コラム

ステーションワゴン市場で精彩を放ち続ける【ボルボ・エステート】が「定番」に至る系譜

いまやボルボのキャラクターを象徴する存在、といっても過言ではないエステートモデル。その半世紀以上におよぶ歴史をすべて紐解くには到底誌面が足りないが、ここでは主要モデルのビジュアルを紹介。あわせてステーションワゴン市場で精彩を放ち続ける理由を考察してみる。

それはアクティブな要素を持つ知性派の選択

日本ではもはやニッチな存在ともいえるステーションワゴン。だが、そんな中にあってもボルボのエステートが安定した支持を集め続けているのはなぜかといえば、答えはこのブランドならではの立ち位置に求められるかもしれない。プレミアムではあっても、それをひけらかさない奥ゆかしさと真面目な作り、安全性向上に長年取り組んできた真摯な姿勢は、充実した生活を送る知性派の選択というキャラクターを醸成。主流のドイツ勢に対する、手堅いオルタナティブという絶妙なポジションを確立するに至った。

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この知性派の選択、という評価は世界的なもののようで、少し古い映画を見るとインテリな主人公の伴侶となったボルボを見かける機会は少なくない。たとえば今年、トランプ政権の暴露本で再び脚光を浴びたジャーナリストのボブ・ウッドワードが暴いたウォーターゲート事件を描く「大統領の陰謀」にはアマゾンが登場。「危険な情事」でマイケル・ダグラス演じる弁護士の主人公が劇中前半に乗っていたのは、240シリーズのエステートという具合だ。

240SERIES

そんな持ち前のイメージにアクティブな要素を持つワゴンボディと組み合わせれば、それだけでも強力なコンテンツになることはいわずもがな。また、850以降は真面目なだけでなく時代に即したブランド力の強化にも余念がない。この、堅実にしてしたたかな系譜を見れば、ボルボのエステートが「定番」である続けていることにも納得がいくというものだ。

 

DUETT

ボルボの記念すべき初代エステートといえるのが1953年に登場したPV445デュエット。ベースとなったのは1947年にデビューした2ドアセダンのPV444だが、デュエットは堅牢な作りと優れたユーティリティが高く評価された。フレームシャシーということで、ワゴンボディだけでなくコマーシャルバンやピックアップ仕様といったバリエーションも存在。このPV445をベースとしたアップデート版、PV210時代を含めると長寿モデルとなった。

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ボルボとしては戦後2モデル目の新型車となったアマゾンは1956年にデビュー。1970年までに約67万台が生産されたヒット作になったが、有名なアマゾンのネーミングが正式に用いられたのは北欧市場のみ。当時、すでにドイツのクライドラーが同名の2輪車を発売していたことから、それ以外の地域ではセダンが121/122、エステートは221/222と呼ばれた。1959年にはボルボが特許を取得した3点式シートベルトを世界で初めて標準装備。

140SERIES

1966年にデビューした140シリーズは、現在に至るボルボのデザインイメージを決定付けたモデルで、現役だった8年間で約125万台を生産。ボルボ初のミリオンセラーとなった。この140シリーズから1番目の数字をモデルシリーズ、2番目をエンジンの気筒数、3番目をドア数とするネーミング体系が導入されている。エステートのモデル名は145。なお、1969年には140シリーズをベースとした6気筒エンジン搭載車の164も登場している。

 

240SERIES

1974年にデビューした240シリーズは、1993年まで生産が続けられた長寿モデルにして、6気筒エンジンを搭載した260シリーズまで含めるとトータルで286万台以上を生産したメガヒットに。140シリーズをベースとしたスタイリングの人気は根強く、日本にも愛好家は多い。240/260シリーズは、安全性でもさまざまな賞を獲得。1976年にはイギリスで法基準を上回る安全性が評価されドン・セーフティ・トロフィーを受賞。1980年代後半の4年間は、アメリカの高速道路損失データ協会(HLDI)に、アメリカで一番安全なクルマとして認定されている。

700/900/V90SERIES

セダンは1982年に6気筒の760、1984年に4気筒の740がデビューしているがエステートモデルの登場はいずれも1985年。スクエアな フォルムは240シリーズから受け継ぎつつ、そのスタイリングは一気にモダンな装いに。1990年にはアップデート版の940/960にスイッチ。晩年は車名を近年復活したV90(セダンはS90)に改めている。このシリーズは最後のFRボルボという位置付けになる。

 

850/V70SEIRES

ボルボの魅力が安全性だけではないことを世に知らしめた記念すべきモデルが850/初代V70シリーズだ。それまでボルボの主流だったFR駆動を改め、エンジンを横置きにしたFF駆動へとスイッチ。文字通りエッジの立ったスタイリングは、ボルボらしさを歴代モデルから引き継ぎつつも格段に若々しい仕立てに変貌した。1991年にセダンがデビュー、エステートは1993年に追加されている。走りのキャラクターを強く打ち出すようになったのもこの850からで、1994年には高性能(アウトプットは240ps&330Nm)な850T-5Rがデビュー。エステートモデルはモータースポーツにも参戦している。1997年にはS70/V70へと発展。V70には初のXCモデルも用意された。

V70

V70 XC

V40/V50SERIES

1995年にデビューした初代V40(とセダンのS40)は、三菱自動車との合弁事業から生まれたコンパクト級のボルボ。一方、2003年に登場した実質的な2代目はエステートがV50と改名。当時、ボルボがフォードグループだったこともありベースの一部をマツダ・アクセラと共用。この2代目はデビュー当時、フリーフローティングセンタースタックと名付けられた大胆なインテリアデザインも話題に。

 

V70SERIES

850のアップデート版だった初代に対し、1999年に登場した2代目は完全なブランニュー。スタイリングも古典的なボルボ流とは別モノのテイストに変身していたがボルボの主力エステートモデルとして高い人気を誇った。一方、2007年デビューとなる3代目のエクステリアは歴代のエステートを彷彿とさせるテイストに回帰したがハードウェアは着実に進化。2016年まで現役として販売されている。

EXTRA
P1800ES

エステートの本流からは完全に外れた“番外編”だが、1971年に登場したP1800ESは現在でいうシューティングブレークの走りともいうべきモデル。そのエクステリアは、同じくスタイリッシュなクーペボディが高く評価されたP1800のルーフを後方まで延長。それにグラスハッチを組み合わせた個性的なもので、スポーツワゴンとしての佇まいは現在に至っても新鮮。その現役だった期間は決して長くないが、クーペともどもボルボの傑作として評価するクルマ好きは多い。特長的なグラスハッチのモチーフは、後に登場する480(デビューは1986年)、さらには2013年まで現役だったC30にも受け継がれた。

フォト:宮門秀行、ボルボ・カーズ/ル・ボラン 2018年12月号より転載
小野泰治

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