海外試乗

【試乗インプレ】メルセデス・ベンツ新型Aクラスのスリーボックスが! CLAとの差別化は?

国内では4代目が発表されたばかりのAクラスだが、今回は初めてセダンボディが追加、その国際試乗会がシアトルで行なわれた。ジャーマンプレミアムとしてはアウディA3セダンが直接のライバルとなるだろうが、同門のCLAやCクラスとの競合はあり得るのか!?

スポーティかつハイクオリティ

先日、4代目が国内に導入されたばかりAクラスには、4月に中国・北京で発表されたセダン版がラインナップされている。そのAクラス・セダンにシアトルで試乗する機会を得た。

ホテルのエントランスで初対面した第一印象は、随分スタイリッシュなルックスに仕上げられているなあ、というもの。フロントはハッチバック同様ノーズが低められ、新世代メルセデスに共通する、シャープな造形のヘッドライトがスポーティ。トランクへと向かうルーフラインは、なだらかな曲線で構成されており、リアエンドはオーバーハングが切り詰められ、フロント同様シャープな形状のコンビネーションランプが精悍な雰囲気を醸し出している。

一方インテリアで真っ先に目を引くのは、コンパクトクラスの常識を覆すほどの質感の高さだ。使用されている細部のパーツ類は上級クラスと遜色ないようで、このあたりからメルセデスの力の入れようが窺い知れるというもの。いやが上にも走りの性能に期待が高まる。はやる心を押さえつつ運転席に乗り込んだ。

今回の試乗ルートはシアトル市内をスタートし、某コーヒーブランドでも知られているレーニア山を横目で見ながら、山のふもとを往復する延べ500kmほどの行程。ハイウェイあり、一般道あり、ワインディングありとバリエーションに富んだ道のりで、パフォーマンスをチェックするのに適していた。往路に選んだのはA200で、最高出力163ps、最大トルク250Nmを発生する1.4リッター直4ターボを搭載する。走り始めてすぐ感じたのは、従来のハッチバックに比べて驚くほど乗り心地が良くなっていることだ。一般道ではところどころ荒れている路面があったが、不快な突き上げは皆無で、凹凸をスムーズにいなしていく。動力性能も1.4トン弱の車重には十二分で、多少の登り坂もグイグイと登っていく。ハンドリングはややスポーティな味付けで、適度なロールとともにコーナーを抜けていくことができた。聞けばFFモデルのリアサスペンションはトーションビームを採用しているとのことだが、接地性に関して気になることもなかった。

復路で乗ったのはA220 4マチックで、こちらは224ps/350Nmを発生する2.0リッター直4ターボ。車名を見ればお分かりの通り、駆動方式は4WDで、リアサスペンションがマルチリンクとなるのがA200と大きく異なる点だ。その乗り味はA200同様好印象だったが、乗り心地はこちらのほうがややシットリしている。ステアリングもいい意味で穏やかな味付けで、ワインディングを攻めるというよりは長距離をゆったり走るのに良さそう。このモデルではハイウェイを走る機会もあったが、4WDならではの優れた直進安定性に加え、パワフルなエンジンの恩恵で、ストレスなく移動することができた。

 

やはり気になるのは新インフォテイメント

このように走りのポテンシャルも高かったクラスA・セダンだが、もうひとつのトピックは、すでにハッチバックに採用されている対話型のインフォテイメントシステムのMBUX(メルセデス・ベンツ・ユーザーエクスペリエンス)であろう。「ヘイ・メルセデス」と声をかけて起動するこの対話式音声認識機能は、目的地入力、電話通話、音楽選択、メッセージ入力・読み上げ、気象情報といった多くのインフォテインメントに加え、エアコンや、照明などにも対応。従来の音声認識機能は命令語が決まっており、ユーザーがそのとおりに発話する必要があったが、MBUXでは、事実上ほとんどの命令に従うことで、インフォテインメントおよび車両操作関連の文章を認識・理解することができるという。つまり人間が機械に合わせるのではなく、その逆ということだ。これは遠まわしな表現にも対応し、例えばエアコンの温度を下げる場合、「温度を24度にして」という具体的な命令ではなくても、「暑い」と言えば理解してくれるのだ。先に導入されたハッチバックについては、日本仕様では、「ハイ、メルセデス」というキーワードで起動、ラジオなどの和製英語はもちろん、大阪弁にも対応可能で、学習能力も備えていることから、クラウド上のソフトウェアモデルによって新しい流行語を覚えたり、時代による言葉の用法の変化を学習するとのこと。対話についても、定型文言ではなく、受け答えがさまざまに変化するそうだ。

さらに人工知能AIも備わっていることで、ユーザーが次に何をしたいかを予測。よく電話をする相手がいると、その時刻になるとディスプレイに相手の電話番号を「おすすめ」として表示したり、決まった時刻に同じラジオ番組をよく聴いている場合には、切り替えを提案してくれたりするのだ。またナビゲーションシステムでは、ユーザーがよく通行するルートを検知すると、そのルートを使う目的地への案内を早速バックグラウンドで開始。ナビ画面に、例えばフィットネスクラブなどを「おすすめ目的地」として表示してくれるのだ。渋滞に関する警告など、ルートに関するあらゆる情報もリアルタイムで知ることができる。

