
シャープな造形を纏った新たなファストバックSUV
プジョーのミドルクラスSUVである「3008」がフルモデルチェンジ。電動化時代を見据えた新規開発のプラットフォームと、ハイブリッドシステムの実力のほどは? かつて「106」に乗っていた筆者が新型3008の公道試乗を通して、電動化の中に見えた”プジョーらしさ”に迫る。
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マイルドハイブリッドでもプジョーらしさは健在
世界で累計132万台以上を販売したプジョーの中核モデル3008が、8年ぶりにフルモデルチェンジを果たし、ついに日本国内へも上陸した。同車最大のトピックは、ステランティスが共同開発した新規プラットフォーム「STLA-Medium(ステラミディアム)」を採用する初のモデルであるということだ。
同プラットフォームはCおよびDセグメント用の電動車用プラットフォームで、電動向けとうたいつつも、その設計自由度の高さでハイブリッドパワートレインにも対応する懐の深さを持つ。今回試乗したモデルも先行して日本に導入されるマイルドハイブリッド仕様「3008 GT ハイブリッド」となる。ちなみにフル電動モデルである「E-3008」は年内に発売を予定している。
早速クルマの方を見ていこう。エクステリアは近年のプジョーらしいシャープでソリッドな造形だ。先代3008はコンサバティブな形のSUVだったが、新型ではクーペスタイルを取り入れ、よりスタイリッシュさに磨きをかけている。プジョーでは初となるサイドウィンドウモールが表に見えないようなデザインを採用するなど、細部に至るまで徹底したこだわりを感じる仕上げだ。
元106乗りの筆者からすれば、随分立派になって……というのが正直なところだが、同郷のライバルとして比較対象に上がりがちなルノーや、同門のシトロエンと比較しても、しっかりとキャラ立ちがなされており、悪い感じはしない。
インテリアも白眉だ。コクピットは水平基調のダッシュボードからセンターコンソールにかけて斜めに大きく切れ込むような造形を採用。ともすれば奇抜とも捉えられかねない斬新なデザインだが、マテリアルにファブリック地やシルバーパーツを効果的に配することでモダンにまとめているのは、プジョーデザインの面目躍如だ。
さらに新開発となる「PEUGEOT Panoramic i-Cockpit(プジョー パノラミック アイコックピット)」を搭載。ドライバーに向けて緩やかにカーブした21インチのパノラミックスクリーンとi-Cockpitは、近未来的な印象を与えるだけでなく、運転中の視認性も良好だ。
システム面も進化している。「OK、プジョー」で起動する音声コントールや、シートには電動で細かく設定できるランバーサポートやマッサージ機能も標準で装備されており、ワンランク上の充実感を味わえるだろう。
“マイルド”ハイブリッドだが電動感は高め
早速ステアリングを握って公道へと繰り出す。パワートレインは1.2Lの直3ターボエンジンに48Vのモーターを組み合わせる“マイルド”ハイブリッドだが、そのフィーリングはかなり電動寄りと感じた。低速域ではほぼモーターで発進し、非常に静か。速度を増していくとエンジンがかかるのはハイブリッド車の作法通りだが、車重が1.6トンもあるとは思えないほど、リニアでスムーズだ。トランスミッションは多段化がトレンドの昨今において、オーソドックスな6速DCTを採用しているのだが、モーターのアシストが変速ショックの低減に貢献しており、電動車らしいジェントルな走りに繋がっている。
走行モードには「エコ」「ノーマル」「スポーツ」の3種類が用意されているが、普段使いであればノーマルでも十分と感じた。ちなみにカタログ上の燃費は19.4km/L(WLTC)となっている。実はこの試乗会の後、スタッフに実燃費を聞いてみたところ、1000km走行して16.7km/Lという回答が返ってきた。この車格と車重を考えれば十分と言える燃費だろう。
ただ少し違和感を覚えたのは走行中のハイブリッドの制御だ。少しでも燃費を稼ごうとしているのか、アクセルオフ時にエンジンとタイヤを切り離してコースティングしたり、逆に回生ブレーキを積極的に使用したり、一般的なエンジン車とは微妙に挙動が異なる。最終的には慣れの問題なのかもしれないが、この短時間の試乗では、そのロジックを掴むのに少し手間取ってしまった。
とはいえ、走り自体はプジョーらしいスポーティネスも感じられた。一時期の「猫足」に比べれば、プジョーもだいぶしっかりとした足回りになったと感じつつも、コーナリングでは多少のロールを許容する柔軟性を発揮。カーブの手前でしっかりと減速して姿勢を作ってあげれば、小径ステアリングに合わせてスッスッと軽やかに鼻先を変えていく様は、まさにプジョーの乗り味。この車格からは予想していなかった手の内感に、かつて106に乗っていた筆者も「これは楽しいぞ」と、思わず笑みがこぼれた。
ひと昔前はほぼ国産しか選択肢のなかったハイブリッド車だが、世界的な電動化政策の減速もあり、バランスのとれたハイブリッドが再評価されつつある。この新型3008も例にもれず、欧州車らしい走りと環境性能を両立した1台として、次の選択肢の候補に入れることができそうだ。
【Specification】プジョー3008 GT ハイブリッド
■車両本体価格(税込)=5,400,000円
■全長x全幅x全高=4565x1895x1665mm
■ホイールベース=2730mm
■トレッド=前:1615mm、後:1615mm
■車両重量=1620kg
■エンジン種類=直3DOHC12V+ターボ
■内径×行程=75.0×90.5mm
■総排気量=1199cc
■最高出力=136ps(100kW)/5500rpm
■最大トルク=230Nm(23.5kg-m)/1750rpm
■モーター種類=交流同期電動機
■モーター最高出力=21.7ps(16kW)/4264rpm
■モーター最大トルク=51Nm(5.2kg-m)/750-2499rpm
■燃料タンク容量=55L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=19.4km/L
■トランスミッション形式=6速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ=前後:225/55R19