
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number83(SEASON.8):もはやドイツ車優位説は過去のこと。アメリカ車とイタリア車の底力に脱帽!
キャデラック CT6 vs マセラティ・クアトロポルテS/Test01:加減速テスト
テストの「方法」と「狙い」
●加速テスト:静止状態からフル加速し、100km/hに到達するまでの時間から平均加速Gを算出。非力なクルマは0.15G程度、高性能車では0.6Gに達するクルマもある。エンジン、トランスミッション、トラクションのかかり方といった、パワートレイン全体の能力をみる。
●ブレーキテスト:100km/hからフルブレーキング、停止するまでの時間から平均減速Gを算出する。減速Gはどんなクルマでも0.8G-1.2G程度だが、加速Gに対応した減速Gを持っていることが重要。そうでないクルマは危険といえる。
キャデラック CT6 VS マセラティ クアトロポルテ S(加速編)
キャデラック CT6 VS マセラティ クアトロポルテ S(減速編)
CT6のエンジンとギアボックスのマッチングの良さには舌を巻くものがある
MASERATI QUATTROPORTE S
●加速:0.49G(★★★★)
●減速:1.11G(★★★★☆)
マセラティの第一印象は昔の古いクルマに乗っている感じだった。しかし、エンジンに火を入れたときの感動は言葉にならない。「エンジンです!」という主張が感じられたのだ。だが、ATとのマッチングはもう一歩だ。出だしのダッシュではFRなのでトラクションコントロールが作動し、エンジンパワーを制限している。このセグメントの高級車は今やAWDがマストかもしれない。ボディとパワートレインのやや時代遅れ的なところが残念だが、エンジン音はとにかく気持ちいい。ブレーキはそこそこ効くが、ペダルが奥にスッと入ってしまい、スポンジーな印象を受けた。2回目はややフェード気味だった。
CADIILAC CT6
●加速:0.38G(★★★☆)
●減速:1.02G(★★★★)
全長5m超えるフルサイズサルーンの重量は約2トン。このボディにV6自然吸気エンジンでは物足りないだろう。だが、テストしてみると、ATとのマッチングも良好で心地よく走ることができる。絶対的な速さではターボに敵わないが、控えめなキャラクターとして受け入れることができそうだ。気になったのは実際にスロットルを踏みこんだときに、加速Gの立ち上がりがおっとりとしていること。セッカチな人には向かないだろう。一方、ブレーキはすごく良い。ペダルを踏み込んだときのストッピングパワーがリニアで使いやすい。さらにABSも正確に機能し、音や振動も少なかった。