国道243号・美幌峠(No.007)
外輪山の縁に立ち、巨大なカルデラ湖を眼下にする。
北海道を旅していると、どうにも読めない地名と遭遇することがある。大楽毛(おたのしけ)、馬主来(ぱしくる)、美利河(ぴりか)、晩生内(おそきない)などなど。これらはみな、明治時代の役人がアイヌの人々から聞いた土地の名をそのまま漢字に書き記していった名残である。
屈斜路湖もそのひとつで、「クッ(喉)チャロ(口)」とはアイヌの言葉で「湖が川となって流れ出す土地」を意味するという。
もともと屈斜路湖は活発な火山活動によって誕生した湖である。湖の中央にぽっかりと浮かぶ中島はかつての中央火口、周囲を取り囲む山々はカルデラの外輪山である。和琴半島も外輪山の近くで噴火を起こした小さな火山の跡で、それが長い年月を経て砂嘴でつながり、半島となっていったのだ。こうした成り立ちを知れば、和琴温泉をはじめ、仁伏(にぶし)、コタン、池の湯、砂湯、川湯といった温泉群が湖畔に数多く湧き出していることも「なるほど!」と納得するはずだ。
標高525mの美幌峠から屈斜路湖を眼下にし、その全体像を眺めてみると、この湖がカルデラ内に降り注いだ雨水の溜まったものだということがよくわかる。東西29km、南北20kmの外輪山は、阿蘇のカルデラより一回り大きく、周囲57kmにおよぶ屈斜路湖はカルデラ湖としては世界第2位のサイズ。なんともスケールの大きな〝水たまり〟なのである。