コラム

魅惑のBMWレジェンドたち【2002 TURBO】はM2クーペのルーツ!?

第1期ターボ時代を駆けぬけたまさにレジェンド

フロントスポイラーに入る「2002 turbo」のミラーレターロゴは、先行車のドライバーがミラー越しに見ることを踏まえた挑発的メッセージ。事実アウトバーンではポルシェ911でさえレーンを譲ったとされている。

ビー・エム・ダブリュー 2002 ターボ(1973-1974)

かつて放映されていたBMW2シリーズ・クーペのテレビCFで、M235iを2002が追走するシーン。時代を超えてBMWのコンパクトスポーツが共演する、というところまで理解してもらえばいいのかもしれない。だが、本来のメーセージはもっと奥深い。
2シリーズ・クーペは、従来の1シリーズから2ドア・クーペとカブリオレを独立させて誕生した新たなモデル系列であった。実は、2002も同様である。1962年、ノイエクラッセを掲げたBMW1500が発表された。ノイエクラッセを直訳すればニュークラスであり、スポーツセダンというBMWの新たな価値を創造するモデルだった。さらに、バリエーションの拡大が図られ、BMW1600から派生した2ドアモデルとして1966年に1600-2を投入。それをBMW1500から始まったモデル系列から独立させて1602(02シリーズ)が誕生。その頂点に位置づけられるのが1968年に投入された2002なのである。

こうした背景もあり、2シリーズ・クーペは02シリーズをオマージュとしている。リアまわりのデザインでもライン構成に02シリーズをモチーフにしているところを垣間見ることができる。

さて、今回紹介する2002ターボは02シリーズでは別格ともいえるモデルであり、まさにBMWのレジェンドだ。いや、BMWのというよりもクルマ界のレジェンドといってもいい。BMWは、’60年代の末から02シリーズをベースにしたレーシングマシンのエンジンにターボチャージャーを組み合わせて参戦していた。その、市販モデルが2002ターボなのだ。同時にそれは、量産モデルでは世界初のターボエンジン搭載モデルだった。しかも、1973年の発表時には高性能化と環境性能の両立を掲げていたという意味でも、現在のBMWの開発理念である「BMW EfficientDynamics よりクリーンに、よりパワーを。」に通じている。
また、2002ターボが積んでいたM121E型エンジンは、その後のBMWのモータースポーツ活動にも大きな成果をもたらした。’70年代の末からF1はターボエンジンの導入を積極的に開始。BMWもブラバムにM12/13型エンジンを供給。このエンジンのベースこそ、M121Eと考えられている。そして、1983年にネルソン・ピケットがブラバムBMWでターボエンジンを積むF1マシンでは世界初のチャンピオンに輝いたのである。

BMW 2002 TURBO (MY:1973)
Specification■全長×全幅×全高=4230×1650×1390㎜■ホイールベース=2500㎜■車両重量=1080㎏■エンジン種類/排気量=直列4気筒SOHC+ターボ/1990㏄■最高出力=170ps/5800rpm■トランスミッション=4速MT■サスペンション(F:R)=ストラット:セミトレーリングアーム■ブレーキ(F:R)=ディスク:ドラム■タイヤサイズ(ホイール)=185/70VR13(5.5J)

■取材協力=堺市 文化観光局 https://www.city.sakai.lg.jp/
堺市ヒストリックカー・コレクション
「カメラのドイ」の創業者である故・土居君雄氏が、ドイツ工業技術への憧れから収集し世界的に注目を集めた「ドイBMWコレクション」。土居氏の他界後、新婚時代を堺市の浜寺で過ごした佳き思い出から、1993年に妻・満里恵さんのご厚意により堺市に寄贈された。

解説:萩原秀輝 H.Hagihara/フォト:宮門秀行 H.Miyakado
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