モータースポーツ

「一応お仕事です(笑)」カメラマン山本佳吾の【WRCラリーGB】漫遊リポート

今回はマジメに?

先日のラリー北海道のリポートを見た人たちから、「海外も50ミリだけで行けば?」と言われたのですが、さすがのボクもそこまでの勇気はございません。いや、一瞬だけ考えました。レンズが50ミリ1本なら荷物も軽いし楽だなぁ……って。そこで今回は標準ズームレンズを減らして、28ミリを持参。とはいえ、壊れたら困るので広角ズームと望遠ズームとボディ2台は持参。結局いつものラリー取材と同じ体制だけど、そこはほら、一応お仕事ですから(笑)。壊れたら怖いし、実際海外で何度も故障してるし……。
だけど、気持ち的には28ミリだけで撮ったるで! と鼻息も荒く向かった先はイギリスはウェールズ地方。WRC(世界ラリー選手権)第11戦のラリーGBに行ってきました。昔はRACラリーって呼ばれてたこのイベント。薄暗い森と雨のイメージしかなくて、どうせ寒いんだろうなぁって思ってたけど、今年はいつもより開催時期が早かったおかげか、競技中に雨が降ったのは1日だけで、お天気には恵まれたラリーとなりました。それでも、路面はグチャグチャの泥道で、そこはやっぱりいつものイギリスでしたけどね。

日本よりは少ないけど、最近はみんなスマホとかで撮影するんですね。C3WRCは曲がらないのか、ドリフトアングル多めで写真映えはします。

初のラリーGBなので、他のヨーロッパ諸国のラリーとの違いが気になるところでした。例えば、ポルトガルだと熱狂的なギャラリーがラリーそっちのけで、ひたすら飲んでたり、肉を焼いてたりで大騒ぎ。イタリアやフランスはそこまでじゃないけど、でもやっぱり賑やか。ノリはサッカーに近いですね。では、イギリスはどうだったかというと、みんなおとなしいんです。おかしい! フーリガン発祥の地なのに! お酒を飲んでる人もあまり見ないし、紳士淑女の集いのよう。

すっかりWRC名物となったタナック応援団。そういえばヤローばっかりで、女子は見たことがないなあ。

とはいえ、そこは世界選手権。周辺各国から集まったギャラリーにそれぞれのお国柄が垣間見えます。中でも、どこのラリーにも必ず出没するエストニア国旗を掲げる連中。彼らはトヨタのオット・タナック応援団。今回も大挙してグレートブリテンまで遠征してきてました。そんで、ラリーGBと聞いて真っ先に思い浮かべるのが雨。こんな天気でもギャラリーが大勢集まってました。気温8度の雨はもはや真冬並みの寒さ。現地で買った長靴が早速役立ちました。冷たい雨の中、ずーと待ってるギャラリーとカメラマン。もはや修行ですよ。

雨に加えてガスで視界悪し。この写真を撮影した時はまだマシなほうで、ファインダー越しだと何も見えない時間もありました。こんな視界でも走れてしまうのがラリードライバー。もちろんコドライバーがいるおかげなんだけど。

こんな天気の中、写真なんか撮りたくねーよ! と思う一方、雨の写真は雨の日にしか撮れないし! と思う自分もいたりします。そうでも思わないとやってられません。寒いし辛いし。R5勢の中では最も新しいシトロエンC3R5。着実に参戦台数が増えています。

雨が止んでも路面はこんな感じ。クルマはドロドロ。ゼッケンも見えないし、パッと見で誰が誰だか分かりません。が、よく見るとわかるんですね。例えばヒュンダイはエアスクープの色でドライバーの見分けられるようになってます。

復帰2年目でマニュファクチャラーチャンピオンも見えてきたトヨタ。サービスパークでもギャラリーが一番多く詰め掛けていて、注目の高さが伺い知れます。

さて、ここまでタナックが3連勝するなど絶好調のトヨタGAZOO RACING。マニュファクチャラーだけでなく、タナックのドライバーズタイトル獲得にも大きな期待がかかったラリーでした。序盤から後続を引き離してブッチギリのトップを快走してたけど、好事魔多し。ラジエーターを破損して脱落。チャンピオン獲得は難しくなったけど、見た目はともかくまだ若いんだし、これからが楽しみなドライバーです。

こちらがタナック。「野性爆弾のくっきー」に似てません?4連勝か! と誰もが思った矢先にラジエーターを壊して脱落。

若いドライバーといえばもうひとり。WRC2にシュコダから参戦しているカッレ・ロバンペラ。14歳からラリーを始めて16歳でラトビアでチャンピオンを獲得したとんでもないヤツ。18歳になったばかりで迎えたGBは、見事にクラス優勝でした。見た目はまだまだ子供なのにねぇ。

地元選手権もアツい!

