清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 70:その似て非なる味付けの違いが露わになった!
BMW 740i vs メルセデス・ベンツ S300h
TEST 02:ウェット旋回ブレーキテスト
テストの「方法」と「狙い」
ドライ路面からウェット路面に100km/h(±2%)で進入、半径40Rのカーブをフルブレーキングしながら曲がる。路面はハイドロプレーニングよりもウェットグリップが問われる水深5mmに設定。ABSやタイヤを含めたクルマの総合的なブレーキ性能と、シャシーの旋回性能(ラインが外に膨らむクルマは危険)をみる。
タイヤコンデション
メルセデス・ベンツ S300h
S300hの標準タイヤサイズは前後とも245/50R18 。テスト車はオプションのAMGラインで前245/45R19(溝残存率:右前86.4%/左前99.9%)、後275/40R19(溝残存率:右後87.9%/左後99.6%)のBS製ポテンザS001を装着していた。
BMW 740i
前後225/60R17が740iの標準タイヤサイズ。テスト車はオプションの20インチホイールを装着。タイヤはBSポテンザS001で、前245/40R20(溝残存率:右前80.9%/左前79.3%)、後275/35R20(溝残存率:右後72.1%/左後71.0%)。
両車とも「さすが」のひと言。見事なブレーキ性能とライントレースだ
MERCEDES-BENZ S300h
●制動距離:39.0m(★★★★★)
常識では「重いクルマは止まりにくく曲がりにくい」といわれるが、S300hは驚くほどのウェット旋回ブレーキ性能だった。直線ブレーキと同じようにウェットでも減速Gが高く、制動距離はわずか39m 。タイヤはBS製ポテンザS001と、一見スポーツタイヤに見えるが、転がり抵抗は小さい。だが、日本車が採用する低転がりタイヤとは違い、ウェット性能は十分に確保されている。強くブレーキを踏みながら、ステアリングを半径40mのラインに沿って切り込むと、多くの場合は10m前後ラインから離れてしまうが、S300hはステアリング操作に忠実なライントレースが可能。2度目はステアリングをやや先行させて操舵し、ブレーキを踏んだ。その時のABSのロバスト性は合格で、バラツキは少なかった。
BMW 740i
●制動距離:39.5m(★★★★★)
タイヤの残り溝は前後とも5mm台だが、新品では7mmなので7~8分山だ。今回の路面は水深2~3mmでコントロールしているので不安ではあったが、ブレーキを踏んだ瞬間にガツンと制動力が発生し、ウェットであることを忘れるほどグリップ力が高く、ハイドロプレーンも発生していない。最終的にはS300hよりも若干アウトに膨らんだ。タイヤはS300hと同じBS製ポテンザS001だが、サイズも構造もゴムの配合も異なる。とくに740iは20インチのランフラットという固いタイヤを履いているので、ウェットでは不利かと思われたが、実際にはハンディとなっていなかった。740iはクルマの基本性能の高さも光り、最上級モデルにふさわしい操縦性で安心感もあり、優秀なテスト結果となった。
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