フォルクスワーゲン

【海外試乗】「フォルクスワーゲン Tクロス」カジュアルポップなコンパクトSUV

ひしめくライバルに差をつけた会心作

奇をてらうことなく、だからといって保守的に留まることもない。カジュアルでポップな見た目で、本当に“使える”機能を備え、走りの仕上がりも上々。そんな好印象を予感させるフォルクスワーゲンの新型コンパクトSUV「Tクロス」をスペインのマヨルカ島で初試乗。後発の利点を生かし、ライバルにはない魅力を備えた満足度の高い一台だ。

走ってすぐに「ベースのポロを上回る仕上がり!」と率直に感じた。フォルクスワーゲンがラインアップするSUVの中で最も小さいTクロスは、ポロをしのぐ静粛性の高さと優れた乗り心地が実現されている、というのが僕のファーストインプレッションだ。
今回、スペインのマヨルカ島で試乗したTクロスには、ポロと同じMQBの「A0」というアーキテクチャが用いられている。フォルクスワーゲンいわく、このセグメントは今後10年で2倍になると予測。国産車はホンダ・ヴェゼル、マツダCX-3、日産ジュークなどの人気車種が揃う激戦区。輸入車もジープ・レネゲードやプジョー2008、ルノー・キャプチャーなど多くの強豪がひしめく。
そんな中でTクロスは、クラスの中でもとりわけコンパクトな全長4108×全幅1760×全高1584mmというスリーサイズで、ホイールベースはポロと同じ2551mm。ちなみに全長はポロより54mm長く、ゴルフベースのTロックより120mm短い。

しかしながら、その姿は堂々たるもの。というのも、フォルクスワーゲンのSUVファミリーに共通するデザイン手法が継承され、力強いボンネットや幅広いグリル、サイドに走る2本の水平ラインなどの風格が与えられているからだ。リアは、ブラックトリムフレームを備えた横一文字のリフレクターバンドがアイコンになっている。
一方のインテリアは、基本的にポロとテイストは似ているが、こちらの方がよりアクティブなデザイン。樹脂パーツはポロよりもチープな印象を抱いたが、ボディと同色のパネルを用いるなどして上手に演出がなされている。

1L 3気筒ガソリンターボは、最高出力95psと115psの2種類のスペックを用意。今後、最高出力150psを発揮する1.5Lの4気筒ガソリンターボ、最高出力95psの1.6L 4気筒ディーゼルターボのラインアップも予定されている。

搭載されるエンジンは、EA211から派生した1Lの3気筒ターボ。ポロと同じ95ps版と高出力な115ps版が用意されるが、今回試乗したのは後者で、7速DSGを組み合わせた仕様だ。
最高出力115ps/最大トルク200Nmを発生するエンジンは、1270kgのボディを0→100km/h加速10.2秒で走らせる。将来は、さらに2種類のエンジンも追加される予定だ。

ポロのユーザーもきっと気になる一台

ラゲッジルームの広さもトピックで、容量は通常時で385-455L。14cmのスライド機構を備えるリアシートをフルフラットにすれば、最大1281Lのスペースを作り出すことができる。駆動方式は都会派SUVゆえFFのみの設定だ。

走り出すとやはり、115psだけに日本仕様の95psのポロよりもゆとりを感じる。加速は気持ちよく力強さも感じるし、低速でもドライバビリティが高い。さらに乗り心地に関しても、サスペンションは前ストラット/後トーションビームという通常のメカサスだが、車高が上がりサスペンションストロークが増したためか、路面からの入力はしっかりといなされ、上質な乗り味を感じとることができた。試乗車は18インチタイヤを履きながらも、乗り心地はポロより良いといえるものだった。
また装備類もポロよりリッチになっており、例えばドライバーアシスタンスはポロの装備にプラスして、レーンキープアシストやハイビームアシストも備わる。さらに4つのUSBポートとワイヤレス充電を備えるなど、イマドキのガジェットとの相性も良好だ。

8インチの「アクティブ・インフォ・ディスプレイ」を装備し、デジタルメーターにはナビ画面の表示が可能。

使い勝手ではリアシートが最大14cmスライド可能なため、ラゲッジスペース容量も385-455Lと増減して使えるほか、60:40の分割可倒式シートを畳むと1281Lまで拡大。また後席は身長168cmの僕がドラポジを決めると、前席背もたれまで拳3つの余裕があり、頭上空間も十分なゆとりがあった。
こんな具合でTクロスは、見た目良し、品質良し、走りも良しで、使い勝手も抜群。売れる要素は満載だ。唯一の欠点は加速時に3気筒の音が煩いことくらい。
今年中の日本導入が予定され、価格は300万円を切るという噂もある。これが実現したら、ひしめくライバルはおろか、ポロを買いに来たユーザーも目を向けそうな予感がする一台だ。

センターコンソールにはスマートフォン用のワイヤレス充電用パッドやUSBポートが4系統搭載される。

【Specification】フォルクスワーゲン Tクロス

■全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm
■ホイールベース=2551mm
■車両重量=1270kg
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=-/直3DOHC12V+ターボ
■総排気量=999cc
■最高出力=115ps(85kW)
■最大トルク=200Nm(20.4kg-m)
■トランスミッショッン形式=7速DCT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前後ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後215/45R18
■車両本体価格(税込)=未定

【問い合わせ】
フォルクスワーゲンジャパン 0120-993-199 https://www.volkswagen.co.jp/ja.html

リポート:河口まなぶ/M.Kawaguchi フォト:フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン ル・ボラン2019年5月号より転載
LE VOLANT web編集部

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