3.0リッターV6を置き換えるのか、それとも?
8月14日に日産が概要を公表したVC-Tエンジンは、北京モーターショーでワールドプレミアとなった「インフィニティQXスポーツインスピレーション」の生産モデルと予想されるインフィニティQX60が最初の搭載車に選ばれる模様だ。
QXスポーツインスピレーションは、日産の高級車ブランド、インフィニティの次世代ミドルサイズ・プレミアムSUVにおけるデザインの方向性を示唆するモデルという位置づけ。次期QX60と予想されており、だとすれば日本ではスカイライン・クロスオーバーとして導入されることになる。このモデルの概要については過去記事「これが次期スカイライン・クロスオーバー!? インフィニティの新SUVコンセプトが堂々公開」をご参照いただきたい。
スカイライン系では先頃、インフィニティQ60(日本ではスカイライン・クーペ)の生産が開始されたばかりだが、その新型クーペには304ps(224kW)と405ps(298kW)の2スペックの3.0リッターV6ガソリンツインターボエンジンと、2.0リッター4気筒のガソリンターボエンジンをラインナップするとされている。従って次期QX60も同様の布陣になると考えるのが自然だったのだが、VC-Tエンジンが用意されているとなると話は変わってきそうだ。
まず考えられるのは、高出力と低燃費を両立するVC-Tエンジンの特徴を最大限にアピールすべく、V6エンジンをすべてVC-Tに置き換える戦略だ。その場合、従来型の2.0リッター4気筒エンジンは、廉価な導入グレード用として残される可能性が高そうだ。そしてもうひとつが、V6エンジンは高出力版のみをイメージリーダーにハイエンドグレード用として残し、V6の低出力版と直4をVC-Tで置き換えるというもの。これだとモデル全体の価格レンジが上がってしまうだろうが、QX60を上級移行させる意図が日産にあるならばあり得る。そして最後に、V6の低出力版だけをVC-Tに置き換えるというもの。次期Q60がエンジンを3タイプ用意していることを鑑みれば、その数を変えないこのパターンがもっとも現実的かもしれない。
いずれにしても、次期QX60がVC-T初搭載モデルなら、その後、Q60(あるいはセダン版のQ50も含め)にもVC-Tが投入されるはず。エンジン開発の進捗状況からQX60が先行することになったのかもしれないが、あえてVC-Tの完成を待たずに次期Q60を進めたのだとしたら、日産はプレミアムミドルクラスではセダン/クーペよりもSUVに勝機を見い出しているともとれる。果たしてその通りの販売実績となるのか。そして価格も含めてVC-Tがどれだけ受け入れられるのか。9月のパリ・モーターショーと、次期QX60の動向に注目していきたい。