配線の簡略化でボディも軽く
メルセデス・ベンツ次期Sクラスが新たに搭載する直列6気筒エンジンの概要は先にお伝えした通りだが、これ組み合わされるISG(統合型スターター・オルタネーター)は、48V電装を採用したことで実現できたシステムといっていい。電気モーターが発生する出力は電圧の2乗に比例して大きくなり、48Vでは12Vの16倍。12Vでは非力でも、48Vなら十分な力を発生することができるためだ。
ISGはエンジンとトランスミッションの間に設置されている。それ自体の構造は電気モーターであり、エンジン側にトルクを流せばエンジンスターターとなり、トランスミッション側にトルクを流せば駆動力が増強される。また、スロットルオフなどによる駆動輪側からの入力で強制的に回転させれば、発電機として機能することになる。
電気モーターで駆動力をアシストする点だけをみれば、これはまさにハイブリッドパワートレインであり、その動作はホンダが採用しているIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)システムとほぼ同じと考えてよさそうだ。ただし本格的なハイブリッドであるIMAシステムは相応の大容量バッテリーを搭載していることもあってさらに電圧は高く、これまで100Vや144V、150Vなどの仕様が市販化されている。
また、電流量が一定なら、電装機器に供給される電力は電圧に比例する。つまり同じ電装機器、たとえばエアコンやクルマを制御する電装品などを動かすために必要な電流量は、電源が48Vなら12Vの4分の1で済むことになり、その分だけ配線を細く軽くして車重を減らせる利点もある。
ダイムラーによれば、ISGの出力は14ps(10kW)から20ps(15kW)で、その駆動力によって燃料消費を削減。また、制動時は80%以上のエネルギーを回生することができ、それによっても省燃費化が可能になるため、トータルでCO2排出量を7〜12g/km削減できるという。