さらなる静粛性が求められる時代
タイヤメーカーの東洋ゴム工業(トーヨータイヤ)は、ハイブリッドカーなどの普及で動力源が内燃エンジンからモーター駆動等へ移行することで、クルマの室内環境にはより上質な快適性が追求されると分析。そこで、タイヤからクルマの室内に伝わるノイズの課題を解決する新技術『Toyo Silent Technology(トーヨーサイレントテクノロジー)』に基づき、車内騒音のひとつである「タイヤ空洞共鳴音」を効果的に低減するデバイスを新開発した。
タイヤは内部を空気で満たされた構造物であることから、走行中に路面との接触で発生するタイヤへの入力が内部の空気に振動を起こし、その振動が車軸を介してクルマの室内に音(ノイズ)として伝わる。これは、「タイヤ空洞共鳴音」と呼ばれる車内騒音のひとつ。例えば、高速道路を走行中、道路の継ぎ目を通過する際に発する「パカーン」という音がそれ。トーヨータイヤでは、そうしたノイズ発生の原因となるタイヤ内部の空気をシミュレーションで可視化して、充填された空気自体がタイヤ内部で「周方向への流れ」と「垂直方向への流れ」を発していることを突き止め、タイヤ内部に発生する「空気の流れを活用して」ノイズの低減を図るという独自アプローチに取り組んでいる。
もともと音は通過する穴の壁面で摩擦が生じ、その後に渦が発生する「ふたつの減衰メカニズム」によって低減する。この穴を通過する際の空気の流れを活用するべく、トーヨータイヤでは多孔フィルムを「山なり形状」のデバイスとして装着し、「発生する音が穴を通る構造」を独自に考案。また、「山なり形状」を保持するべく円筒状スポンジを周上に16 基配置することで、スポンジの中空構造が持つ減衰効果と多孔フィルムとの相乗効果で、さらなるノイズの低減効果を実現したとのこと。
タイヤ空洞共鳴音の200Hzから250Hzという低周波数帯域ノイズをターゲットに、同社製タイヤにこのデバイスを装着した実車試験を計測した結果、装着車のタイヤ空洞共鳴音は未装着での走行時に比べ、同帯域において最大マイナス12dB という顕著な低減効果が得られたとのこと。この結果をもとにして同社では、デバイス搭載タイヤの製品化と市場展開を検討していく予定だ。
東洋ゴム工業 http://toyotires.jp/