
ゴルフ・キラーの最右翼!
BMWは、本年9月28日からドイツ本国で発売開始となる新型1シリーズの概要を全世界に向けて発信した。駆動レイアウトがついにFRからFFとなるのは既報の通りだが、これをネガティブと受け取る向きが存在するのには驚きを隠せない。1シリーズはデビュー以来、3代目にしていよいよCセグメントのリーダーになれる資質を身に付けたのだ!
今回、1シリーズの世代交代にあたってのFF化は、コンパクトカーという枠内でのクルマ作りを考えた場合、合理性を考えれば当然のこと。BMW社内にはすでにUKL2というミニや2シリーズなどコンパクトセグメント用のFFプラットフォーム(アーキテクチャー)が用意されているのだ。これを使用することで、新しい1シリーズは弱点とされてきたリアコンパートメントの居住性を大幅に改善することができるわけで、正常進化と捉えるべきだろう。
ボディサイズは全長が4319mm、全幅が1799mm、全高が1450mmで、ホイールベースは2670mm。従来型と比べると5mm短く、34mm広く、10mm高くなった寸法で、ホイールベースは20mm短縮されているものの、ラゲッジスペース容量は標準時で+20の380、後席バックレストを完全に畳めば最大で1200の積載空間が確保されている。
プロジェクトマネージャーのヨッヘン・シュマルホルツによれば、今度の1シリーズ(社内開発コード=F40)は、どんなパワートレイン、駆動レイアウトであっても、スポーティコンパクトとしてデザインとパフォーマンスを最大限に発揮できることに開発の主眼を置いたという。そして、そのダイナミズムは、極端に切り詰めた前後オーバーハング、Cピラーに続くリアクォーターなどに表現されているとも説明する。従来型に比べてキドニーグリルはややワイドに、LEDヘットライトはややシャープになり、バンパー下の大型インテークやエアカーテンスリットなどを含めて、従来にも増して精悍な表情を見せるのも注目だ。ちなみに、今度の1シリーズのボディバリエーションは5ドアのみで、3ドアは用意されない。
FRからFFへの転換で競争力の大幅アップを約束
ドライバーオリエンテッドなコクピット回りの造形は、「オペレーティング・システム7.0」の採用でさらに整理整頓された印象だ。
コクピット回りで注目は、ついにこのクラスに「オペレーティング・システム7.0」が搭載されたこと。すでに7シリーズや3シリーズなど上位モデルに搭載されているBMWの最新インフォテイメントシステムは、ドライバー正面の12.3インチインフォディスプレイとダッシュボード中央のコントロールディスプレイから構成され、音声入力で瞬時に起動。メルセデス・ベンツAクラスのMBUXに真っ向から対抗する構えだ。
BMWのFFプラットフォーム「UKL2」の採用により、後席居住性の向上は確実。
装備・仕様のトリムラインは、「ラクジュアリー」「スポーツ」そして「Mスポーツ」の3種類を用意。サスペンションは基本的に2シリーズと同じフロントがストラット、リアがマルチリンクという構成で、ARBと呼ばれる新開発のトラクションコントロールシステムにより、より素早いシャシー制御を行なうという。
発表当初のエンジンバリエーションは、ディーゼルがチューンの異なる2種類の2L4気筒ターボ。ガソリンはトップモデルのM130i xDrive用に、306psと450Nmの2L直噴4気筒ターボが用意される。ちなみに、日本仕様にはベーシックな118iと118d、そしてこのM130i xDriveという3モデルの導入が予定されている。
従来型1シリーズ(F20/21)は全世界累計で132万7636台が販売されたが、BMWでは新型がこの記録を更新してみせるのは容易いだろうと楽観視している。逆にいえば、市場を見渡して、これまでの1シリーズはある意味でニッチモデルであり、すべての面で合理的にアップデートされたFFの新型は、市場導入前の調査においても一層ポピュラーな存在になるだろうと評価されているのだ。