知的なスポーツドライビングを楽しめる 試乗会はサーキットが2セクション、一般道が1セクションに分かれていて、さまざまなステージでパサートGTEの特徴を試すことができた。走行モードはエンジンを使わない「Eモード」、エンジンとモーターを併用、パワフルな走りを楽しめる「GTEモード」、状況に応じエコ目線でエンジンとモーターを使い分ける「ハイブリッドモード」があるのだが、普通に走るぶんにはハイブリッドモードがベストだ。まずはモーターだけで発進、ある程度速度が乗ってからエンジンが目覚めるあたりは一般的なハイブリッドカーやゴルフGTEと同じなのだが、上級車としてより騒音/振動対策がしっかりしているからか、ずいぶん静かでスムーズな印象を受ける。ガソリン版パサートに比べると、変速時のショックやゼロスタートの際に感じるアクセルレスポンスの鈍さを、モーターが伝達トルクを制御することによって上手く打ち消しているようで、トランスミッションは同じDCTなのにギクシャクする感覚が大幅に低減。+260kgという車重のせいもあって乗り味もしっとりしている。価格的にはメルセデスCクラスやアウディA4などのプレミアムクラスがライバルになってくるだろうが、それらにも負けぬ乗り味を持っているといえそうだ。 サーキットではフル加速や高速走行を体験。速さを求めるならやはりGTEモードだ。シフトノブ脇にあるスイッチを押してからアクセルを床まで踏み込むと、「キュキュッキュッ!」と前輪を鳴らしてフル加速していくほどのやんちゃっぷりをみせる。エンジンサウンドもスポーティに切り替わるのだが、そこに「ヒュイーン」というモーター音が加わるからなんとも懐古的かつ未来的な、不思議なハーモニーである。加速自体も力強い。0-100km/h加速タイムは7.4秒だから、BMW 320dやメルセデスC220dなど、動力性能に定評のあるクリーンディーゼルなどとほぼ同等。しかもエンジンを使わないEモードでも130km/hまでモーターだけ、無音のまま行けてしまうのだ。ひと口に「加速」といってもさまざまな表情をみせてくれるのがGTEというクルマなのである。 ウィークデイはゼロエミッションで ハンドリングはリアにバッテリーを積んだことによって前後重量配分が改善、ガソリンモデルに比べて動きがより自然で素直になっているし、コーナーに侵入する際にスッとアクセルを抜くと回生ブレーキが強くかかるから荷重移動が瞬間的に起こるなど、ダイレクト感もずっと濃い。右足を踏み込んだ時のアクセルレスポンスも上々だ。だから決して刺激的という感じではないのだが、知的なスポーツドライビングを楽しめるのだ。 チャージは普通充電のみで、満充電までにかかる時間はおよそ4時間。これで最大51.7kmまでをEV走行することができるから、日常的に使っているぶんには帰ったら充電、帰ったら充電……を繰り返していれば、ガソリンを使わずほぼ電気だけで行けてしまう可能性は高い。しかもFRベースのPHVにはないステーションワゴンが用意されるのは大きなアドバンテージだ。 そんなことを考えていたら、このクルマを使うイメージがぼんやりと浮かんできた。家族で一戸建てに暮らしていて、経済的に余裕はあるけれど近所や会社の目もあるから、あまりわかりやすい高級車には乗れない。あえてそっちに行かない自分も好き。でも、ちゃんといいモノは欲しい。普段は旦那さんが通勤に使ったり、奥さんが買い物や子供の送り迎えに使ったり。週末は家族でドライブに行ったり、旦那さんがひとり運転を楽しんだり。クルマ好きの友人と話をする時にも「いま何に乗ってるの?」「パサートGTE」「へぇー(賢)!」となること間違いなし。なんか、あこがれちゃうなぁ。 フォルクスワーゲン・パサートGTEヴァリアント 東京標準現金価格 ¥5,399,000 全長/全幅/全高 4775/1830/1510㎜ ホイールベース 2790㎜ 車両重量 1770㎏ エンジン型式/種類 CUK/直4DOHC16V+ターボ エンジン総排気量 1394㏄ エンジン最高出力 156ps(115kW)/5000-6000rpm エンジン最大トルク 250Nm(25.5㎏-m)/1500-3500rpm モーター型式/種類 EAJ モーター最高出力 116ps(85kW)/-rpm モーター最大トルク 330Nm(33.6㎏-m)/-rpm トランスミッション 7速DCT バッテリー種類:リチウムイオン 燃費(JC08) 21.4㎞/L サスペンション形式 前:ストラット/コイル 後:4リンク/コイル ブレーキ:前 ベンチレーテッドディスク 後:ディスク タイヤ 215/55R17 問い合わせ先 フォルクスワーゲン グループ ジャパン http://www.volkswagen.co.jp Report : Naohide ICHIHARA (Editor in Chief) Photo:VOLKSWAGEN GROUP JAPAN 全文を読む ≫ 次ページ : ステーションワゴンがアドバンテージ 12