
ボルボの新工場に、世界中から約300人のプレス陣が集まった。そこでは8年ぶりに新型となった「S60」が初披露された。発表と同時に、高性能なポールスターバージョンも登場。今回、もっとも注目したいのは、そのスタイリッシュなデザインだ。
低くワイドなスタンスでプロポーションも美しい
ボルボのミッドサイズ・セダン、新型S60が発表された。その初披露の場となったのは、新たに設立されたアメリカ・サウスカロライナ州にあるチャールストン工場だ。ボルボ・カーズは、アメリカでの販売強化とともに、日本や中国、ヨーロッパなどグローバルに向けて輸出を行なっていくために、これまで生産拠点のなかったアメリカでの工場の建設を決めたという。
チャールストン工場では、新型S60を2018年秋から生産開始する。また2021年からは、自動運転技術レベル4を搭載したSUV「XC90」を生産するとのことだ。
S60の発表会では、ボルボ・カー・グループ代表取締役社長兼CEOのホーカン・サムエルソン氏がステージに登壇。「チャールストン工場は、アメリカをボルボの第3の市場として確立させる役割を担っている。セダン・セグメントおよびSPAは、収益性向上への実績があり、米国のみならず世界のボルボ・カーズにとって大きな成長の機会を提供するだろう」と語った。
さて、今度のS60はというと、90シリーズやXC60と同様のプラットフォームであるSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)がベースとなる。個人的に、見た目はドイツ御三家のミッドサイズ・セダンを超えるカッコよさだと思う。もちろんデザインの好みは人それぞれだが、S60を含めた新世代ボルボが同社のブランドイメージを変えたということに関して異論を唱える人はいないだろう。
コンパクトなフロントオーバーハングや長いノーズ、低くワイドなスタンスなど、まずプロポーションが美しい。また、全長が長くなったことで伸びやかでスタイリッシュなルックスに進化した。
ボディのスリーサイズは、全長が4761mm、全幅が1850mm、全高が1431mmで、ホイールベースは新型V60と同じ2872mmとなる。先代比では全長で約125mm大きく、全幅で10mm狭く、全高で49mm低くなっている。
S60はいかにもクーペライクなフォルムだが、全体的には余計なラインが入っておらず、シンプルにまとめられている。それでいて、決め細やかなディテールの配慮も際立つ。トールハンマーのモチーフが使われたヘッドライトやC型のテールランプ、存在感たっぷりのラジエターグリルも、最新ボルボデザインの共通要素だ。
ボルボといえば、インテリアも見どころである。基本デザインはV60と共通で、センタークラスターには縦型の9インチタッチスクリーンを配置。ナビやオーディオ、電話はもちろん、車両のさまざまな状態や安全装備の機能を表示/操作することも可能。いまや必須ともいえるApple Car PlayやAndroidにも対応している。
また、柔らかなアールを描くライン、効果的なアクセントとなるメタル調フィニッシュなど、スカンジナビアンデザインが得意とする手法が随所に用いられている。気になる後席の居住性は、低めの着座位置もあり、身長177cmの男性が収まっても、頭上には拳ひとつぶんの余裕が残った。
搭載されるパワートレインは、ガソリンで前輪駆動のT5が2.0リッター直列4気筒ターボ(最高出力250ps/最大トルク350Nm)、2.0リッター直列4気筒ターボ+スーパーチャージャーを積む4輪駆動のT6(316ps/400Nm)に、これに加えて電気モーターで後輪を駆動するT6ツインエンジン(システム総合出力340ps/590Nm)や90シリーズやXC60に搭載しているT8ツインエンジン(同400ps/640Nm)というプラグインハイブリッドをラインナップ。すべてのモデルでトランスミッションは8速ATが組み合わされる。さらに発表と同時に登場したのは、T8ツインエンジンがベースの「ポールスター・エンジニアード」という高性能バージョンだ。こちらはECUチューニングで415ps/670Nmにパワーアップされ、ブレーキは6ポッドのブレンボ製となる。ボルボならではの安全装備やドライバー支援システムも充実している。シティセーフティは最新のセンシング技術により、昼間だけでなく薄暗い環境下でも進行方向の歩行者やサイクリスト、ヘラジカや馬などの大型動物を検知して衝突を回避するという。
ボルボらしさを残しつつ新しさを全身で表現している新型S60は、既存のボルボユーザーだけでなく、これまでボルボには興味を示さなかった人からも熱い視線を集めるに違いない。
COLUMN
チャールストンはどんなところ?
6月下旬のサウスカロライナ州チャールストン市は気温が35度近くまで上がり、湿気も高い。歴史ある街で南部ならではの魅力とホスピタリティに満ちていた。