今回その最新のプロトタイプに同乗することが許された。

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フロントには、BMWのアイコンであるキドニーグリルを踏襲しつつも、斜めに傾斜したスタイリッシュなヘッドライトを採用。

BMWの北米開発センターに隣接するプルービンググランドで我々を待っていたのは厳重なカモフラージュをまとったプロトタイプだが、その新しいグリル、シルエット及びグラスエリアの広いキャビンを持ったデザインは、2年前にミュンヘンで公開されたノイエ・クラッセ・セダンである。しかしテスト車はフルカーボンモノコックで、4座のレーシングバケットシートが並ぶ車内にはロールケージが張り巡らされている。ちなみにタイヤは325/30ZR21サイズのミシュラン・カップ2スポーツが装着されている。ステアリングを握るのはBMWの契約レーシングドライバーであるイェンツ・クリングマン。4点式シートベルトを締め上げてスタートする。

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テールエンド上端に配置されたリアコンビネーションランプも独特のデザインだ。

搭載されている電気モーターは4基で、すべての車輪を駆動する。パフォーマンスに関しては正確な数字は発表されていないが、システム出力はおそらく800kW(1088㎰)、最大トルクは1500~2000Nmと予想されている。エレクトリックM3とも噂されているプロトタイプの加速はこれまで試乗した1000㎰を超える重量級のEVスポーツカーとは異なり、身体とボディの一体感が強く、まるで瞬間移動の感覚である。やがてスキッドパッドへ到着するとドライバーはコンフォートとドリフトのふたつのドライブモードからドリフトを選び、ドライブペダルを踏み込むとまるでラリーカーが氷上で行なうような4輪ドリフトが始まった。

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ホイールは車両の動きに呼応して、加速時は緑、通常のブレーキング時はオレンジ、回生ブレーキング時には青色に変化する。

そして再びコースへ戻ったのだが、そのドライブはプロドライバーの腕によるもの以上に、まったくストレスなく感じられた。この一連の動きを制御するのは新たに搭載された「ハート・オブ・ジョイ」と呼ばれるコンピューターで、基本的にはドライブトレインとドライビングダイナミクスをひとつのユニットに収め駆動と減速、ステアリング&シャシーシステムなどを制御する。簡単に言えばアジャイルでありながらエフィシェントを約束するわけだ。

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シンプルなレイアウトのコクピットはステアリングもスクエアな形状に。コンソール部には各スイッチ類も備わっている。

さらに3基のECUにはインフォテイメントや高度運転支援システム、自動運転などすべてのスレッドが集まり、従来よりも高速度で相互コミュニケーションを正確なものにすると言われる。一方搭載されている電気駆動システムは最新の6世代目で、エレクトリックアーキテクチャーは800V、10分の充電で約300kmの航続距離を可能にする。
今年の暮れと予想されているヴィジョン・ドライビング・エクスペリエンスの発表はエミッションとドライビングダイナミクスを両立した「エフィシエント・ダイナミクス・テクノロジー」に勝るとも劣らない技術でEVの新世界を見せてくれるに違いない。

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