親御さんの教育の賜物か、通過するマシンの車種を全て言い当てるお子様たち。エスコートのマークⅠとマークⅡの違いもキチンと理解されており、教育水準の高さが伺い知れます。

世界選手権のラリーGBは、イギリス選手権(BRC)も併催しています。BRCといえばあのコリン・マクレーが名を上げた選手権。英国人ドライバーというと、最近はクリス・ミークぐらいしかパッとしてなかったけど、そのミークもあまりにクラッシュが多くて先日シトロエンをクビになりました。最近はそんな荒くれ者もあまりいないようで、ボクもどんなヤツらが走ってるの興味津々で、WRC以上に楽しみでした。

プロドライブ謹製! 名機インプレッサWRCもここではまだまだ現役です。

世界中どこに行っても旧車は大人気。日本と違ってあちらは旧車といえども本気で走らせます。壊れたら直せばいいんだって考え。素敵ですね。

そこでまずビックリしたのがエントリー車種。イマドキのR5はもちろん、型遅れのWRカーやグループB。さらにエスコートやコーティナといったレジェンド級までが同じ土俵で走ってました。

朝から夕方までこんな感じでまったりすごす人も……っていうか、ヤツらは肉焼いて食べたら、ラリーも観ないでずっと寝てましたよ。

いわゆるクルマでアクセスしやすい場所には、近くに飛行機を撮りに来たついでにラリー観にきたっていう日本人だったり、中学生カップルがデートで来てたりと、近いから観に行ったろかいって、ゆるーい雰囲気の人が多いのですが、WRCとBRCのインターバルの時間を使って、山道をさらに奥まで探索しに行ってみると、いるわいるわマニアどもが! イギリスは大人しいギャラリーが多いのかと思ってたけど、山の奥地は違いました。そこかしこで肉を焼くイイ匂い。ビールの空き缶の山。まるでプレミアリーグのスタジアムかのような喧騒。マンチェスターから近いんだし、そらそうよねぇ。ああよかった、イギリスにも愛すべきラリーバカがたくさんいて(笑)。先輩に聞くと、マクレーやバーンズが走ってた頃は今と比べものにならないぐらいのギャラリーが詰めかけて、渋滞もひどかったのだそう。

バルセロナ行き、買ってもうた

オジェの健闘を称えるラトバラ。内心、めちゃくちゃ悔しいんだろうなあ。

さてさて、最終日を迎えたラリーの方はヤリ-マティ・ラトバラ(ヤリスWRC)とセバスチャン・オジェ(フィエスタWRC)の一騎打ち。マシントラブルで8位まで落ちたオジェだったけど、気づいたらトップ争いに。スウェーデン以降勝ち星の無いラトバラの走りもキレっキレ! 最後はチャンピオンの意地というか風格というか、とにかくオジェは強かった。

来季はシトロエンへの復帰が決まってるオジェとコドラのイングラシア。

最終ステージまで秒差のバトルを繰り広げて、ラリーGBの最多記録である5勝目を達成! いつもクールなオジェがポディウムではめちゃくちゃ喜んでて、撮ってるこちらまで嬉しくなってきたよ。ランキングトップのヌービルまで7ポイント差。あきらめかけた6連覇も再び手の届くところへ。ベルギー人初のチャンピオン誕生か? はたまたオジェの6連覇か? 残るはスペインとオーストラリアの2戦。行くつもりじゃなかったけど、気づいたらバルセロナ行きの格安チケット、買ってもうた……。

ランキングトップのヒュンダイのティエリ・ヌービル。ベルギー人初のチャンピオン獲得なるか!?

我が家より立派でオシャレなコテージ。3008もぴったり似合ってるなあ。

ちなみに今回は総勢5人で行ってきました。それぞれ別の手段でイギリス入りの現地集合。今回ボクが選んだお宿は二階建てコテージで、広めのリビングと4ベッドルーム! しかもそれぞれの部屋がツインベッドなので8人まで泊まれます。5人で6泊して約8万円なので、ひとりアタマ1万6千円。安いでしょ? ヨーロッパで普通のホテルに1泊するのと同じくらいの料金です。

食事は基本は自炊。ですが、ぶっちゃけ作ってる時間なんてあまり無いのでインスタントが多くなります。今回は外食が多かったけど。

難点は、ホテルと違ってチェックインの時間が限られること。レンタカーはプジョー3008。5人だとギュウギュウだけど、7人乗りのミニバンだとステージへアクセスする狭い道が辛いので、ま、どうにかなるべ! と見切り発車。それぞれ時間差で現地着だったので当初は大丈夫だったけど、帰国する際には5人フル乗車と荷物のフル積載は無理でした。結局、鉄道組とクルマ組に別れて空港に向かいましたとさ。ラリー関係者にはボクも含めて「鉄ちゃん」が多いので、鉄道移動のプランニングもお手の物。ラリーには臨機応変さが必須です。

ところで、「イギリスはメシがマズイ」とよく聞くけど実際はそうでもなかったよ。とある歴史あるパブで食べたフィッシュ&チップスはめちゃくちゃ美味しくて、イギリスの食へのイメージが変わりました。

やたらと羊が多かったウェールズ。牧草地が撮影ポイントや駐車場なので、足元に気を付けないと大変なことになります。注意してても踏みまくります。

こちらはリバプールのストロベリーフィールド跡。もはや説明は不要ですね。

イギリスでは別件の仕事もあったので、ラリー前に観光する時間もたっぷりだった今回の旅。日本を離れる時間が長いと、体力的にもお財布的にもキツイけど、見知らぬ街を訪ねるのは楽しいし、新たな発見もあるしで、行ける限りは行き続ける所存です。

マンチェスターの科学産業博物館。世界初の旅客用蒸気機関車ロケット号が180年ぶりに里帰りってことで、ラリーそっちのけでまずはこちらを見学に行きました。

心残りは、蒸気機関車の撮影ができなかったこと。友人のイタリア人カメラマンはちゃっかり撮影してやがりました。来年はラリーと鉄道のコンボを目指します。

今回いちばんヤバかった場所。本気で崖っぷちです。だけどいい景色。

 

フォト&リポート:山本佳吾 K.Yamamoto

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