雪道でも抜群の安心感を与えてくれる
2018年、FCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)ジャパンが手がけるジープとアルファロメオは絶好調だった。ジープは、2年連続で1万台を超え2018年は過去最高となる11,414台を記録。アルファロメオは、対前年比で39.9%となる2,458台を販売した。
その理由はいくつかある。まずはジープから検証しよう。2018年は、主力モデルのラングラーがフルモデルチェンジをした年でもある。優れた快適性など乗用車感覚が得られることを価値とするSUVが多い中にあって、ラングラーは見るからにその質実剛健ぶりが伝わってくる。スマートフォンのAppleCarPlayやAndroid Autoといったアプリに連携するといった先進性を備えているものの、車体はボディーとシャシーが独立した伝統的な構造を受け継ぎ、サスペンションも左右が直結する固定式だ。
こうした構造は、舗装路の操縦安定性では様々な課題を残す。だが、乗用車感覚を望むのであれば選ぶべきSUVはいくらでもある。ラングラーの舞台は、未舗装路なのだ。その前提を踏まえたて最適化された構造となる。実際に、未舗装路での走破性の高さは体験済みであり、歩いて登ることさえ困難な荒れた急斜面を何事もなく立ち向かう。
さらに、今回は雪上での走破性を試す機会があった。一般路には実在しないような急勾配や深いわだち路を含む特設コースで、4輪駆動システムをオールラウンドな4H AUTOに設定し8速ATをDレンジに保ったままでも不安を感じることなく走破が可能。幹線道路なら最大級の傾斜角といえる約15度の上り勾配であえて途中停車(本来なら避けるべき場面)しても、アクセル操作に余計な気遣いなしに再発進ができた。
続いて、場面を一般路に移して雪上を250kmほど走行する。非積雪地域で暮らす人にとっては、雪道というだけで緊張するもの。ところが、ラングラーはそうした心づもりを和らがせてくれる。乾いた舗装路では穏やかすぎる(それが持ち味にもなる)ように感じる操縦性は、雪道ではいい頃合いになる。緊張のあまり腕に力が入ってしまうような人も、いつしか素直な感覚で運転ができていることに気付くはずだ。
アルファは雪上でもアルファだった!
一方、2018年にマイナーチェンジを実施した、ジープのミドルクラスであるチェロキーは雪上でも正確な操縦性を示した。特設コースを飛ばし気味に駆けぬけても、乾いた舗装路のようにステアリングを切り込んだ通りに向きを変えてくれる。周囲の流れに合わせて一般路を走らせるだけでもこうした特性が確かめられるだけに、安心感につながるはずだ。
さて、アルファロメオ大躍進の原動力となったのは2017年と2018年に日本市場に投入されたジュリアとステルヴィオの成功だ。特に、ステルヴィオはアルファロメオ初のSUVとなる。車重が増え重心も高いSUVでアルファロメオらしいスポーティさが得られるのかという心配をよそに、乾いた舗装路では躍動感ある走りを楽しませてくれた。
それなら、雪道ではどうだろうか。まずは、特設コースでコーナリングの限界性能を試してみよう。走行モードがn(ノーマル)なら、前後トルク配分を0:100から50:50まで場面に応じて連続可変制御する、オンデマンド式4輪駆動システムが正確な操縦性と優れた安定性を獲得。より積極的にアクセルを踏みステアリングを切ると、ごくわずかに狙った走行ラインを外れ限界を超えそうな予感を抱くものの、次の瞬間にESC(横滑り防止装置)が介入。いわば走りの保険がかけられているようなものなので頼りになる。
だが、走行モードをd(ダイナミック)にすると状況が変わってくる。前後トルク配分は後輪重視となり、FR車を走らせるような感覚でテールスライドにさえ持ち込める。ESCの介入も控えめになり、あえて挙動変化を楽しむ領域を拡大してくれる。ただ、限界を完全に超えてしまうことはなくスピン状態に陥る前にESCが危うい事態を抑え込んでくれる。
こうした電子制御の裏付けがあるだけに、試乗した2.0 TURBO Q4が積む2Lの直列4気筒エンジンが発揮する280psのパワーを持て余すことがない。もちろん、8速ATをマニュアル操作し低いギアでアクセルを踏みすぎればESCの出番が増えてしまう。だが、低回転域から充実したトルクを発揮するだけにDレンジに保ったままで力強さの余裕を実感しながた雪道をアルファロメオらしい速域で駆けぬけることができた。
アメリカンSUVの元祖ともいえるジープ・ラングラーとイタリアンSUVの新星となるアルファロメオ・ステルヴィオ、雪道でもそれぞれの魅力が確かめられFCAジャパン絶好調の理由も明らかとなった。
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