
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 71:ポルシェのターボvs自然吸気論争に終止符
ポルシェ911カレラS(後期991Ⅱ)vs ポルシェ911カレラ4GTS(991型)
TEST 01:加減速テスト
テストの「方法」と「狙い」
●加速テスト
静止状態からフル加速し、100km/hに到達するまでの時間から平均加速Gを算出。非力なクルマは0.15G程度、高性能車では0.6Gに達するクルマもある。エンジン、トランスミッション、トラクションのかかり方といった、パワートレイン全体の能力をみる。
●ブレーキテスト
100km/hからフルブレーキング、停止するまでの時間から平均減速Gを算出する。減速Gはどんなクルマでも0.8G〜1.2G程度だが、加速Gに対応した減速Gを持っていることが重要。そうでないクルマは危険といえる。
加減速テスト
加速テスト
減速テスト
車両重量の差を考慮してもカレラSの加減速の進化はお見事
事前予想では、前期型911カレラ4 GTSは自然吸気+AWDということでロスなくスムーズに加速すると思ったが、PDKはターボ(991 II)よりもエンジン回転が高い4500rpmでクラッチミートする制御を行なうので、その分だけもたつき、それがタイムに現れた。ということで、予想に反して発進は後期型911に軍配が上がった。911カレラ4GTSは実測値でプラス45kg重いので、その分加速も若干不利だった。だが、自然吸気フラット6のエンジン音は気持がいい。ターボのようなパンチはなくても、よどみなく回転 上昇するエンジンそのものが愉しい。ブレーキは予想よりも止まりにくかったが、ここにも車両の重さの影響が出ていたようだ。
PORSCHE 911 CARRERA4 GTS
●加速:0.51G(★★★★☆)
●減速:0.94G(★★★★☆)
ターボエンジンは急発進でタイムラグがあるし、トルクは500Nmと大きいので、GT2のように2輪駆動のターボは扱いにくいかもしれないと予想していた。だが、そんな心配は吹き飛んだ。911カレラSが搭載する新開発のパワーユニットは、前期型と比べて パワーはマイナス10㎰、トルクはプラス60Nm。急発進ではエンジンが2000rpmくらいでクラッチミートするから、ターボのタイムラグもほとんどなくスムーズに加速した。リアエンジンの荷重がタイヤに掛かかるからホイールスピンもない。ブレーキレスポンス はPCCB(カーボンコンポジットブレーキ)に似たフィールで、とにかく利きがいい。踏力によるコントロール性も抜群に良く、一般路でも扱いやすいだろう。
PORSCHE 911 CARRERA S
●加速:0.59G(★★★★★)
●減速:1.09G(★★★★★)