
カー・マガジン編集部員がこれは!と思った趣味グルマを紹介する『100万円でドロ沼に陥る!? 』。今回は世界的な大衆車、そして趣味グルマの名をほしいままにするVWタイプ1、通称ビートルを取り上げる。1971年-1972年のみ生産されたドイツ製大衆車はいかが?
VWビートルとは?
自動車史で外すことのできないVWビートルは、2003年に一度その歴史に幕を下ろすが、ニュー・ビートルとして復活。現在もザ・ビートルとして生産が継続されている。ここで取り上げた初代は1974年までドイツで生産され、以降はメキシコやブラジルの工場で生産された。
ドアを閉めた瞬間の”バスッ”、とも”ドスッ”ともいえない音を聞くたびに、仕立ての良いクルマだなと感心させられる。余談だが、10年以上前に10万円のプライスタグを掲げ、控え目に言ってもやれていたビートルでもドアの開閉音には感心した記憶が蘇った。

<パワフルな1600フラットフォー>1302Sに搭載される水平対向4気筒エンジンの排気量は1600ccで、上級モデルに相応しくデュアルポートシリンダーヘッドを持つ。低速トルクが豊かで、発進時でももたつくことがないため、街中や普段乗りにもオススメだ。
閑話休題。ここで取り上げる1972年式ビートルは西ドイツ製、パワフルな1600ccのフラット4。そしてキャブ仕様という魅力的なワードが並ぶ。ここに”ストラットモデル”の1302Sというワードが追加されると、不思議と好みは2分する。というのも1302シリーズではフロントボンネットのデザインが変更され、変化を歓迎しない層からは”アグリーダックリング(みにくいアヒルの子)”という不名誉な愛称を与えられ敬遠された時代があった。しかしフロントがストラット式となったのは走行性能を高めるための正常進化であり、ボンネット形状の変更もトランクスペースが拡大するための方策で、実は良いこと尽くめなのだ。
ちなみに1302SのSは”スーパービートル”を意味し、エンジンはデュアルポートを備えた1600ccで低速トルクがあるため発進時にもたつくなんてことはない。街中はもちろんロングツーリングでもその恩恵は絶大だ。またこの個体の特長として2ペダルのセミA/T、スポルトマティックということも挙げられる。つまりA/T限定免許でも運転できるのだ。ノーメンテの個体では購入後が不安だが、フラットフォーで整備されているこちらであれば安心だ。

<嫉妬されるほどの広さ>カルマンオーナーが思わず「広い!」と声を漏らすほど、1302では従来モデルに比べラゲッジスペースが拡大されている。ボンネットもラウンドしているため、意外なほど荷物を収納できる。
ヤナセのディーラー車らしくデラックス仕様に相当する装備も魅力
<オリジナル度&コンディション共に良し>オリジナルを維持したインテリアのコンディションも良好だ。貴重なナショナル製のAMラジオは未だ現役。KAMEI製のパーセルシェルフも、いざ探すとなると苦労するんでポイントですね、とは取材に同行したカルマンオーナーのコメント。
ヤナセのディーラー車らしく、本国ではデラックス仕様に相当する装備も魅力で、車内の換気に役立つベントトリムはレアなアルミモール付きとなる。車内に目を向ければシート表皮や内張りも美しく、当時のヤナセで用意されたVWロゴ入りラバーマットも残るなど丁寧に乗られてきたことが伺えた。更にオリジナルのトーガホワイトペイントも残っている。
<頭でっかちは損のモト>”アグリーダックリング”の呼称が先行し、避けられる時代もあったが、1302でフロントサスペンションは初めてストラット式となり、走行性は間違いなく向上している。
デザインの嗜好は人それぞれだが、アグリーダックリングというだけで1302Sを避けているのであれば実にもったいない。自分の基準で判断していただきたいが、背中を押してほしいという方へは、この個体を扱うフラットフォー代表の小森さんの初めて乗ったビートルが1302Sだった、という後押しはいかがだろうか。
1972 VOLKSWAGEN TYPE1 1302S SPORTMATIC
車両本体価格:178万円+税
オリジナル度 ★★★★
実用度 ★★★★
ドロ沼度 ★★★★★
ストラットというだけで敬遠していたのは今や昔。ある意味ビートルの究極進化系であり、エンジンもパワフルな1600ccを搭載するとなれば実に魅力的。一番危険なのは空冷ワーゲンの魅力に取りつかれて抜けだせなくなることぐらい。見方を変えればこれはこれで幸せ。
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フラットフォー
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