こんな便利な機能が備わっているMBUXだが、普段からボイスコマンドを使用していないと最初は恥ずかしいというか、慣れるまで時間が掛かるかもしれない。だって初めて助手席に乗った人の前で、「ハイ、メルセデス」なんて声を掛けたらきっとビックリされるだろうし(笑)。

と、MBUXの話に多くのスペースを割いてしまったが、それは今後クルマとの付き合い方(!?)が劇的に変わる革新的システムだからに他ならない。

このAクラス・セダン、今回試乗したグレードは残念ながら国内には導入されない予定で、ハッチバックと同じくA180と他のモデルが2019年中を目処に上陸する予定だという。

ただひとつ、心配なのはCLAクーペやCクラスと競合してしまう可能性がありそうなこと。まあこれは蓋を開けてみなければわからない部分ではあるが……。

とはいえセダンならではの利便性が活かされた実用性の高さに加え、スタイリッシュさも際立ったモデルに仕上がっているゆえ、セールス的にもに期待が持てそうだ。

 

ジャーナリストらの評価は?

渡辺敏史
CLAよりもCクラスとの共食いになる!?

パワートレインの電動化が上から下から待ったなしで推し進められる昨今、縦置きエンジンのFR系モデルはその拡張性において制 約があり……ということで、メルセデスにおいては柔軟性の高いFF系アーキテクチャーが今後台数的な主力を担う可能性も大いにあ るのではないだろうか。
新型Aクラスのポテンシャルもそれを予感させるに充分だったが、セダンが加わったことでCクラスとの被りはより明瞭なものとなった。車格的には先代Cクラス=W204系にほど近く全幅も1800mmに収まるうえ、居住性はそれを上回るなどパッケージの利は充分にあり、静粛性や乗り心地においても現行Cクラスに負けず劣らず……となれば、たとえばMBUXを扱うのが気恥ずかしい守旧的なユーザーにも受け入れられる余地は充分にある。CLAクラスとの棲み分けが注目されるが、その前に、今回ばかりはCクラスとの共食い が避けられないだろう。

今井優杏
MBUXの未知数な楽しさも魅力のひとつ

単身の都市生活者にとって、コンパクトカーほどありがたいパッケージはない。だけど、小さいからって貧乏臭いと困るのだ。女もそこそこの年齢になれば、ここぞのときに共に戦ってくれるような「勝負カー」が必要になる。
私自身、そういう理由で現行Aクラスオーナーなのだけど、ハッチバックではカジュアルすぎる、と感じる方にピッタリの選択肢になりそうだ。エクステリアももちろん素敵だけど、真髄は内装と走りにこそある。特に今回試乗したA220 4マチックのなめらかなサスペンションには驚いた。抉れた悪路でさえも飲み込んでサラリといなす。リアのオーバーハング分の重量と、ボディラインからもたらされる空力性能によって、ハッチバックより数段しっとりと落ち着いた挙動を見せる。
内装の質感はすでにCクラスを超えるほどで、どこを見渡してもかなりゴージャス。車載型人工知能MBUXの未知数な楽しさも、Aクラス・セダンの魅力だ。

 

Specification

メルセデス・ベンツ A200 セダン
車両本体価格(税込):-
全長/全幅/全高[mm]:4549/1796/1446
ホイールベース[mm]:2951
トレッド(前/後)[mm]:1567/1547
車両重量[kg]:1385
最小回転半径[m]:-
乗車定員[名]:5
エンジン型式/種類:-/直4DOHC16V+ターボ
内径×行程[mm]:72.2×81.4
総排気量[cc]:1332
圧縮比:10.6
最高出力ps(kW)/rpm:163(120)/5500
最大トルクNm(kg-m)/rpm:250(25.5)/1620
燃料タンク容量[L]:43(プレミアム)
燃費(JC08/WLTC)[km/L]:-/-
ミッション形式:7速DCT
サスペンション形式:前 4リンク/コイル、後 トーションビーム/コイル
ブレーキ 前/後:Vディスク/ディスク
タイヤ(ホイール):前205/60R16(6.5J)、後205/60R16(6.5J)

メルセデス・ベンツ A220 セダン 4マチック
車両本体価格(税込):-
全長/全幅/全高[mm]:4549/1796/1451
ホイールベース[mm]:2951
トレッド(前/後)[mm]:1567/1647
車両重量[kg]:1520
最小回転半径[m]:-
乗車定員[名]:5
エンジン型式/種類:-/直4DOHC16V+ターボ
内径×行程[mm]:83.0×92.0
総排気量[cc]:1991
圧縮比:10.5
最高出力ps(kW)/rpm:224(165)/5800
最大トルクNm(kg-m)/rpm:350(35.7)/1800
燃料タンク容量[L]:51(プレミアム)
燃費(JC08/WLTC)[km/L]:-/-
ミッション形式:7速DCT
サスペンション形式:前 4リンク/コイル、後 マルチリンク/コイル
ブレーキ 前/後:Vディスク/ディスク
タイヤ(ホイール):前205/55R17(6.5J)、後205/55R17(6.5J)

フォト:メルセデス・ベンツ日本/ル・ボラン 2018年12月号より転載
相澤隆之

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