
BMWに誘われるがままにワインディングを駆けぬけた!
320i Mスポーツでの市街地と都市高速に続いて、試乗ステージはワインディングロードに。ここでは、当面のトップグレードに該当する330i Mスポーツに乗り換えて、その動力性能と新たに採用されたシャシー装備についても分析してみよう。
臨場感タップリの加速フィールとフラットで刺激的なコーナリング
BMWはドライバーを巧みに走りの世界へと誘いかける。日常的な場面でも、「もっとアクセルを踏み込んでみたい」とか、「ステアリングを大きく切り込んでみたい」とか、そんな気持ちにさせてくれる。よく期待通りの反応という表現が使われるが、BMWの場合は少し異なる。絶妙な加減で、期待を超える反応を示すから、その先を確かめたくなるわけだ。
330iを走らせていると、そんな場面が少なくない。2L直列4気筒直噴ターボエンジンは、最大トルクが400Nmに達するだけに市街地を走らせていても力強さに倒的な余裕が確かめられる。さらに、開き過ぎた先行車との車間を調整するべく、アクセルを少し踏み込んだ際など、スポーツ表示のモニターのトルクメーターに視線を飛ばすと、フル加速ではなくても2000rpmで400Nmを発揮。同時に、走行モードが「COMFORT」のままでも低周波が強調されたエンジン音が聞こえてくる。そして、溢れ出るようなトルクが立ち上がり“オオッ”とばかりに刺激的な加速を開始する。
ブルーのステッチが入るヴァーネスカ・レザーのスポーツ・シートもオプションだ。
その先を確かめるため、高速道路の本線合流で「SPORT」モードを選んでアクセルを踏み続ければ、エンジンの爆発エネルギーの大きさを際立たせるような鼓動音が重なり、それが高回転域で連続音に変化していく臨場感タップリな演出だ。2速の守備範囲となる90km/hに達し、ゼブラゾーンが始まる6500rpmでも吹け上がりの勢いを残したままだ。実際に、Dレンジのままでもタコメーターの針がゼブラゾーンを切り裂く6700rpmでシフトアップとなる。
ワインディングロードでは2速フル加速のチャンスはないものの、中回転域を保ちながら3速までを使い分けて、コーナーを駆けぬけるだけでも十分に楽しめる。コーナー進入時に3速から2速へ。「SPORT+」モードなら、8速ATをパドルでマニュアル操作すれば電光石火のシフトチェンジだ。その切れ味の鋭さを体験した瞬間に、誰もが快感を覚えるに違いない。
“ズバッ”と効果音がしそうな、猛烈に鋭い勢いで向きが変わる
もちろん、コーナリングそのものも刺激的だ。試乗した330i Mスポーツは、19インチタイヤとダンパーの減衰力を可変制御するアダプティブMサスペンション、リア左右輪の駆動配分を可変制御するMスポーツ・ディファレンシャルを組み合わせたオプション、「ファスト・トラック・パッケージ」を装備。それだけに、走行モードで「SPORT」もしくは「SPORT+」を選べばステアリングとペダル操作に対する応答性がMモデルのように鋭くなる。コーナー進入時にステアリングを素早く大きく切り込めば、それこそ“ズバッ”と効果音が聞こえそうな勢いで向きが変わる。
ステアリングを切り込む過程ではロールが進んでいるはずだが、その実感はほとんどない。横Gだけが、鋭い方向変化の具合に合わせて立ち上がる。こうしたダイレクト感に、Mスポーツ・ディファレンシャルが威力を発揮している。だからこそ、正確なハンドリングを実現しながら、高いスタビリティが確保できるわけだ。
コーナリング中は、舵角が大きさに合わせてギア比がクイックになる「バリアブル・スポーツ・ステアリング」からシッカリした手応えが伝わる。なおかつ、ロールを最小限に抑えながらサスペンションがスムーズにストロークしていることがわかる。強い横Gが発生している状態で路面のうねりを通過しても、弾かれて姿勢が乱れることがないから、狙った走行ラインを寸分違わずトレースすることが可能なのだ。
コーナー脱出時は、アクティブに制御されるアダプティブMサスペンションに加えて新採用のストローク依存型ダンパーがパッシブに減衰力を制御。フロントは伸び側の減衰力、リアは縮み側の減衰力が高くなるのでステアリングを戻しつつアクセルを踏み込んでもボディはフラットなまま。
このリポートを記しているいまも、コーナー脱出時に腰に伝わってきた押し出されるようなGの感覚が残っている。330iは、走りの余韻を残してくれる。だから何度でもコーナーを駆けぬけたくなるのだ。
【Specification】330i Mスポーツ
■ハンドル位置=右
■全長×全幅×全高=4715×1825×1430mm
■ホイールベース=2850mm
■トレッド=前1585、後1570mm
■最小回転半径=5.3m
■燃料タンク容量=59L
■JC08モード燃費=15.7km/L
■車両重量=1630kg
■トランスミッション形式=8速AT
■変速比=1速5.250、2速3.360、3速2.172、4速1.720、5速1.316、6速1.000、7速0.822、8速0.640、R3.712、F2.813
■エンジン型式/種類=B48B20B/直4ターボ
■総排気量=1998cc
■圧縮比=10.2
■最高出力=190kW(258ps)/5000rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/1550-4400rpm
■サスペンション形式=前ストラット、後5リンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■ステアリング=EPS
■タイヤ(ホイール)サイズ=前225/45R18(7.5J)、後255/40R18(8.5J)
■車両本体価格=6,320,000円
【問い合わせ】
BMWジャパン 0120-269-437 https://www.bmw.co.jp/