圧縮着火ガソリンエンジンを「スカイアクティブX」の名で実用化
トヨタとの資本提携を発表したばかりのマツダが、続けて新たな技術開発の長期ビジョンを発表した。その目玉はディーゼルエンジンのように高圧縮によって自己着火するガソリンエンジン「スカイアクティブX」。すでにHCCI(予混合圧縮着火)として研究段階でその高いポテンシャルは証明されてきたが、全域でのスムーズな制御が難しく、実用化は難しいというのが定説だった。
マツダはそのHCCIを基本に、現行ガソリンエンジンで使われる点火プラグを生かし、圧縮着火と火花着火を組み合わせることで細かい制御を実現。HCCIに対して「SPCCI(火花点火制御圧縮着火)」と名付け、圧縮着火による熱効率の高さに加え、スパークプラグをコントロール要素として使うことで、全域でのスムーズな燃焼を可能としている。大まかには中回転域以下は圧縮着火、高回転域はプラグ着火をメインとし、それぞれの得意領域をシームレスに移行させることで実用化を図っている。
このSPCCIでは空気が30に対して燃料1という超希薄燃焼も可能となり、単純に計算して現在の希薄燃焼エンジンの半分の燃料で同じ出力を得られる可能性もあるという。ちなみに超希薄燃焼は燃焼温度を抑えることで熱損失を減らすのに加え、窒素酸化物(NOx)の発生を抑えられるメリットもある。「スカイアクティブX」は超希薄燃焼による燃費向上だけでなく、ドライバビリティも大きく向上させている。トルクの立ち上がりが鋭くなり、40㎞/hからの加速感は2リッターのロードスター(日本ではRF)とほぼ同等。スロットルバルブの抵抗が少なくなり、初期レスポンスのよさも確保されるという。
コストなどに関してはまだ語られず、技術発表を随時行なっていく考えだが、世界的に電動化が進むなか、あえて内燃機関にこだわるマツダの姿勢はかえって潔く見える。マツダも電動化によるCO2や有害物質の排出削減を否定していないが、一方でまだまだ内燃機関を進化させることは可能と考えており、’30年までにCO2排出量を企業平均で50%削減、’16年までに90%削減という目標も視野に入れている。まずは’19年に予定されているスカイアクティブX搭載車の市販を楽しみに待つとしよう。